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使用人の私を虐めていた子爵家の人々は、私が公爵家の隠し子だと知って怖がっているようです。  作者: 木山楽斗
外伝

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第6話 全てを見抜ける人

 私は、お兄様の執務室でお兄様と二人きりで話すことになりました。

 議題は当然、私が何故聖女をやめたのかということです。

 もちろん、正直に言えば絶対に怒られます。という訳で、どうにかして誤魔化さなければなりません。


「さて、どうしてお前は聖女をやめたのだ?」

「えっと……実は、聖女は激務で、もう耐えられないと思ったんです」

「ほう……」


 私は、悲しい演技をしながら、お兄様に訴えかけた。

 ここで言っていることは、別にそこまで真実から遠いことではありません。実際に、激務だったし、耐えられないと思ったことは事実です。

 まあ、面倒だからとか、朝起きるのが辛いとか、そういう細かい理由はありますが、今口に出していることに偽りはありません。


「……実は、面倒だと思ったのではないか?」

「いえ、そんなことはありませんよ」

「朝起きるのが辛いだとか、祈りに意味がないと思っただとか、そういう理由ではないのか?」

「お兄様、いくら私でもそんなことは思いませんよ」


 お兄様は、私の全てを見抜いていました。

 長い付き合いですから、私のことをよく知っていますね。

 でも、ここは堂々と嘘をつかせてもらいます。これを見抜かれると、怒られてしまいますからね。


「そうか……まあ、それはそれで構わない。お前がそういう選択をするというなら、俺もそこまで何か言うつもりはない」

「あれ? そうなんですか?」


 意外なことに、お兄様はあまり怒っていませんでした。

 というか、聖女をやめたことについて、あまり重要視していないような感じです。

 なんだ、お兄様も意外と話が分かるではありませんか。もっときつい人かと思っていましたが、ほんの少しだけ見直しましたよ。


「さて、それでは本題に移らせてもらう。お前の今後に関することだ」

「え? 今後?」

「お前は、聖女になるから、婚約関係の話は後にしてもらいたいと言っただろう。聖女をやめたなら、当然その話に移らせてもらう」

「ええっ!?」


 お兄様の言葉に、私は驚いてしまいました。

 そういえば、私が聖女になったのはそういう事情だったからでした。すっかり頭から抜けていましたが、帰ってきたらその問題と向き合わなけばならなかったのです。

 正直、婚約なんて面倒なことは避けたいと思っています。ここは、なんとか話題をそらせませんかね?


「えっと……お兄様、最近お姉様とはどうですか?」

「……聖女をやめたのだ。当然、覚悟はしていただろう?」

「仲良くしていますか? あ、部屋を訪ねていたのですから、仲良くしているということですよね?」

「理解していなかったのか?」

「うぐっ……」


 お兄様は、話題をそらすことを許してくれません。

 これは、しばらくこの話に付き合うしかないようです。

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