第三矢 異世界で無双?
サイファーによる脳内盗聴を疑った俺は混乱し発狂してしまったが今は何とか落ち着きを取り戻した。記憶も大体は戻っているのだがどうしても自衛隊での職場体験初日までの記憶までしか思い出すことができなかった。
サイファーは時間が経てば戻ると言っていたので問題は無いと思うが、どうも心の奥底で引っかかりのようなものを感じていた。
しかし、今は戻らない記憶よりも現状の課題に向かい合わなければならない。サイファー曰く、この森には外敵となりうる生物はほとんど存在していないとのことだった。
逆に敵がいないわけではないので早めに森から脱出することは望ましいとのことだった。その意見には賛成なのだが正直なところ今は腹が減って仕方がなかった。
「なぁサイファー」
『何ですか優利?』
「俺腹が減って森を抜けるどころじゃないわ」
『そうでしょうね。優利はこの世界にきてから約37時間経過しましたが食事はおろか水分すらとっていないですからね』
「気付いてるんだったらどうにかしてくれよー。サイファモーン」
「・・・それについては問題ありません。今から私の指示する場所へと進んでください」
サイファーは俺のかわいいギャグをスルーして案内を始めた。相手が魔法(自称)というのもあって仕方のないことかも知れないが少しも触れられなかったのは少し傷ついた。
それからはサイファーに進む方向の指示を受けながら今いる世界についての概要を教えてもらった。
どうやらこの世界は地球によく似た世界であり人間や動物も存在しているらしい。
サイファー曰く地球がこの世界に似ているのではなく地球がこの世界に似ていると言っていたが正直どちらでも良かった。
そして、この世界と我等が故郷である地球は同じ宇宙空間に存在しているのではなく異なる次元の平行宇宙にそれぞれが存在しているらしいが俺にはサイファーが何を言っているのかは微塵もわからなかった。
その後、サイファーがさらに詳しく平行宇宙と世界間の影響について語り出しそうになったので即辞めさせた。
サイファーはそれからも、この世界について教えてくれたが大部分が真実とは思えない内容だった。
まず、この世界には地球と同様の物理法則があり大きな違いは大気中に魔力があるということ。
また、この世界の生物は個体差はあれど自ら魔力を生み出し自身の体に魔力を貯蓄することができるらしい。
そうやって自身の体に内包された魔力を用いて魔法を行使することができるとのことだった。
とても信じられるような話ではなかったが実際にサイファーという科学を超えた存在が頭の中に語りかけている時点で魔法という存在を認めざる得なかった。
しかし、魔法という存在を認めたくないという気持ちとは裏腹に俺にも魔法が使えるのではないかという考えが頭をよぎる。
そもそも一時的な記憶喪失になっていたため気づかなかったが、今の状況こそ異世界転移して最強になって
俺tueeeeeeee的展開が約束された状態なのではないか?
この推測を裏付けるように、この世界には俺tueeeeeeee展開に必須の要素である魔法も存在しているときた。
きっと俺は異世界転移と共に膨大な魔力を持つ勇者としてこの世界に召喚されたに違いない。そして、サイファーはご都合主義展開を円滑するために用意された異世界案内人であろう。つまり・・・今後来るであろうイベントは・・・。
「森の中で女戦士orエルフorお嬢様or貧乳魔法少女らへんの女(美少女)に出会って5秒で惚れられる展開だ!!!」
『いきなり叫び出してどうしたんですか優利?この森には人間はいませんしエルフという種族は存在すらしていません。』
「チッチッチ 甘いよ異世界案内人のサイファーくん誰もいないはずの森にこそ謎の美少女がいるものなのだよ」
『・・・? そうなんですね。優利の今の発言には信憑性に欠けるもがありますが、この辺りには人間はいなくても獣人はいるかもしれません』
!? 獣人・・だと・・・?
それはつまり猫耳娘だったり狐耳娘がこの世界には存在しているということか?そんな奴らがこの世界にいて仮にもしも、もしも(2回目)仲良くなれたら奴らの尻尾や耳を吸う(?)ことも可能ということか!!
「サイファーくん詳しく聞かせてもらおうか」
『獣人についてでしょうか?』
「それ以外に何があるというのだね?」
『・・・まずこの世界を実質的に支配している勢力が2つあります。それが人間族と獣人族です。人間族は優利のような見た目をしていますが獣人族の見た目はほぼ獣です。しかし、獣人族は普通の獣とは違い高い知性を持ち2足歩行と4足歩行を自在に使い分けることができます』
「ふーん ほぼ獣といっても中には人間に近くて可愛い獣人もいるんだろ?」
『人間に近い獣人にはゴリラや猿と言った霊長類タイプもいるらしいので獣人と交尾をしたいのであれば、それらをお勧めします』
・・・うん。まぁこの世界には普通の人間もたくさんいるようだし獣人にこだわる必要はないよね。うん。
あと俺は一言も獣人と交尾したいなんて言ってないんだが!まぁちょっとは想像したような気もするけど真意じゃないから!脳内ストーカーもほどほどにしてもらいたいよ!
「サイファーくん俺は別に獣人と交尾したいとは思ってないからね。うん」
『安心しました。優利の脳内物質テストステロン値が上昇したため獣人と交尾したいのかと誤った推測をしてしまいました。』
「うん。き、気をつけてくれ」
キャワワな獣耳獣人たちとのウッフキャキャキャな夢が潰えて落ち込むと同時にサイファーの恐ろしさを再認識した優利だった。
僕はドラえもんの映画よりクレヨンしんちゃんの映画が好きでした。