第二矢 初めての夜は刺激的でした・・・♡
今回も読みやすいボリュームになっております。さらっと読めます。さらさらっと。
森の中で一夜を過ごし目が覚めると全身がしっとりと濡れていた。今は空を覆い尽くすように茂った木の間から暖かな日の光が差し込んでいる。
森の中で寝るのは初めてのことだったが想像以上の寒さであまりの寒さに起きては寝るを繰り返していた。最終的には寝ぼけながら周りの葉っぱをかき集めその中に潜り込んでみた。苦肉の策ではあったが葉っぱの中はほんのりと暖かく、それからはぐっすりと睡眠を取ることができた。
『おはようございます。快適な睡眠は取れましたか?』
「あー何とかね」
『どうやら睡眠により大部分の記憶が戻ったようですね』
コッワ何この人!?俺の頭の中全部分かるの?確かに朝に目が覚めた時に大体の記憶は取り戻したが、それをコイツには伝えていないはずだ。
もしかしてコイツは俺の記憶や考えはおろか恥ずかしい記憶や性癖など全て知っているのか?
『大丈夫ですよ。私はあなたの詳しい個人情報を知る術はありません』
「おい!今俺の考えに対して返答したな!この脳内ストーカー野郎が!」
『いいえ。それは否定します。私はあなたの思考を直接知ることはできません』
「嘘つけー!じゃ何でさっき何も言ってないのに俺の考えていること分かったんだよ!てか頭にアルミホイル巻かないとー!脳内盗聴される!」
『私はあなたの健康状態や五感である視覚、聴覚、味覚、触覚、嗅覚といった限定した情報を得ることができます。それらの情報を総合的に分析しあなたの考えている事を概ね推測することができるのです』
「つまり、、、考えてることが分かるってことかー!」
『推測しているだけなので完全に分かるわけで、、』
「助けてー!頭の中に集団ストーカーがいます!」
『私は集団ではありません』
「ストーカーはであることは認めるんだな!!あーやっぱりそうだ!この変態が!」
『・・・・・・私はあなたを支援する自立思考式魔法支援術式であり・・・』
「この厨二野郎が!魔法だぁ?貴様この野郎!!」
『一度落ち着いて下さい・・・』
「これで落ち着けと言われる方が無理な話だ!」
これから暫く俺はメンヘラ化し無限発狂編に突入していた。正直アイツには悪かったとは思うが部分的に大体の記憶を思い出したばかりであり混乱していたのかもしれない。逆に混乱していなければここまでメンヘラにはならなかっただろう。たぶん・・・。
『落ち着きましたか?』
「そうだな。さっきはお前のことを変態だのピー(自主規制)とかピー(自主規制)呼ばわりして悪かった。」
『問題ありません。所詮人間なので些細なことで混乱してしまうのは仕方のないことです』
ん!?トゲのある言い方だなぁ。確かに俺が悪い部分もあったがムカつくものはムカつくなぁー。もう一度メンヘラ発狂モードいっとくか?
『申し訳ありません。もう勘弁して下さい』
「だから考えを読むなって、、、まぁもういいや。これ以上は話が進まなくなるからなー」
『そうしてもらえると助かります』
「じゃあ少し遅れたけどお前のことはなんて呼んだらいい?」
『はい?』
「お前は俺の支援をしてくれるんだろ?それなのにお前って呼ぶのも味気ないからなぁ」
『私に名前はありません。好きに呼んでもらって構いません』
「そうかーじゃあ変態ストーカーでいいかな?」
『・・・私のことはサイファーと呼んでください』
「サイファーかこれからよろしくな!あと俺のことは普通に優利でいいから!」
『よろしくお願いします。優利』
俺は近くに生える手の平ほどの大きさの葉っぱを掴み前後に揺らす。
『何をされているんですか?優利』
「サイファーは俺の触覚の情報が分かるんだろ?」
『そうですね。しかし、それがどうかしましたか?』
「握手だよ!握手!フリだけどな。」
『・・・優利は面白いですね。たまに私の推測を大きくそれた行動をしますね』
「サイファーも面白いって感じるんだな。自称魔法なんだろ」
『そう言われると不思議ですね。それか面白いというのは比喩表現で優利の馬鹿さを間接的に伝えたかったのかもしれません。あと自称ではなく事実です。』
「おい!」
生意気なサイファーに思わずツッコミを入れるが口元には知らず知らずのうちに笑みが浮かぶ。
『なぜ笑っているんですか?私は何か滑稽なことを言いましたか?』
「いーや違うんだけど、そうかなー」
『どっちですか?』
初めはウザいと思ったサイファーだが少し毒舌なところを含めていい相棒になりそうだった。森の中で目覚めた時は正直ダメだと思ったが少しその不安が薄れた気がした。