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使用人の私を虐めていた子爵家の人々は、私が公爵家の隠し子だと知って怖がっているようです。  作者: 木山楽斗
本編

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第50話 迷いは捨てて

 私は、エルード様とともに馬車に乗っていた。

 私達は、ゲルビド子爵家の屋敷に向かっている。彼らに対して、色々と言うべきことがあるからだ。


「本当によかったのか? 別にお前が付いてくる必要はないのだぞ」

「いえ、覚悟しましたから、もう大丈夫です」


 エルード様は、私のことを心配してくれていた。恐らく、先日話した罪悪感のことを言っているのだろう。

 だが、私は既に決意している。ゲルビド家のことは、私が背負うべきことだ。エルード様だけに、任せてはおけないのである。


「そういうことではない。俺が言っているのは、あの屋敷に戻って大丈夫なのかということだ」

「え?」

「あそこには、いい思い出がないだろう。そんな屋敷に戻ることは、お前にとって苦しいことであるはずだ」


 しかし、エルード様が心配しているのは別のことだった。

 確かに、あのゲルビド家の屋敷は、私にとって忌むべき場所である。散々ひどい生活を送っていたので、いい印象はない。

 ただ、私はそんなことはまったく考えていなかった。私は結構、鈍感だったのかもしれない。


「えっと……多分、問題はないと思います。確かに、あそこには辛い思い出しかありませんが、それを恐れているという訳ではありません」

「……どうやら、お前は強い奴のようだな」

「え? そうなのでしょうか……」


 エルード様は、私のことを褒めてくれた。

 だが、これはそんなに褒められるべきことなのだろうか。私は鈍感で恥ずべきことだと思ったのだが、まったく正反対の評価で少し驚いている。

 しかし、褒められているのだから、素直に受け取っておこう。私は、意外と強い人間であるようだ。


「ふん、それなら心配する必要はないな。徹底的に、ゲルビド家を追い詰めるとするか」

「ええ、よろしくお願いします」

「ほう、迷わなくなったな」

「ええ、もう迷いは捨てました」


 エルード様の言葉に、私ははっきりと答えていた。

 私の中にあった迷いは、先日断ち切った。今は、はっきりとゲルビド家を追い詰めると決意している。

 その覚悟を決めているため、私は非情なことでも言うことができた。決意を固めた私は、もう迷わないのだ。


「ふっ……そういう面でも、お前は強くなったといえるか。もっとも、それがいいことか悪いことかはわからないな」

「そうですね……でも、今の状況においては、いいことだと思っています」

「確かに、そうかもしれんな……」


 私の言葉に、エルード様は少し笑みを浮かべた。

 その笑みが、何を意味するかはわからない。


 私の変化は、いいことなのだろうか、悪いことなのだろうか。

 そんなことを考えながら、私はエルード様との話を続けるのだった。

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