第十矢 異世界論破
「これ、、、不味いなぁ、、、」
俺は木の上に転送された食料と水を30分ほどかけて、ようやくゲットしたのだが、その食料が想像以上に不味く落胆していた。転送された食料は1ヶ月の飢えを凌げる分ではあったのだが、肝心の中身が全て固形ケーキという名のカロリー補給バーのみであった。
サイファー曰く、この固形ケーキは高カロリー、高タンパクでサバイバル環境下では非常に優れた食料らしい。しかし、この固形ケーキなるものは食べた瞬間にボロボロと形が崩れ粉になり口の中の水分を奪っていく。それはまるで甘くした小麦粉を食べているようであった。
ゴクゴク
固形ケーキをある程度、口に入れて噛んだらペットボトルに入った水をカブのみする。こうする事で何とか固形ケーキを食べることができた。
「ぷはーー! 水はうめぇーー!!」
固形ケーキは最悪であったが流石に水に関しては安定の旨さだった。なおかつ渇いた体に染み込むように入っていく水はいつもよりも数倍美味しく感じた。
ちなみに俺はこの喉カラカラの状態で飲む水の旨さで生を実感する。体が生命を繋ぐために必要な水分量と美味しさの度合いが比例しているって所が人間うまく出来てるな〜と感じると同時に生きるってそういう事なんじゃないかと考えるんだわ!! うん? 分からない?
『何をそう深く考えているのですか優利?』
「いや。水を美味しく思えるってのは生の実感なんだよ!」
『 ? 何を言っているのかよく分かりません』
「まぁ俺くらいとなると他人に理解されないもんさ」
『それは優利が馬鹿だからというわけですか?」
「ちがう!逆逆!!俺の考えが深すぎて他人から理解されないって話し!」
「優利はどちらかというと浅い人間であると思われますが、、、先ほども私の話も聞かずに最強無双とかハーレムとか言ってましたし」
かぁーーー!サイファーさんは本能に失礼な人ですね!確かにさっきまでは本気で異世界最強無双を考えてたけど今はもう諦めつつあるから!!
『・・・優利はまだ最強になる夢を諦めてなかったんですか?』
「おい!だから思考を読むなって!てかもう諦めつつあるからいいだろ!」
『諦めつつあるんだったら、まだ諦めてないって事ですよね?』
「いやーそれは、もうほぼ諦めてると同義であって、、、」
『あのー嘘つくのやめて貰っていいですか優利?』
何だこいつ!何処ぞの論破王のような話し振りしやがって!! ムカつくわー。
「はいはい。そうですよー。俺はいまだに最強になれるんじゃないかなって言う根拠のない幻想に囚われてますよー」
『夢を壊すようで悪いのですが、この世界で優利が最強になるのは100%不可能です』
なぬ!? まぁ薄々気づいてはいるけど断言されるといい気はしないな。ここはいっちょ仕返しがてらロジカルに反論してみるか、、、。
「それって、そういうデータってあるんですか?まず根拠、根拠を出してくださいよー」
『・・・』
お!きいてる!きいてる!やはり少しポンコツなサイファーには俺のロジカル(?)について来れないんだ。このままダメ押しと行くか!
「え! ダンマリですか? はよ根拠、根拠を出してくださいよー。 まぁサイファーに出せるのはコンギョくらいかー」
※コンギョとは、某国のプロパガンダソングで意味は「攻撃戦だ」である。(Wikipedia)
『優利には、この世界に魔力や魔法がある事を教えましたよね』
おっと、サイファーくん。もしかして、根拠が出せなくて必殺の論点ずらし使っちゃう感じかな?まぁあまりいじめるのも良くないし乗ってあげるかー。
「あーそう言えば、そんなこと言ってたねー」
『この世界では誰しもが魔力を持ち魔法を使う素質を持っています。そして、強者になればなるほど強力な魔力を保有し強力な魔法を行使することができます』
ほう。ほう。なるほどね。やはり魔法を使いこなすことが最強への近道ということか。
「じゃあ! 俺も強力な魔法が使えるようになれば最強になる可能性はあるってことじゃん!」
『いいえ。それは出来ません。あまり言いたくありませんでしたが優利には魔法の才能どころか魔力が全くありませんからね』
あー。気づかないようにしてたけどやっぱりそうかー。話の流れ的にそうなんじゃないかなーとは思ったけど、やっぱ俺って魔法使えねぇーんだ・・・
俺は暫く放心状態になった後に震えながら口を開いた。
「ま、魔力が無いこ、根拠は、、、?」
その後、サイファーによって魔力のない理由と魔法が使えない理由を約1時間ほど聞かされ俺の魔法で最強になるという夢は儚く崩れ去った。
ちなみに俺が魔力が無い理由は、この世界の住人では無いことが一番の理由らしい。他にも魔法理論だの魔法物理だの訳の分からないことを説明していたが途中からはサイファーの話は頭に入ってこず、ただただ虚空を見つめるのみだった
頭の中に話しかけられてるのに、何で話が頭に入ってこないんですか?






