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使用人の私を虐めていた子爵家の人々は、私が公爵家の隠し子だと知って怖がっているようです。  作者: 木山楽斗
本編

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第32話 母の過去

 私は、エルード様から母の話を聞くことになった。

 彼は、一体母の何を話してくれるのだろうか。


「俺がお前の母に関する事実を知ったのは、ゲルビド子爵家に関することを調べていたからだ」

「ずっと、調べてくれていたのですね……」

「もちろんだ。叩き潰すと決めたからな……」


 エルード様は、私を連れ出してから、ずっとゲルビド子爵家に関して調べていてくれたようである。

 色々とあったが、彼らとの決着はついていない。それを今も追ってくれる彼には、感謝しかない。

 その調査の中で、エルード様は母の何かを知ったようである。ゲルビド家と母は、関りが深い。そこから何かを得られることは、とても自然なことである。


「それで、一体何を知ったのですか?」

「ああ……まず、前提から話させてもらう。お前の祖父母のことからだ」

「祖父母……どうして、借金をしたかということですか?」

「ああ、そのことだ。もっとも、これはゲルビド子爵家の前当主の時代の話だ。証言もかなり曖昧なものになる」


 私は、祖父母のことはよく知らない。私が生まれる前に亡くなっており、知っているのは母から聞いたことだけだ。

 母曰く、祖父母は優しい人だったらしい。その話を聞いているから、私は借金をしたのにも何か理由があったのではないかと思っている。


「お前の祖父母は、とある村の取り纏め役だったらしい。だが、そのとある村が不作に襲われ、税を収められない状態になったようだ」

「それで……その責任を祖父母は被ったのですか?」

「ああ、ゲルビド子爵家に納められなかった税を借金として背負ったようだ。それから、かなり苦しい生活を送っていたらしい」


 そこで、エルード様の表情が少しだけ変わった。

 今までも真剣な顔であったが、陰りが見えたのだ。その陰りは、これから告げられることがいいことではないことを表している。


「ゲルビド家は、かなりひどい取り立てを行ったようだ。それにより、お前の祖父母はどんどんと追い詰められていった」

「……」

「その結果……一家心中を図ったようだ。娘とともに、身を投げたらしい」

「一家心中……でも、母は」

「幸か不幸か……お前の母だけは、生き残ったようだ」

「そんな……」


 エルード様の言葉に、私は衝撃を受けた。

 一家心中、そんなことがあったなんて、母は何も言っていなかった。

 胸が痛くて仕方ない。母の人生は、私が思っていたよりもずっと壮絶だった。あの笑顔の裏に、そんなことが隠されていたなんて。

 私の目からは、涙が流れていた。最近は、泣いてばかりだ。悲しいことが多すぎて、私の胸は張り裂けてしまいそうだった。

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