第一矢 暗い森の中
プロローグは長いですが第一矢からは読みやすい文字数になっています。また、プロローグを読まなくても大丈夫なように書いていく予定です。
「何処なんだよここは、、、」
日はすでに傾き薄暗くなり始めた森の中は少し肌寒さを感じさせた。先ほどまで地面にそのまま寝転び眠っていたからだろうか学生服のシャツは少し湿っていた。
目が覚めてから1時間ほど経っただろうか、ひどい頭痛と倦怠感に苛まれていたが今はやっといつもの調子に戻りつつあった。
調子が戻りつつあるのは良かったのだが次の問題として自分が何処にいるのかが分からないという問題に絶賛直面中なのである。
「はぁ〜」
この大きなため息もすでに10回以上はしている。そもそも、自分の居場所も分からなければ今までの記憶さえも大きく欠如している気がした。
何度かこれまでの事を思い出そうとしても思い出すのは緑色のゴリラに説教される記憶だけだった。
「いや こういう時は一旦落ちつかないと」
「まず俺の名前は、、、遠野優利で、、、、今は13歳の、、はず」
「あと、、、陽キャラ(陰キャラ)で、、彼女もいた(いない)ような、、、」
「うーん これ以上は何も思いだねえ!」
これだけ考えて思い出せないということは、きっとどうでもいい記憶に違いない。過去を振り返ることは重要なことだが俺は今を生きているんだ。だから過去のことはもう水に流そう!(?)とりあえずは今の状況をもう一度、確認してみよう。
まずここは暗い森の中で一度も来たことのない場所だ。周りは木と木とあと木があるな・・・。というか木しかないな・・・。
「日本の何処かではあるよな、、、」
あまりにも情報が少ないため、ここが本当に日本であるのかすら疑わしくなる。それに加えて今は記憶すら飛んでいる状態だ。どうやってここに来たのかすら分からない。まず自然と思考の中に組み込まれていたが日本って何だ?
記憶がなさすぎて今の状況を判断することすら難しかった。ほとんど詰みの状態だ。
「うーん これからどうすればいいんだ?」
頭の中で再度思考を巡らせる。頭の中には無数の単語が宙を舞い竜巻のようにぐるぐると頭の中を渦巻いていた。しかし、その単語がどういう意味なのかは分からなかった。
「うーーーん」
考えれば考えるほど頭の中の単語は縦横無尽に駆け巡り思考を疎外する。それでもなお考え続けるうちに、ちょっとした変化が現れた。
頭の中の片隅で意味不明のメッセージが繰り返し流されているのだ。そのメッセージは意識すれば聞こえたが意識しなければ聞くことができない不思議な声だった。
『転移完了しました。転移直後は記憶障害が発生する場合があります。障害が発生した場合は睡眠をとることにより記憶の整理が行われて障害が軽減する可能性があります』
「何だこの声は?転移?どういうことだ?」
『あなたが住む地球とは異なる次元の世界へと移動させました』
「ふーん なるほどね(分かってない)、、、って何で頭の中の声と会話してるんだよ気持ちわる!てか誰だよお前!」
『私は転移スキルにおける膨大な量の術式を支援するために組み込まれた自立思考式魔法支援術式です。転移対象者に一定値の思考能力が確認されれば転移時に記憶の混濁が発生した場合に自動的に魔法術式である私が起動され対象を支援するようなっています』
「はぁ〜(クソデカため息)」
『どうされました?』
「君さぁ説明するときは相手に分かりやすいように伝えようよ!子供じゃないんだからさぁ!」
『・・・申し訳ありません。対象が予想を超えるバカだという事を計算に入れていませんでした。』
なぬ!?
『ワタシ アナタ タスケル オワカリ?』
「もしかして喧嘩売ってる?」
『いいえ。対象の知能レベルに合わせて説明しました』
何だこいつ!めちゃくちゃうぜー!まぁ確かに俺が少しこいつを煽ったような気がしなくもないが、それはこいつが俺の知らない用語で話すからであって煽られても仕方ないだろう?しかし、頼りにできる奴もこいつしかいないからな・・・。
『もしかしてもう少しレベルを下げて説明した方がよろしかったでしょうか?』
「もう大丈夫だから!そのままでいいから!」
『そうですか。分かりました。』
「とりあえず俺は今から何をすればいいの?」
『もう少しすると日が暮れます。それと、現在のアナタは軽い記憶喪失状態となっていることから安全な場所を探し眠る事を推奨します』
「とりあえず寝ればいいって事?」
『安全な場所で寝る事を推奨します』
「安全な場所ってあるの?」
『全てのことにはお答えできません。少しは自分で考えて下さい』
あーピキピキしてきたー。しかし、こういう時こそ落ち着かなければならない気がする。それと、こいつと話し始めてからどこか安心している自分がいた。
あまり考えないようにしてきたが正直、辺りが暗くなり始めてから不安や恐怖心を感じていた。その中での他人(?)との会話は不安な気持ちを忘れるには十分だった。安心が強くなったのか急に強い睡魔に襲われた。
「ふあーなんか眠くなってきたわー。もうここで寝るわー」
『もっと安全な場所を推奨します』
「危なくなったら起こしてー」
『私は、、◇○!※△、、!!、』
頭の中の声がワーワー言っているが逆にその声が午後のつまらない授業を受けているような感覚を思い出させる。つまらない授業での先生の声ほど睡眠導入に適したものはない。声の低い先生ならなおさらである。
気持ちいいなぁ。そう言えば俺って職場体験に行ってたよなぁ。どこに行ってたんだっけ?
薄れゆく意識の中でそのような事を考えているうちに優利は深い眠りにつくのだった。