彩
高校生活も終盤、進路について決めなければならない時期である。
朧は尋ねる。
「空、将来の夢は見つかった?」
空は応える。
「まだ、見つからないんだ。担任の先生からも進路希望を、早く提出しろと急かされて困っていたところでね。学力的には問題なく大学に行けるから、とりあえずどこかの大学に行こうとは思ってはいるよ。」
「朧は、何か将来の夢を見つけたの?」
空は尋ねた。
「私は、人を笑顔にできるような仕事をしたいんだ。世の中の人が困っていることを解決したいんだ。そのために、大学で勉強しながら、いろいろと経験を積んで将来に備えておきたい。まだ、具体的な夢は見つかっていないけど、やりたいことの方向性は見えてきた気がするよ。」
「そっか。」
朧の目に光が指しているように感じた。
子供のころにテレビで見ていた、アイドルやスポーツ選手のような輝きを放っていた。
「空に言われて気づいたよ。 よくよく見てみれば些細なことで困っている人が沢山いる。世の中の商品やサービスは、その些細なことを解決して人を笑顔にしているのだと。 職種や形式は違えど目指しいるゴールはみんな同じなんだと。気づいてみれば本当に身近で些細なこと何だね。」
朧は自分が何気なく行った言葉から、何かきっかけを掴んでいた。
その姿をみていて、近くにいるのにどこか遠くの世界にいるのではと感じてしまった。
距離にしてみれば数メートル、たったそれだけの距離である。
しかし、その背中が遥か彼方にあるように感じてしまうのはなぜだろう。
「そっか。」
「空、もうすぐ高校を卒業してしまうけれど、これからも友達でいてほしい。 君と一緒にいる時間は楽しい。 君と一緒にいると自分では気づかないことに気づかせてもらえる。 大学、社会人、これから先もどうか私の友達でいてほしい。」
「もちろんだよ。」
この日々が続けばいい。
この日々が続いて欲しい。
空にとっても、朧と過ごす日々は楽しく有意義である。
されど、月日は経ち別れの時間は刻々と迫ってきている。
この日々が終わらないで欲しい。
二度と戻ることはない、この時間。
気づかなくてはいけない、もう戻ることがないこの時間の大切さを。