第六矢 キモいって言うなぁ!!武器だって傷ついちゃうんだよ?
2つ目の武器ケースをウキウキで開けた俺だったが中身は気持ちの悪いデザインの戦闘義手だった。その戦闘義手も今は俺の手によってケースの中から放り出され、糸くずのように地面に横たわっている。
正直、この戦闘義手は聞こえこそ良いが生体パーツや筋肉アメーバといった聞き慣れない素材を使っていてどうも信用ならない。また、この武器はキモいかつカッコ良くないので使うことは百歩譲っても無いと思う。
しかし、万が一、、、いや、、、億が一、使うことになった場合にその特性を事前に知っておくことはこの異世界を生きていくヒントになると思った。
「サイファー。もっと詳しく戦闘義手について教えてくれ」
『様を忘れてますよ優利』
「・・・その件はもういいよから!・・・いいからはよ説明してくれ!」
『分かりました。しかし、時間が無いので簡単に説明しますよ』
時間が無い?どう言うことだろうか?まぁどうせサイファーのことだからくだらないことだろう。
「ああ」
『まず対近接戦闘義手【ブレードモデル】の詳しい機能について説明していきます。この戦闘義手は強力な人工筋肉を使用しており瞬間最大出力も人間の10倍以上あり、骨もないため骨格に関係なく自由自在に動かすことが可能となっています』
人工筋肉か、、、。今は科学技術の進歩もあって人工肉の培養に成功したとか新しく内臓を作り出したことも聞いていたが兵器に応用できるほどに進歩していたんだな。
しかも、人間の10倍以上のパワーが出せるのか、、、やるやん、、、、。
『さらに、その人工筋肉を覆う装甲は軽量かつ頑丈な特殊な合金を使用しており、重機関銃の弾をもってしても破壊することは不可能です。そして、その合金は戦闘義手のブレード部分にも使用されており刃こぼれのしない持久戦に強い装備となっています』
おー!!何だかさっきまでダンゴムシの殻と思っていた装甲部分もそう聞くとカッコ良く思えてくるなぁ!!
でも、これだけの利点があると何かしらのデメリットもありそうだな。ゴミソードもとい機械剣もめちゃくちゃ重くて大量の電力を消費すると言う致命的なデメリットがあったからな、、、。
「でも、戦闘義手にも何かデメリットがあるんだろ?まずそんだけ強い武器を動かすのにもガソリンみたいな燃料が必要なんじゃ無いの?」
『いいえ。戦闘義手には明確なデメリットは存在しません。戦闘義手は人間と同じく酸素の燃焼エネルギーによって稼働するため使用者の血管を繋ぎ戦闘義手に使用者の血液を行き渡らせることだけで使用が可能となります。逆に戦闘義手はエネルギー消費も激しいので戦闘義手を装備した者はお腹が空きやすくなるというデメリットが発生するようです』
ほーー。それが本当なら戦闘義手はかなり強力な装備になりそうだな。この異世界でどれだけ地球にあった物があるか分からない。現状だと地球の物を使わずに動かせる装備品という物は貴重だ。
しかし、俺も頭はいい方では無いので断定は出来ないが他者の身体部分を移植した際には拒絶反応が出るはずだ。この戦闘義手も人工筋肉とやらを使っているためよくは分からないが俺の身体と繋げたら拒絶反応が出るのでは無いのだろうか?
『安心してください優利。拒絶反応は出ませんよ』
でたでた!お得意の脳内盗聴!あー嫌ですわー。最近の子は!プライバシーも何も無いじゃ無いの!まぁ、、、めんどくさいからもうツッコまないけど、、、
「どうして拒絶反応が出ないんだ?」
『コネクター部分の筋肉アメーバが関係しています』
うげ!?また筋肉アメーバかよ、、、あれはちょっとしたトラウマなんだよな、、、。
「・・・あんま聞きたくないけど何が関係してんの?」
『筋肉アメーバは使用者と戦闘義手の神経や血管といった部分を繋ぐ働きを促し使用者と戦闘義手の中間に位置する存在となります。まず筋肉アメーバは使用者の皮膚や傷口に触れると凄まじい勢いで使用者の肉を食べ、周りの肉と同化します』
「ちょっと待て!!!!今何つった??」
『筋肉アメーバは神経と血液をt』
「違う違う!!もっと後半だよ!」
『筋肉アメーバは使用者の皮膚や傷口に触れると凄まじい勢いで使用者の肉を食べ、周りの肉と同化します、、、ですか?』
「そうだよ!筋肉アメーバってどこぞの寄生生物だよ!こえーよ!!」
『それは問題ありません。筋肉アメーバによって使用者の肉はだいたい400g程度しか食われず後に筋肉アメーバが変異した筋肉で食べられた部分が補完されます。この筋肉アメーバが周囲の肉体と不自然なく同化することによって拒絶反応を最小限まで抑えることが可能となるのです』
なるほど筋肉アメーバにはどうやら戦闘義手と人体の中間部分となり拒絶反応を抑える効果があるらしい。しかし、今ので考えられる重要な懸念事項が一つある。
「でもそれって、、、お痛いんでしょう?」
そう俺は痛いのが大の苦手なのだ。さらに何かに体が食われると考えただけで全身鳥肌が立つ。
『普通は麻酔を使用して取り付けるらしいです、、、』
でしょうね!麻酔なしじゃ肉を食われるのは絶対に痛い!この調子だとまだ他に何かあるはずだ。もう少し畳みかけてみることにしよう。
「サイファー、、、まだ何かデメリットあるだろ?小さいことでも教えてくれ、、、」
『はい優利。分かりました。戦闘義手のデメリットとしては小さいことですが一度つけたら一生とることはできません』
うーん?今のでギリギリ2アウトってところか?強くなるのはいいが一生片手に武器が付いてるのはキツいなぁ、、、。
『すでにご存知かもしれませんが神経が繋がれるため仮に戦闘義手がダメージを受けたとき身体と同じような痛みを感じます』
あーー。まぁそれは仕方ないかなぁ。神経繋ぐと直感的操作も出来そうだからな。
『最後に、今の優利が戦闘義手を使いたい時は右か左かの腕を切り落とさなければなりません。また、稀ではありますが戦闘義手の暴走により死亡した使用者も存在するようです』
はい!3アウトです!いや4アウトだ!まぁ戦闘義手て言うくらいだから薄々気づいてはいたけどね。わざわざ義手のために腕を切り落としたくないし、そもそもそんな危険性がある武器は入りません!まだゴミソードのほうがいいわ!!
「サイファーもういいや、、、」
『何故です?まだ説明は終わってませんよ?』
「いや、、、俺、その武器一生使わないわ」
『・・・そうですか』
このとき感情のないはずのサイファーの声が少し寂しく聞こえた。もしかして、サイファーは俺に戦闘義手を使って欲しかったのだろうか?
まぁサイファーがどう思っていようとも俺は戦闘義手は絶対に使わないと心に決めるのであった。
サブタイトルがあまりにも本文内容とかけ離れていたので修正しました。
ちなみに旧サブタイトルは 【キモいって言うなぁ!!うちだって女の子なんだよ?】です。