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使用人の私を虐めていた子爵家の人々は、私が公爵家の隠し子だと知って怖がっているようです。  作者: 木山楽斗
本編

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第52話 謝罪を求めて

 私とエルード様は、ゲルビド子爵家の当主であるボドール様と対峙していた。

 彼は、私達の来訪に希望を見出していた。それをはっきりと叩き折ったため、彼は絶望しているようだ。


「な、ならば、どうしてわざわざここに? 何の意図があって、私の元に来たのですか?」

「一つは、事実を認識してもらうためだ。何も言わずに破滅させるというのは俺の流儀に反する。故に、お前達にはきちんと事実を突きつけておくことにした。これは、慈悲の一種といってもいいかもしれないな」


 エルード様は、きちんと相手に事実を伝えてからことを実行するつもりだった。破滅するまでに、何か準備をしていいという猶予を与えているのだ。

 それだけなら、慈悲といえるかもしれない。だが、それだけではないのだ。


「一つは、お前達がどういう顔をするか見ておきたかった。苦悶に歪むお前の顔は、中々に見物だったぞ?」

「な、なんと非道な……」

「非道? お前には言われたくはないが、まあ事実ではあるか」


 エルード様は、笑みを浮かべていた。

 その笑みは、邪悪な笑みだ。エルード様が本心でどう思っているかはわからないが、その笑みはボドール様にとって屈辱的なものだろう。


「さて、今までの理由もあったが、最も重要な理由は別にある。それは。お前に謝罪してもらうことだ」

「しゃ、謝罪……?」

「ここにいるアルシア、及びその母とその祖父母は、お前達ゲルビド子爵家に苦しめられてきた。その謝罪をしてもらわなければならない」


 私達がここに来た一番の理由は、そのためだった。

 ボドール様からの謝罪。それが、私達が求めているものである。

 私個人に対して、謝罪をしてもらいたいとはそれ程思っていない。重要なのは、母や祖父母に対する謝罪だ。

 その人生を狂わせた謝罪はしてもらう必要がある。それが私の一番の望みなのだ。


「ふ、ふざけるな……こんなことをされて、謝罪なんぞすると思っているのか?」

「ほう」

「私は破滅する。それが変わらないのなら、お前達が屈辱的な方を選ぶまで。決して謝るものか!」


 そんな私達の思いを、ボドールは踏みにじろうとしてきた。

 決して謝らない。それが、こちらの一番傷つく選択だとわかっているのだ。

 彼の中には、人の心は残っていないようである。祖父母や母の人生を狂わせたゲルビド家は、決してその行いを悔い改めてくれないのだ。


「屑が……やはり、お前達は徹底的に追い詰めるしかないようだな」

「ははは! なんとでも言え! 私はどうせ破滅する。もうなんと言われても、構わんわ!」


 ボドール様は、笑っていた。

 その楽しそうな笑みは、彼の心の邪悪さを表している。

 この男の心は、必ず折らなければならない。私は、改めてそれを認識するのだった。

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