第七矢 異世界でピンチ?
2つ目に出てきた武器である対近接戦闘義手は魅力的な機能はあったが結局のところ使用上のデメリットが多すぎたため今後使うことはなさそうだった。
「なぁサイファー最後のケースには何が入ってるんだ?」
今のところ最悪の流れなので、あまり期待はしていなかったが、残り物には福があるという言葉もあるし確認する必要は十分にあるだろう。
『それよりも早く戦闘義手をケースの中に入れてください。話しはそれからです』
「あーあれ? 後から直せばいいでしょ?」
『いいえ!本当はもう少し早めにケースに入れる必要があったのですが多少の時間ならばと思い指摘しなかったのです』
「へいへい、、、分かりましたよー」
思春期特有の運命かもしれないが、どうしても、あれしろ!これしろ!と言われると逆にやりたくなくなるんだよなー。
そう思いつつも、しぶしぶ俺は放り出された戦闘義手を回収に向かう。
『優利気をつけてください!!』
へ? な、な、何だ!?
サイファーが急に警告したかと思うと目の前の戦闘義手が1人でにクネクネと動き出した。
「キモいキモいキモいキモい!!!!」
クネクネと動き出した戦闘義手は徐々に激しさを増していき末端からは血のような液体が少量ながらもばら撒かれ始める。
「おいおい!!スプリンクラーかよ!!」
『そんなこと言っている場合ではないですよ優利!!このままだと戦闘義手が干からびます!』
あー。まぁこのまま体液ばら撒いてたら干からびるかー。
そう思いながら俺は他人事のように暴れ狂う戦闘義手を傍観する。
『優利何やっているんですか?早くあれを止めてケースの中に入れてください!! 戦闘義手が今後使用不可能になります!』
「お、俺が!? 無理無理無理!! 絶対に無理!
! 自我の無い暴れ狂うナイフ相手にどうしろって言うんだよ!!」
『あれを止められるのは優利しかいません!頑張ってください!』
「サイファーがやればいいじゃん!!人に言う前にお前がやれ!!」
『何を言ってるんですか?私に実体がないことは優利も知っているでしょう?そんな私にどうしろと言うんですか? 馬鹿なんですか? アホなんですか?』
「あーいけないんだー!!人にバカって言っちゃ行けないんだよぉ!!ぶぁーか!!(ねっとりボイス)」
その後、サイファーと俺は暫く不毛な言い争いをしたが、最後にはサイファーが折れて、仕方なしに代案を提案してきた。
『はぁ、、、もう分かりました。優利はあれを止めなくても大丈夫です。しかし、この近辺にいる小動物を探し出し捕獲してください』
おいおいおい?どうしちまったんだよサイファーくん?さっきまで頑なに戦闘義手を止めてケースの中に入れろってほざいてたのに、、、
小動物捕まえて何するってんだよ?愛でるの?食べるの?
何にせよ今の状況を考えてから発言してほしいな。
「サイファー大丈夫?病院行く?」
『・・・私は大丈夫です。あと病院なら優利が行くべきです。早く臆病を治して来てください』
「このポンコツがー!臆病は病気じゃねぇーよ!
てか臆病でも無いわーー!!」
『冗談です。今は私を信じて小動物を捕獲してください。種類は問いません』
まずサイファーが初めて冗談を言ったのにも少し驚いたが自分を信じろと言う言葉を使うのも新鮮な気分だった。
サイファーがそこまで言うのなら流石にその想いに応えなければならない気がした。
「・・・分かったよ! やればいいんだろ!やれば! そのくらいなら俺にもできそうだからな」
しかし、小動物を探すと言っても、ここまで来るまでの移動間では鳥の囀りや虫の羽音は聞いていたのだが小動物を見かけることはなかった。
おそらく小動物ゆえに外敵から身を守るため土の中や木の影に隠れているのだろう。
そして、仮に彼らを見つけたとしてもフットワークの軽い彼らはたちまち捕獲者の目の前から姿を消してしまう。
「言うのは簡単ですけど、やるのは結構むずいぜ、、、サイファーさん」
『重々承知です。』
さらっと言うなー。まぁサイファーにも考えはあるようだし、さくっとミニアニマルゲットすっか!
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
水揚げされたマグロのように荒れ狂う戦闘義手を横目に小動物を探すこと1分。
、、、いた!
それは、やや白い幹を有する木の窪みで雑草をチマチマと食べていた。
「わぁー!うしゃぎしゃんだぁー(小声)」
それの正体はふわふわの茶色の毛に包まれた野ウサギであった。
見つけた時は逃げないように声は出さないつもりだったが思わず感嘆の声が漏れ出てしまう。ウサギさんはあまりにも可愛過ぎたのだ!!
『優利!早く捕獲してください!!』
「えー。うしゃぎしゃんがかわいそうだよー」
『せっかくのチャンスです。これを逃せば我々は1つ強力な武器失うことになりますよ』
「うしゃぎしゃんはぶきじゃないよー。これからペットにするのはいいかもしれないけどー」
『とにかく早く捕まえて下さい!!』
「しょうがないなぁー。でも、うしゃぎしゃんはおれのペットにするから」
ウサギに出会ってしまって何故か優利のIQが急激に下がってしまったのは置いておいて、ここで優利の意外な特技が発言することとなる。
「うしゃぎしゃーん!おいでー!」
俺はウサギさんに対して手を広げ呼びかける。雑草を食べていたウサギさんは、こちらの方向をパッと見た。
ウサギさんと目と目が合う。瞬間、俺はウサギさんが好きなことに気づいた。
「うしゃぎしゃーん!!」
俺はウサギさんを抱っこしたい衝動的欲求を抑えきれずウサギさんに飛びつく。
完全なる悪手。
普通のウサギさんなら逃げていてもおかしくない状況だったが不思議とウサギさんはそれを受け入れ俺の腕の中にすっぽりと入り込んだ。
「ひょ、ひょぉええええーー」
感動のあまり人間とは思えない奇声を上げた後にウサギさんを持ち上げ抱っこする。それでもウサギさんは腕の中で大人しかった。なんなら腕の中で毛繕いまで始めている。
『優利!よくやりました!!何もない人間にも何か一つは才能があるものなのですね!!』
いや、それ褒めてないから!
でも、今の俺はそれくらいじゃあキレないさ。なんせこっちにはウサギさんという癒しがいるんだからな!!
『では、優利!!早速その野ウサギを戦闘義手に投げつけて下さい!!』
は?
「・・・貴様今、、、何つったぁ!!!!このサイコ野郎が!!!」
ブチギレた
うしゃぎしゃん、かわいいよぉー。おもちかえりー!!