第4話 始まる
第4話です。
恐らくR15相当になるシーンあり。
朝早く、一人で飯を食い、家を出る。
「行ってきます」
誰もいない家に一応挨拶をした後、鍵を掛けて学校に向かう。
中学の時と同じように、ここだけは何も変わらない日常だ。
住宅街を抜けた先に駅がある。田舎のほうの駅なので、無人駅だ。平日でも人も少なめで助かっている。
ほとんどの席が空いた電車に乗り、今日も一日学校が始まる。
◇
クラスにつくと二、三人ほどしか人がいない。
初日では気づかなかったが、俺は早めの方らしい。
知り合いがいないから別に関係ないか。
時間が経つにつれて徐々に人が増えるが、そんなことには目もくれずに俺はラノベを読みふける。
すると、俺の前に人影が……
「えっと波読くんだったっけ」
顔を上げた先にはポニーテールの女子。確か麻羅とかいうやつだ。
「そうだけど、俺が何か」
「波読くんって生徒会だったよね。鳳凰先輩のクラスってわかる?」
あ、誤解しないでね。兄と遊んでて、家に忘れ物したの私が届けにいかないといけないから聞いてるんだよ。
と言いつつも、顔は赤めだ。
「俺が届けようか?」
「……じゃあそうする。ちょっと待ってて」
と言って自席のカバンからファ○コンのカセットを二つ取り出した。スペラ○カーとミミシッピー殺○事件だ。
最近ゲーム雑誌で有名な理不尽ゲームとして紹介されていたな。
……鳳凰先輩ってそういうソフトが好きなんだな。
「じゃあ確かに。しっかり届けておく」
麻羅は何も言わずに去って行った。
これはアイツのために伝えるべきだったのか、あるいは先輩のプライバシー的に正解だったのか。
そして、ラノベを読もうとしたら今度はやたら前髪が長い女子が横から来て、
『あの、ちょっといいですか?』
頭の中に直接話し掛けて来た。え? どういうこと?
『突然ごめんなさい。矢峰と言います。私、理由があって口で話せないので、テレパシーの会得手術を受けたんです。その、今はこれを使ってコミュニケーション取っていて、、』
根暗な雰囲気と思ったが、意外と饒舌だな。
なるほど、頭に直接話しかけられたのはテレパシーの能力者だからか。
「それでどうしたの?」
『実はなのですが、その……本日私の所属する部活の部長がお休みでしたので、これお願いします』
オカルト部の部費の予算案だった。
オカルト部なんて存在がファンタジーみたいな部活、実在したんだな。
……メチャクチャ高いな。八割が合宿の経費となっていた。他の部活がだいたいどのくらいなのかは知らないが、明らかに高い。
オカルト部ってリーズナブルなイメージあったのだが、、
「ありがとう。とりあえず会計に提出しておくよ」
『は、はい。お、お願いします』
去って行った。今日はやたらと話しかけられるな。
◇
授業が終わり、最上階の廊下を歩いていると、自分が今向かっている生徒会室が何やら騒がしい。
開けるとそこには副会長以外のメンバーが揃っていた。
「あぁ、来たか波読。遅かったぞ」
「ちょうど良かった。波読くんも入りなよ」
机の周りに集まってやっていたのは、
黒ひ○危機一髪。俺が来たとき、ちょうど一回目が終わっていたようだ。
……仕事どうしたんですか?
「仕事が終わったからな。俺が持ってきていたんだぜ」
と諸井先輩が自慢げに言う。
「本当にこういうどうでもいいことほど気が利くのは何でなんだよ」
「何言ってるんだ刃渡。一番楽しんでいただろうが」
と、あの二人は今日も仲が良さそうだ。
「波読くん。いや、庶務殿、せっかくなら僕の左にどうだい?」
鳳凰先輩がそう誘うのだが……
何で会長の隣なんだよ。いくらなんでも早すぎる。察しているなら少しくらい配慮してほしい。
「どうした? 波読、来ないのか?」
「あ、いや行かせてもらいます」
この日は緊張したまま活動が終わった。
◆
屋上に生徒が一人、地面を見下ろす。
遠く、景色を見渡した後、
――生徒は空に舞った。