第8話 浪速往来!! ここは天下の台所!
日本一周6日目in奈良、これから大阪・和歌山を目指すのであった。
「よーし今日は四国上陸、一気に香川県まで行くぞー!」
張り切って先頭を走るまごめであったが昨日に引き続きあいにくの曇り空。進行方向は暗黒の空模様で嫌な予感しかしない。大阪へ向けやってきたのは奈良との県境の暗峠。ここは最大勾配が37%の日本一ともいわれる超急斜面、時代に逆行したかのような石畳が敷き詰められた道である。これでれっきとした酷道、いや国道であるから驚きだ。ギアをローまで落としリアブレーキをガッツリ踏み、おっかなびっくりしながら坂を下る。想像以上のスリリングな難所を越え大阪府突入、せめて1ヵ所くらいは観光していこうと大阪城を目指す。しかしさすが天下の台所、交通量がべらぼうに多くなかなか進まない。場所によっては都内より混んでることもある。
「やっっっと見つけたー!!」
大阪城公園に到着したもののバイクの駐輪場がなかなか見つからない。基本的に観光地に二輪車の案内は一切ないことが多く、周辺をグルグルして迷うことはよくある。結局スマホでブログの過去記事を検索して駐輪場所を見つけることができた。大阪城といえば薄緑色の天守閣、これは銅瓦が年月を重ね表面に錆が発生したためである。錆とはいえど劣化ではなく内部をしっかり守るためのコーティングみたいなもの、丹念に補修された甲斐もあり見事に雅やかな外観を放っていた。
「すぐ近くだから寄っていこ~よ~。」
千鳥は初めて訪れた大阪の街に浮かれはしゃぎ道頓堀に寄っていこうと願い出る。早く四国へ渡りたいまごめは却下しようとするが、ポツポツと雨がパラついてきた。カノンは和歌山からフェリーに乗ってショートカットし時間ができるのでそんなに先を急ぐ必要はないと言う。まごめは仕方ないと渋々寄り道を了承する。1つぶ300メートルでおなじみのグ〇コのネオン、昼間とはいえ派手な看板が立ち並び大阪ミナミ・ナニワを象徴する繁華街であった。
「雨止まないね……ねえ、いっそのことU〇Jで雨宿りがてらランチにするのはどう?」
ゆきやは思い切って遊園地に寄っていくことを提案。家族旅行で全国各地に訪れているゆきやであったが、高尚な両親であったためもっぱら観光するのは博物館や名勝史跡。レジャー施設はあまり行ったことがなく憧れていた。これ以上大阪にとどまると本日中の四国入りが危ぶまれるが、降りやまぬ雨によりモチベーションは激減。ちょっと雨宿りという口実のもと道草をくっていくことになった。
「今日はしょうがないけど、そのかわり明日からたっぷり走るからね!」
夏休みシーズンとはいえ雨の平日、U〇Jは比較的空いていた。屋外のアトラクションは運休が目立ったが屋内だけでも十分充実しており、あっという間に時は過ぎていった。まごめもなんだかんだいって年頃の女の子のため結構エンジョイしていた。ランチだけ済ませると言っていたがこの天気の中、足早に退場することなんて到底無理な話であり夕方まで過ごしてしまう始末。今夜は大阪に泊まっていくこととなった。
「結構使っちゃったから今晩は安宿にするよ!」
遊園地で予定外の出費をしたため宿代を抑えることに。まだ旅は1ヶ月以上残っているため豪遊していては最後までもたない。ついついホテルに泊まってしまったことを反省し今夜はインターネットカフェに泊まっていく手段にでた。1泊あたり2000円前後で泊まることも可能であり、無料のシャワーやモーニングのサービスが付いている店も。最初は宿泊としての利用に抵抗があるが、一度慣れるとその手軽さ気楽さにやみつきになる貧乏旅行者の大きな味方であった。4人は料金をさらに抑えるため2人用のカップルルームを2部屋利用することに。ラブホテルに泊まることに比べれば恥ずかしさなど無いに等しかった。こうして6日目は奈良からわずか60kmあまり、大阪市のネカフェで夜は更けていった。
「ああもう時間過ぎちゃう! 早くしなさいよっ!」
翌朝慌てて支度をして退店する。ネカフェはパック時間を過ぎるとみるみるうちに延長料金が跳ね上がるため寝坊は厳禁。慣れない狭いブースしかも2人同室でなかなか寝付けなかった。慌ただしく出発し和歌山へ向け7日目スタート。すでに朝ラッシュは始まっておりよそから来た旅行者でありながらまんまと参加してしまった。せっかくの自由な旅行であるのに渋滞にハマるのはなんともバカバカしい。
ようやくラッシュが治まったのは関西空港を過ぎてからであった。ここまで来ると和歌山港はもう目と鼻の先。和歌山県を代表する大きい河川・紀の川を渡り和歌山市内へ入っていった。フェリー出航まで若干の時間があるため和歌山城に寄っていくことに。和歌山市は大阪の隣とは思えないほどコンパクトな街である。
「いよいよ四国か~ワクワクするね~。」
日本一周を開始してから1週間、ついに四国・徳島行きの船に乗り込む。まだ見ぬ新しい土地に向けて乗船する瞬間はテンションが否応なしに上がるものだ。午前10時35分・定刻に出航し2時間15分の船旅が始まった。最初はデッキに出て移りゆく海原の景色を眺めていたが、旅とネカフェ泊の疲労が相まって眠気を誘う。乗船時間の大半を船内のカーペットで横たわり雑魚寝した一同であった。
待ち受けるのは阿波・讃岐・土佐・伊予の4つの国からなる四国! 果たして何事もなく突破できるのか、4人の旅はまだまだ続く!