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上海郷愁舞曲  作者: はががん
新月の章
6/6

舞台「上海郷愁舞曲」

このお話は上演作品部分になります。脚本作品になりますので、あらすじを掲載します。

本編作品は、あるのかないのか・・・次回の上演機会にぜひ舞台で見てください!

一九三七年七月十七日 小雨の夜


「大日本帝国特別高等警察より上海領事館に要請。

 三島武吉。治安維持法、結社組織結成違反により指名手配とする。

見つけ次第即刻逮捕し、本国に移送のこと」


 中国共産党が日中戦争への全面抗戦を宣言する前夜。

指名手配された三島は、周の手配で楊傑のアジトへ逃れて来た。

「晩上好、我送給你三个苹果(こんばんは、リンゴを三個届けに来ました)」

 合言葉を伝え、中に入る三島。

「いらっしゃい」

 と楊傑はとても流暢な日本語で三島を迎えた。

 楊傑はいつも通り、どんな人物なのか、どういう事情で逃げたいのかを聞き取り調査する。秘密結社「春風」の創設者であり、日本の連戦連勝報道への懐疑、挙国一致プロパガンダに人々が乗せられている事を危惧し反戦活動をしていた事を聞き、楊傑は手を差し伸べる価値のある人物と判断する。楊傑はいつものように日本のパスポートを渡せば中国で潜伏可能な中国の身分証を渡すという取引を持ちかける。三島はこの人物が中華民国国軍事委員会調査統計局(軍統)諜報員で高等警察に目をつけられた日本人の間で密かに噂になっている「黒狼」だと気づく。楊傑は自分が黒狼であると認め、三島にパスポートを渡すかどうかを迫る。

 少し考えた三島は、楊傑に「このパスポートをあなたが使うなら渡してもよい」と言う。そして一枚の写真を見せた。写真を見た楊傑は、そこに自分が写っている事に驚く。しかしその写真は自分ではなく、三島の伯父の岩田三郎であると聞き動揺する。

 三島が上海で見かけた楊傑が自分のいとこの岩田洋介ではないかと探していた事、その為に活動家になった事、そして今日会って確信した事を告白される。楊傑は最初はしらばっくれていたが、三島の追及で自分が日本人である事を認め、実の親に捨てられ中国人の親に育てられた恩から日本を憎んでいた事を吐露する。

 しかし真実は違い、岩田洋介は台湾で行方不明になり実の親である岩田一家が行方を何年も必死に探していたのだと言われ、再び動揺する。岩田洋介に戻って日本に帰ってほしいと説得する三島だったが、楊傑はそれを聞き入れず出て行ってくれと言い放つ。三島は諦めるとパスポートを渡し身分証を受け取って出て行こうとする。

 そこへ大日本帝国特別高等警察官(特高)の高崎がやってきた。楊傑は三島を別の部屋に隠し、高崎と向き合う。部屋を物色した高崎はコート掛けに雨に濡れた帽子、テーブルに飲みかけのグラスが二つある事で三島がここにいる事を確信した。高崎が三島がいる事に気が付いていると察した楊傑は、覚悟を決めて高崎と対峙する。

 高崎は出世の為に三島を利用しようと数年掛けて追いかけていた事を自慢げに楊傑と隠れている三島に話して聞かせる。あまりにも身勝手な言い分についに声を荒げる楊傑。いよいよ高崎が三島を探し出そうと動き出した時、楊傑は自分が中国のスパイで、自分を逮捕すれば今まで逃した日本人達の居場所を言うと取引を持ちかけ引き留める。そこまでして三島をかばう態度に、高崎は楊傑が三島が探していた肉親だと気が付くが、取引に乗ることにする。

 話を別室で聞いていた三島が飛び出して来る。高崎は満足そうに三島を捕まえ、引きずるように連行した。一連を無言で見送っていた楊傑だったが、意を決して高崎を撃ち殺す。

 助けられた三島は、楊傑に岩田三郎の電話番号を書いたメモを渡す。楊傑もそれを受け取り、三島に言う。

「生き延びてください。この戦争が終わるまで」

 三島が去った後、メモを眺めていた楊傑は電話へと近づく。が、受話器を上げようと手を伸ばした時、電話がかかってきた。無言で取り、要件を聞き、ゆっくりと受話器を置く。

「蒋介石が日本への全面徹底抗戦を表明した。どちらに転ぶのが得策か・・・・もう少し考えてみる事にするよ」

 楊傑は身支度を整え、部屋を出て行った。


                           舞台「上海郷愁舞曲」 おわり

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