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第1話 推薦状

初めのうちは頻度多め、

落ち着いてきたら週一投稿になります。

 中学卒業まで、残り半年、クラスメイトと進路についての話になった。


「清藤、高校どこ受けるんだ?」


「まだ決まってない。なんせ家には金が無いから、進路選びには苦労してるんだよ」


 そっか……と、申し訳なさそうに紙を見る友達。

俺、波読清藤(なみよみ せいと)の家はそれなりに貧しい家庭だ。

 親は既に亡く、親戚の家で暮らしている。


 騒がしい空気の中、先生が教室に来る。


「はい、静かにな。これから名前呼ばれた生徒は話あるから、廊下まで来いよ。」


 早い番号から次々呼ばれていく。だいたいがスポーツが上手な奴らで、どうせ特待生とかのやつだろう。俺には関係ない


……はずだった。


「次、波読」


 俺の二つ前の番号の奴が戻って来て呼んだのは俺だった。

 一斉に周りの奴が俺の方を向く。


 どよめきが教室を包む。当たり前だ、俺はスポーツなんてやっていないし、とか言って実験だの何だので、特待がもらえるようなことも全く無い。


「波読、何やってんだ。早く行かないのか?」


「聞き間違いじゃなくて?」


 生徒は扉を開け先生に確認するが、どうも俺のようだ。

 疑問を感じながら廊下に出ると先生も不思議そうな顔をしてプリントを見ていた。


「先生、俺何かやっちゃいました?」


「まぁ、俺も不思議なんだが……お前にも特待推薦が来ている。しかもお前この高校の体験入学とか、文化祭とかに行ったことあるのか?」


 見せられたのは、かの有名な冥仁高校。


「無いですよ。それに俺がこことどんな関係があるんですかね?」


「ここは確か毎年多くの能力持ちの学生を募集しているからな。でもお前は能力持ちではないだろ? 隠しているなら別だが」


 冥仁高校とは、世界有数の能力者研究をしている大学の冥仁大学の付属高校である。

 そのため、能力者について研究するために多くの能力者を集めているらしい。


「波読、受けるか?」


「ちょっと考えます。」


「そうか、まぁ早めに親御さんと相談して決めな。特待生の推薦だから金の部分もそれなりに楽になる」


 そうですか。

 次の人の名前を呼んで、席についた。



「ただいま」


 誰からも返事なんてない。

 それはそうだ。家族はまだ働きに出ている。義理だけど。

 生みの親は、小さい頃に事故に巻き込まれ亡くなっており、子供のいない遠い親戚に預けられた。

 テーブルの上に無造作に置き、自分の部屋に直行する。

 何故俺が……

 能力を手に入れる為の手術、通称会得手術には最低でも10万以上かかる。もちろんそんな余裕は無い。そして冥仁高校は校内の 生徒の四割が能力保持者であり、能力者の教育方法の研究や能力者と非能力者との人間関係の傾向やな何やらを研究している所である。


『すごいじゃん、特待生だったなんて』


「俺も知らん。というか覚えがない」


 次々とメッセージが来る。

 冥仁高校に入ったらどうなってしまうのだろう。

 あそこは金持ちのボンボンも多いと聞く。普通に考えて俺みたいなのは浮くだろう。

 しかし、せっかく来た推薦だ。

 とりあえず帰って来るのを待つか。



「以上、全400名の卒業を認める」




 今日は中学の卒業式。

 進路はと言うと、親との相談の結果、特待生とのことで金の心配が無く、よほどの事が無い限り入学できるということで冥仁高校に入学することとなり、既に進路が決まった状態で卒業となった。


「ただいまー」


 いつも通り、誰もいない家に帰着。

 卒業生のつける造花を適当にカバンの中に押し込む。

 スマホを見ると、クラスメイトのSNSは卒業のツイートでいっぱいだ。


 おめでたい人たちだ。

 鼻で笑い、家に届いた入学書類を見る。


 前半は無駄に金のかかっていそうなフルカラー。俳優みたいな顔のヤツが楽しそうな笑顔で学校の構造や高そうな設備を紹介していて、後半になると、単位だの難しそうな説明が載っている。


 きっと向こうでは能力持ちのボンボンばかりなのだろう。同じクラスに何人も金持ちの子供がいるのを考えると先が思いやられる。



「以上、新入生に入学を許可する!」


 飛んで冥仁高校の入学式。育ての親は両方とも来ない。中学の時も来なかったから、まぁ予想通りだ。

 自分のクラスはというと、見た感じ普通のヤツと、見るからに金のあるヤツが半々で、ソイツらは両親に両脇を固められて恥ずかしそうにしている。

 その中でもトップクラスに貧乏で、保護者が来ていない俺は肩身が狭い。

 これから一週間の予定などを説明され終了。

 校舎から出ると、部活動の勧誘でいっぱいだ。


「あ、君」


 校門への道の途中案の定、部活の勧誘のゴリラみたいにゴツい先輩に呼び止められる。


「はい、なんでしょうか」


「○○部に入りませんか?」


「いいえ、結構です。あんまり余裕ないので」


 そう……と言って離れていく。


 さっさと家に帰るか。


 足早に校門に向かおうとした時、今度は爽やかな青年に呼び止められた。


「ねぇ、君。確か波読くんだよね」


「そうですけど……」


「やっぱりそうだ。生徒会、入らないかい?」


 と、立候補の紙を渡しながら言う。


「え? 生徒会に俺がですか?」


「生徒会に入ると、いろいろ良いことあるし、君なら当選できるだろうからね」


「そうですか」


「あ、別に今じゃなくていいよ。僕は2-7の鳳凰圭(ほうおう けい)。気になったら選挙までの期間だったらいつでも来ていいからね」


 そう言って颯爽と去って行った。



「やぁ、来たね」


 昨日生徒会に勧誘してきた先輩のクラスに行くことにした。つまり、生徒会に立候補するということ。

 ただの帰宅部では、あまり評判がよろしくないらしく、生徒会なら金なんて要らない。結果的にそうすることにした。


「言いたいことは顔を見ればわかるよ。早速準備しないとね」


 ――そう鳳凰先輩はなぜかホッとした顔で言った。



 鳳凰先輩はいつの間にか演説の台本や推薦人を用意していて、残すは選挙のみとなった。


「波読くん、緊張しているかい?」


 ハンカチを差し出しつつ、そう聞かれる。

 いいえ、大丈夫です。

 そうか、じゃあ始めようか。


 鳳凰先輩はそう言い残し、演説に向かった。

 何を言っていたか全く覚えていないが、場は凄く盛り上がっていたのは確かだ。

 汗を拭きつつ戻ってくると


「さぁ、後は君だよ。言った通りにやれば大丈夫だ。さぁ! 行ってこい!」



 昇降口に新生徒会のメンバーが張り出される。

 その中に俺の名前があった。


「あ、波読くん。いや、庶務殿かな」


 鳳凰先輩に見つかり、話しかけられる。


「普通に呼んでくださいよ先輩。それよりも当選おめでとうございます」


「ありがとう。君もね」


 それと、と前置きして


「当選者は午後に生徒会室に集まることになってるから、忘れないでね」

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