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使用人の私を虐めていた子爵家の人々は、私が公爵家の隠し子だと知って怖がっているようです。  作者: 木山楽斗
外伝

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第3話 扱いやすい人

 私の目の前に現れたのは、とても扱いやすくて都合がいい令嬢であるフェルムーナ・エルキアードでした。

 彼女は、どうでもいい大義を抱いているちょっと鬱陶しい人です。かつて、私とは聖女の地位をかけて争った人で、未だに聖女になることを諦めていない熱心な人なのです。

 そんな熱心な人が言ってくる言葉は、いつも同じです。


「シャルリナ・ラーファン、よくわかりませんが、私と勝負しなさい! 私が勝ったなら、聖女の地位を明け渡してもらいます!」


 彼女は、こういう風に聖女の地位をかけた勝負を仕掛けてきます。

 この私には、何一つメリットのない提案は、いつも断っていました。相手するだけ、面倒だからです。

 もちろん、今日もこの提案を受け入れるつもりはありません。勝負なんて面倒なことをするつもりはないのです。

 ですが、今日はいつもとは少し違います。私は、彼女にある提案をするつもりなのです。


「フェルムーナ・エルキアードさん、今日はあなたにある提案があります」

「え? なんですの? 急に?」

「聖女をやっていただけませんか? 私、もうこの仕事やりたくないんですよ」

「は?」


 私の言葉に、彼女はびっくりしたようです。

 口を開けて、目を見開いて、結構間抜けな表情ですね。

 でも、笑っている場合ではありません。彼女に、きちんと事情を説明しなければなりませんから。


「どういうことですの?」

「そんなに聖女になりたいなら、譲ってあげると言っているんです」

「なっ……正気ですか?」

「正気ですよ」


 彼女は、なんだか信じられないというような表情をしています。

 聖女に憧れを抱いている彼女にとっては、それを譲るということは理解できないのでしょうかね。

 現実を知った時に、彼女はどういう表情をするでしょうか? 大義を抱いている人ですから、あんな激務でも大丈夫なのでしょうか? それは、少しだけ興味がありますね。


「聖女という地位が、どれ程のものか本当にわかっていますの?」

「わかっていますよお」

「わかっていて、それを譲ろうというのですか?」

「ええ」


 何故、彼女はここで食い下がってくるのでしょうか?

 聖女になりたいなら、私の提案を素直に受け入れてくださいよ。面倒くさい人ですね、本当に。


「あのですね。私は、あなたのように大義などということを抱いていないのです」

「え?」

「才能があって、聖女になりましたが、なってみてわかりました。やはり、この仕事は大義を持った人が相応しいのです」

「そ、そうなのですか?」

「ええ、あなたのような人こそ、聖女には相応しい。私はそう思います。ですから、私の提案を受け入れてもらえませんか?」

「……わかりました。あなたの思いに応えさせてもらいますわ」


 私の提案を、彼女はきらきらとした目で受け入れてくれました。

 相変わらず、乗せやすい人です。こういう扱いやすい人がいてくれたのは、私にとってとても幸福なことです。

 さて、これで私は晴れて自由の身になりました。これで、聖女とかいう大変な仕事はおさらばです。

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