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H & H   作者: ふーふ
2/11

2話


「将さん。ではごきげんよう」


「ああ、リサまた明日な」


リサの家は将やみおとは反対方向なためリサとは別れ、みおと二人きりになった。

しばらく話ながら歩いていると、みおが立ち止まったのに気づいた。

将は先に歩いていたため、どうしたのかと思い振り向く。


「どうした? 足でも痛いのか? おぶってやろうか?」


将がニシッと笑いながら冗談めかして言うがみおの反応はない。

今まで下を向いていたみおが顔をあげ、口を開く。


「ねえ、将。私とリサどっちが好き?」


「ん?どっちも好きだよ」


「もう! 将、友達としての好きじゃなくて恋愛としての好きかどうか聞いてるの!」


突然の告白に面食らった将に

「好きだよ、将」

と言いながらみおは将に抱きついた。


「ど、どうしたんだ急に」


後ずさりながら将はみおの胸元に視線を向ける。

何か光るものが見えた気がしたが、今はそれどころじゃないと頭を振り払い思考を整理する。


「ま、待つんだみお。落ち着いて一回話し合おう!」


何とか説得させようと頭をフル回転させて言葉を紡ぎだそうとするが、こういうときに限って人並みのことしか言うことができない。


「んお!」


将は後ずさりながら移動していたために後ろに人を転ばせるに足るほどの石の存在があることに気づいていなかった。

その石につまずき、こける瞬間、目の前に何かが半円を描くようにして一閃したのが見えた。


「いたた…みお?」


みおは今までの無邪気な笑顔を顔から取り去り能面のような一種おどろおどろしい表情を張り付けていた。


「ちっ、失敗した。本当に何者だ?あの安藤ってやつは…ってお前に聞いてもわからねえか」


みおの変わりように驚いたがそれよりもまず聞いておきたいことがあった。


「みお…それ何?」


心底怯えているという様子で将は口の奥からやっとのことで絞り出すように声を出した。

声は恐怖でかすれていた。


「ん、ククリナイフ」 


何でもないように答えた。

人形でも相手にしているかのような感情のこもっていないような、そんな声に将は得たいの知れない恐怖を覚えた。

このままでは何かヤバイ、そう直感的に悟った将は恐怖で棒のように動かない足を何とか立たせ反対方向に逃げようと、がむしゃらに反対方向に走って走って走りまくる。


「あはは、まてまてー逃がさないぞー将ちゃ~ん。」


まるで蟻を踏み潰すかのように余裕綽々といった様子でみおが追いかけてくる。


「鬼ごっこすりゅー? あはは、鬼ごっこ鬼ごっこ。将と鬼ごっこなんて小学4年生ぶりだよねー!」


みおの言葉に答える余裕はない。

走って走って何とか逃げ切らなければ、何が起こっているのか、なぜみおが自分を殺そうとするのか、そんなものは考えている暇はない。

生存本能が叫ぶのだ。このままでは確実に死ぬ。


「ハッ、ハッ、ハッ」


息が苦しい。

何とかして逃げ切らねば。

それ以外のことを考えている余裕などない。

将はがむしゃらに走り続けた。

目の前にはT字路。将はとっさのことだったのでよく確かめずに右に方向転換した。


「くそ!行き止まり!」


行き止まりから抜け出そうと元来た道を抜け出そうと足を一歩踏み出し…


「将ちゃ~ん。つ~か~ま~え~た~」


将が逃げようとした時に踏み出した足はみおの足によって押さえつけられていた。

同じ年頃の女の子の力だとはとても思えない。


「ひっ、み、みおなんでこんなこと!」


「そんなこと教える必要があるのかな~? 今から死ぬ人間に」 


突然みおがダムが決壊したかのようにゲラゲラと笑い出した。もう抑えきれないといった感じだ。笑い涙まで流している。


「まだ私のこと憂希みおだと思ってるんだ~? ここまで来るともう哀れみすら覚えるほどのおバカさんだね~プークスクス」


頭がガンッと殴られたほどの衝撃が走った。

ありえない、信じられない。


「お前は誰だ!? みおをどこへやった!」


目の前の女は涙を右手で吹きながらさらに笑みを深めた。


「さあ、知らな~い」


瞬間、将の頭にカッと血がのぼった。

全ての感情が瞬く間に怒りに染まった。

怒りの赴くままに拳を振り上げ目の前の憎き女に振り下ろそうとする……が


「おい、今まで優しくしてたからって調子乗んな。

お前がこの私にかなうわきゃねぇだろ!」


ものの一瞬で将の体は壁に叩きつけられた。

ものすごい衝撃が将の体を走った。


「がッがぁぁ!」


「クスクスいてぇだろクズ野郎。あたしに手をあげようとしたからこうなるんだぜ。まあ、お前はもう殺すけどな」


女が右手に持つククリナイフが空を切り裂き、将の首めがけ楕円を描き首をかっ切った……かに思えた。


将の首は胴体から離れておらず、首にも突き刺さっていない。


「やはり、何かがおかしいと思って戻って来ましたが、案の定でしたね」


将の目の前にいたのは、棒のようなものでククリナイフを将に迫る直前に受け止めていた江藤リサだった。




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