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The end of Reincarnation  作者: 桜野 華
第1章
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第5話

 

 継承式の後、晩餐会では豪華な料理が饗され、その後は、酒や摘みが用意された立食形式の宴会となった。


 ここでは、各国の君主もしくは君主代理が残り、酒盃を傾けながら、気軽に言葉を交わす会となった。


 現在の大陸内は、戦争もなく概ね平和と言えた。

 大陸内は11の国々から成り立っている。完全な中立国として何処の国にも属さない2国が、神の子孫を国主とし、大陸北方山岳地帯に位置するここセイレーン神国。もう1つが、優れた魔道具を独自に生産し、その技術力と販売で豊富な資金力を持つ大陸南端のテンザント公国。

 そして、大陸の東部はガイザール帝国とその同盟国2国。帝国の同盟国との国境の一部をセイレーン神国とテンザント公国に接している。

 大陸中央部には、中立国2国に国境を接し、更に大陸を南北に縦断するようにザイディーン王国とその同盟国4カ国が、存在している。ザイディーン王国は、軍事力、魔法研究共に大陸一と言われ、特に西方のダイアンサス皇国の脅威から同盟国を守ってきた。

 数年前まで、周辺の小国に次々に侵略戦争を仕掛けていた大陸西端のダイアンサス皇国も、かつての皇帝が暗殺され代替わりしてからは、皇国内に取り込んだ小国を自治州として纏め上げ、概ね良政を敷いており、評判も悪くない。



「この度は、継承おめでとうございます。ザイディーンから国王の代理として参りました、ヴィクトール・レイド・ルイ・ロイスダールと申します。式前には、お父上とご挨拶させていただきました」


 早速ザイディーン王国の王太子が、シャウエンに近付いてくる。白色の式典用軍服とその装飾が、軽い癖のある淡い金髪に、美しく整った端正な顔立ち、高い鼻梁、切れ長な碧い瞳と相まって、光を纏ったように見える。


「ありがとうございます。父からも聞いております。殿下の名声やご活躍は、我が国にもよく聞こえてきますよ。今後とも良い付き合いを願っています」


 シャウエンは、内心溜息をつきつつ、にこやかに応じた。歳は彼の1つ下のはずだが、金髪碧眼の美貌に落ち着いた声で、ややもすると歳上にも見える。

 ヴィクトールは、優雅に微笑みながら続けた。


「ところで、継承式の際ご一緒だったご令嬢に、ご紹介いただきたいと思うのですが?」


 来た……とシャウエンは思う。先程シャルロットと共にいた際、彼女に対し不躾な視線を送ってきたのは、彼だ。


「失礼ですが、彼女と面識が?」


 シャウエンは慎重に尋ねる。


「いえ?ご令嬢は神国の魔法師では?」


 意外なことに、ヴィクトールはシャルロットのことを神国の民だと思っているようだ。


「……そうですね。ただ彼女は、私の大切な身内です。申し訳ありませんが、ご容赦ください」


 だが、当然彼女をヴィクトールに会わせるつもりはない。


「成る程。それは残念。また、改めてお願いにあがりましょう」


 シャウエンの言葉に、ヴィクトールはこの場で深追いはしなかった。だが、諦めていない、と釘を刺される。去っていくヴィクトールを眺めながら、シャウエンは考えを巡らせた。


(シャルロットの魔力が感知されたのか? 面識は無さそうだが……ザイディーンの貴族令嬢であることも知られてはいないとなると、顔も認識されていないはず……)


 シャルロットにも確認したが、王太子と面識がないとなると、認識阻害魔法は効いていたはず。

 ならば万が一自国で出会うことがあっても、彼の探す令嬢と同一人物だとは特定されないはずだ。

 問題は、改めての問い合わせをどう誤魔化すか?


「新王陛下」


 考え込んでいたシャウエンを呼ぶ声に、ハッと切り替える。


「お久しぶりですな。すっかりご立派になられて。」


 テンザント公国の現公主カイウス・デリー・ファーゼルだった。薄い茶の髪にこげ茶色の瞳を持つ、穏やかな風貌の老人である。

 以前、シャルロットの為に魔力隠蔽の魔道具を依頼したことが縁で、その後も付き合いは続いている。

 親しみのこもった笑顔で話しかけられたが、決して油断できる相手ではないことを、シャウエンはよく知っていた。


「カイウス殿。お元気そうで何よりです」


 老人に酒杯を勧めながら、シャウエンも穏やかに応じる。


 そうして神国の宴席は、夜遅くまで続いた。


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