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にほいち47  作者: 多摩みそ八
9/16

第9話 悟りかゆとりか 悠然の阿波讃岐!!

 和歌山からフェリーで徳島へ、いよいよ四国に上陸!



「わあ~着いた~、何があるのかな~楽しみ~!」

 千鳥は人生初の四国に胸が高ぶる。島といっても同じ日本国内。本州と比べさほど差異はないのだが、初めて降り立つ大地は全てが新鮮に目に映り異国さながらの情緒を感じていた。昼の12時50分、四国東の玄関口・徳島港へ降り立つ。まずは腹ごしらえにご当地グルメ・徳島ラーメンへ。冷やし中華が恋しい真夏の昼下がりであったが、冷房が効いた店内と脳天がキンキンするような氷水で熱々のラーメンを和らげる。こってりスープは豚骨醤油、豚バラ肉と卵がたっぷり入っていてまるですき焼きのようなラーメンだ。スタミナをたっぷり注入しまだまだ続く長旅への体力をつける。食べ終えると一行は徳島市から北上、渦潮で有名な鳴門(なると)海峡に寄っていこうとするが……


「鳴門ッ!? ……いやー渦潮といってもなー毎回はっきり見えるわけじゃあらへんで。ちょいと遠回りなるし、はよ行こ行こ!」

 カノンは何か気が乗らないようで足早に徳島を去ろうとする。まごめは少し心残りであったものの日程が遅れているので寄らないのはやむなしと結論づけた。徳島県はラーメンを食べただけで終わり、隣の香川県に向かって行こうとする道中……


「あれー真っ白な恰好した人が歩いてるよ~。バイクでも暑いのにすごいね~!」

 千鳥は白装束に身を包み頭に大きな笠をかぶる、片手に木製の長い杖をつき炎天下のなか行脚している人を発見した。ここは弘法大師こと空海ゆかりの地。八十八の霊場を巡礼するお遍路さんである。風を切るバイクでも堪える猛暑のなか自分の足で一歩一歩地道に進むその姿は、まさに俗世から離れた修行者そのものであった。


「へ~お寺を徒歩でまわるんだ~。なんだか悟りをひらけそうだね~、ねえ私たちもちょっと寄ってこ~よ~。」

 初めて実際に目にするその雄姿に感嘆し、わずかながら雰囲気だけでも体験していこうとする。訪れたのは徳島市から程ない山あいのふもと、1番札所・霊山寺(りょうぜんじ)。八十八箇所巡礼の出発地で、ここから高知・愛媛・香川と1000kmをゆうに超える遍路に幾多の人々が旅立っていった。4人はこれから巡礼するのかいと団体のおばちゃんたちに尋ねられたが、我々は途中の霊場をすっ飛ばし香川に向かう予定だと苦笑い。若いから他にやりたいことも色々あるわよねーとフォローされるのであった。


 霊山寺から西に1時間少々走り香川県へ。続いて88番札所・大窪寺(おおくぼじ)にやってきた。全ての札所をまわり終え辿り着いたならば感極まるのだろうが、最初と最後しか行ってない4人は当然あっけない様子。悟りの境地などは程遠く雰囲気を味わうのはさすがに無理があった。今度はベテラン遍路といったような好々爺に、お嬢さん方まわって来たのかいと尋ねられる。4人は2箇所しか行っていないと照れ笑い、しかし日本一周していることを告げると大いに称賛され、行く先の安全を祈願していただいた。

挿絵(By みてみん)

 旅ならではの一期一会にほっこりし高松市へ向かう。うどん県といえば香川……なのだが営業時間がわずかな時間に限られ昼過ぎには完売してしまう店も多い。本日は、というか本日も移動距離はたいしたことはないのだがフェリーに乗ったため時間が押し最早夕方。夜でも営業しているうどん屋を求めて県庁所在地の高松へバイクを走らせた。高松市はかつて四国の正面玄関ともいうべきな大きな港町で、岡山からの連絡船が行き交っていた。瀬戸大橋が開通してからは玄関口としての役目は薄れたが、松山市に並ぶ四国最大級の都市で経済と交通の要衝である。今夜はうどん屋巡りのため市中心部のドミトリーに宿泊することにした。


「ぷはーーーっ、今日も一日お疲れーい!」

 一行は繁華街へ繰り出し旅の疲れを労う、うどん屋と居酒屋をハシゴし高松の夜を堪能。出発から1週間経過し毎晩寝床が変わる環境の変化と猛暑に身を晒しながら移動する疲労が蓄積してきた。8月の日本列島はバイクツーリングするのには厳しい時期。ちょうどよい気温で降水量が少ない5月が最も快適だと思われる……花粉症でなければ。だが4人は勉強が忙しい看護・医療系の大学生、時期を選んでいる余地などなかった。


「あかんなこりゃ、完全に飲まれてもうたな。」

 久しぶりの深酒でベロンベロンに酔っぱらった4人。歩くのもフラフラとおぼつかず、まさに千鳥足。宿へは近距離であったがタクシーに乗って戻る。ついつい余計な出費が嵩んでしまった。まだまだ修行が足らないようである。



「うー頭がガンガンするー、さすがに飲みすぎたー……」

 翌朝は因果応報・自業自得の二日酔い。またもやチェックアウト時間ぎりぎりの昼前に出発。遅めの朝食兼昼食はやっぱりうどん。あっさりしたシンプルな味でいつ食べてもすんなり喉を通る。ガッツリしたのを望むなら天ぷらも多数用意されておりバリエーション豊かな県民食であった。


 8日目の本日は暑さが和らぐ曇り空。今の時期は晴天よりもむしろ観光日和。こんぴらさんこと金刀比羅宮(ことひらぐう)にお参りしていくことに。長い石段が特徴であり本堂まで785段、奥社までは1368段の香川を代表する神社である。さすがにこれだけの階段を登ると汗が噴き出てくる。本堂まで登り引き返し、参道入口に立ち並ぶ店で冷たいうどんに舌鼓。日本一面積が小さい香川県をたっぷり堪能して後にする一行であった。

挿絵(By みてみん)

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