第3話「俺の歌声は宇宙への切符だった?」
キーンコーンカーンコーン。
やっと6限目の授業が終わり、あとは帰りのHRをこなしたらいよいよ待ちに待った放課後だ。今日は色々とダメージをもらっちまったから、しっかり休養しないと。
「えー、というわけである。もう入学して1ヶ月が経つが、そろそろ天の川学園での生活にも慣れてきたことと思う。そこで、6月の合唱コンクールに向けて歌声委員を中心に練習をすすめていきたいところなのだが、誰か立候補したい者はいるか?」
俺らのクラス10人の中に、そんな音楽とか合唱とかに熱心なやついたっけ?
「私の出番のようね。」
いた・・・福田成美だ。
「えー、他に立候補者がいないようであれば、福田さんに決定するが、異議があるものはいるか?」
もちろん、だれもやる気のあるものなどいるわけもないので満場一致である。
しかし、俺はそんな弛緩した雰囲気に嫌気が差したので、すかさず手を上げた。
「はい。福田さんは将来の夢であるテレビアナウンサーを目指すための踏み台として、この由緒正しい天の川学園歌声委員という経歴を得ようとしているのが丸わかりです。そんな暴政は許せません。俺が代わりに務めたほうが100倍マシです。」
「な、何よあんた!いきなりしゃしゃり出てきて、三下はすっこんでなさいよ!この遅刻グズ!」
よし、上手くいった。明らかに福田は動揺している。俺の奇襲作戦が功を奏したのだ。
しかし、この時思いもよらない邪魔が入ったのだ。飯塚である。
「・・・はい。私は福田さんのほうが適任だと思います。何故なら」
「水田くんは、音痴だから・・・」
(クス・・・クスクス・・・)
「ーーーーーッツ!!!」
顔から火が出そうな思いだった。これはさっきの仕返しのつもりか?ほくそ笑む飯塚を見て俺は今度は左手でハリセンを持ち、どたまを叩いてやろうかとそう思った時、
「なら、こうしましょう。私と水田君、どっちが歌声委員にふさわしいか、歌声できめるというのは!?」
なっ!?
「歌声委員たるもの、クラスを率いる存在として、当然自分自身も高い歌声力を有する必要があります。織田信長が腕っぷしが弱かったとしたら、あなたはついていこうと思えますか?」
「ぐぐぐ・・・」
「えー、それなら今ここで1曲歌っていただきましょう。それで双方よろしいか?」
「はい」
「は・・・い。」
「先方は譲ってあげるわ。まあどうせ下の下の下でしょうけどねw」
反論の余地がなかった。追い詰められた俺はジャイアンリサイタルよろしく大声でとにかく元気よく、天の川学園の校歌を3番までフルで歌い上げた。
「「「ボエ~!」」」
・・・・・
・・・・
・・・
歌に集中していた俺は、歌い終わって初めて周りの雰囲気がおかしいことに気が付いた。
教室には俺1人しか残っていなかったのだ。一体どういうことだ?
さっと窓の方に目をやり、俺は驚愕した。
まだ午後の4時、夕方だっていうのに、あたりはオレンジ色の夕日につつまれているどころか、真っ白な銀世界が広がっているではないか。
まさか、これは、本で読んだ・・・・宇宙世界!?
さっきまで間違いなくここは天の川学園の俺のクラスだったはず、いったいなにが・・・?
「・・・それは、君自身がよくわかっているはずだと思うが?」
1人とりのこされた空間に、聞き覚えのある声が響いた。
産業まとめ
・福田成美との歌声委員をかけた直接対決
・ボエ~
・だれもいない、ここはどこ?