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使用人の私を虐めていた子爵家の人々は、私が公爵家の隠し子だと知って怖がっているようです。  作者: 木山楽斗
本編

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第44話 秘密の会話

 私は、エルード様と一緒に二周目に入っていた。

 シャルリナは既に休んでいるが、私はまだ走れる。後一周くらいなら、走ることができるはずだ。


「さて……実は、お前と話したいことがあるのだ」

「話したいこと?」


 走りながら、エルード様は私にそう話しかけてきた。

 言葉からして、私と二人きりで話したいことがあるということだろう。

 もしかして、ゲルビド子爵家のことだろうか。何か進展があったのかもしれない。


「シャルリナは、お前のおかげで少しだけ変わり始めている」

「え?」

「今までのあいつなら、外には絶対に出なかっただろう。それを成し遂げられたのは、お前のおかげだ。感謝する」

「あ、いえ……」


 エルード様が言ってきたのは、シャルリナのことだった。

 彼女の変化が私のおかげ。そう言われても、いまいちわからない。

 それは、私が来る前の彼女を知らないからなのだろう。昔の彼女をよく知らないから、変化もよくわからないのだ。


「エルード様は、シャルリナのことを本当に気にしていますね。やっぱり、兄として気になるのですか?」

「む……?」

「あ、その……なんだか、すごく厳しいですから、何か特別な理由があるのかと思って……」


 いい機会なので、私はエルード様にシャルリナのことを聞いてみた。

 彼は、彼女にとても厳しい。それは、兄として心配だから。自然に考えると、そういう結論になる。

 だが、どうも何か事情がある気がするのだ。今まで接してきて、私はこの兄妹にそのような小さな違和感を覚えたのである。


「……あいつには、もっときちんとした貴族になってもらわなければならない。そうならないと、俺が困るのだ」

「エルード様が? 家を継いだ後、怠惰な妹がいたら、面倒だということですか?」

「いや……」


 私の言葉に、エルード様は少し言葉を詰まらせた。

 何か、言えないようなことがあるのだろうか。


「……お前には、話してもいいかもしれないな」

「え?」


 そこで、エルード様は足を止めた。

 私も、それに合わせて足を止める。彼の顔を見て、そうするべきだと思ったのだ。

 きっと、彼はこれから大切な話をする。走りながらではできない話をするつもりなのだろう。


「これから俺がする話は、ラーファン家の人間なら知っていることと、ラーファン家の人間も知らないことだ。前者はともかく、後者は誰にも言わないでもらえるとありがたい」

「は、はい……」


 エルード様の真剣な顔に、私はゆっくりと息をのむ。

 まさか、急にこんな事態になるとは思っていなかった。穏やかな日常から、一気に重大な話になり、私はとても緊張するのだった。

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― 新着の感想 ―
[一言]  なんだろう……?  兄妹どちらかの将来か血筋に関することかな?
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