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使用人の私を虐めていた子爵家の人々は、私が公爵家の隠し子だと知って怖がっているようです。  作者: 木山楽斗
本編

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第24話 固く閉じられた戸

 私は、エルード様とともにとある部屋の前まで来ていた。

 そこは、シャルリナ様の自室であるようだ。


「あの……自室でいいのですか?」

「ああ、あいつはここで構わない」


 今まで会った人達は、ゴガンダ様以外は客室だった。

 だが、彼女だけは自室である。それで、本当にいいのだろうか。


「というよりも、あいつは基本的にここから出てこないのだ。故に、ここを訪ねるしかない」

「そうなのですね……」


 どうやら、彼女は部屋から出てこない人間であるらしい。

 人見知りだけではなく、引きこもりでもあるようだ。

 なんというか、益々彼女に会うことが心配になってきた。今までと違い、彼女が大丈夫なのかという心配である。


「……それで、あいつは何をやっているのだか」


 エルード様は、少し怒っていた。

 先程から、彼は部屋の戸を叩いている。だが、中から反応が返ってこないのだ。

 もしかして、中で何かあったのだろうか。そう思った私だったが、エルード様の反応と今まで聞いたシャルリナ様のことから、そうではないことはなんとなく理解している。

 恐らく、シャルリナ様は無視しているのだ。


「……ここを開けろと言っているのだ。聞こえていない訳ではあるまい。早く開けろ」

「……」

「このまま開けなければ、俺が退くとでも思っているのか? ならば、俺が本気だということを証明してやろう」

「何をするつもりですか?」


 エルード様が意味深な言葉を言ったためか、中から初めて声が返ってきた。

 その声は、少し震えている。今までのことを考えて、恐れているのだろうか。


「この戸を蹴り破ってやる」

「いや、流石にそれは困ります」


 エルード様は、武力に頼るつもりだったようだ。

 当然のことながら、そんなことをされたシャルリナ様は困ってしまうだろう。

 彼女は部屋に籠っていると聞いているので、戸が壊れるのは避けたはずである。それを計算して、エルード様は提案しているのだろう。


「実は……私、今戸の前にいます」

「何?」

「お優しいお兄様は、可愛い妹を蹴ることはできませんよね? だから、蹴られると困ってしまいます」


 しかし、シャルリナ様も一筋縄ではいかなかった。

 確かに、彼女が戸の前にいるなら、エルード様は蹴りにくいだろう。彼女を傷つけてしまうことになるからだ。

 もっとも、彼女が本当に戸の前にいるかどうかはわからない。咄嗟に出た言葉であるように思えるので、それがはったりである可能性はある。

 だが、はったりだったとしても迂闊に動くことはできない。彼女がいるかもしれないという事実は、充分にエルード様を牽制できるはずだ。

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