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にほいち47  作者: 多摩みそ八
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第15話 追憶の月夜!! 甦る出会いの刻!

 余裕のない旅に付いていくことが辛くなったゆきやは突如1人で帰ってしまう。残された3人はキャンプ場で茫然とするのであった。



「そんな……ウソでしょ。ゆきやちゃんが帰っちゃうなんて……」

 千鳥はこの状況に慌てふためきゆきやに電話をかける。だがどうやら走行中のようで応対はない。キャンプ場の駐車場に停めてあったゆきやのトリシティ125の姿はきれいさっぱりになくなっている。すっかり陽も落ち夜空は闇に包まれるなか千鳥は行方を心配する。


「まだ遠くにいってないはず、追いかけようよ!」

 しかしまごめは顔をうつむけ諦めの表情。

 

「いや、今から追いかけるのは危ないし……それにゆきやはもう限界だったんだ。もともと貧乏なあたしたちと旅を続けるなんて無理だったのさ……」

 ゆきやは他の3人とは違って医学部のエリート。バイクでキャンプしながら真夏の日本をまわるなんて荷が重すぎたのだろう。カノンは神妙な面持ちで腕を組み、返信が来るまでこの場を動かない方がよいと考えを述べる。不安な気持ちが膨らむなか時は過ぎていき、22時をまわったころようやくゆきやからメッセージが届いた。

 

“みんな心配かけて本当にごめんね、今ホテルにいるから大丈夫だよ。東京までは1人で帰れるから気にしないでみんなは旅を続けてね。”

 すかさず千鳥は再び電話をかけようとするがカノンは制止する。今は一人に、そっとしておいた方がよいと。この先どうするのかと会議をするが、部長のまごめの意志は強く3人で旅を続行しようという。明日は早起きして予定通り沖縄行きのフェリーに乗るため鹿児島を目指す。こうしてメンバーを1人欠いた単車会、月明かりがちらつく日向(ひゅうが)の夜が更けていく。まごめは眠りにつけずテントから外に出て在りし日々を思い出していた……



~1年前の春~



「あ~あ結局誰も新入部員入らんかったな~、せめて1人くらいは欲しかったんやけど……」

 当時大学2年生のカノンとまごめ・千鳥。サークルはこの3人で活動していた。原付バイク1台ですら置き場に苦労する首都東京。網目状に鉄道は発達しバイクで移動する学生は多くない。女子の割合が多い医療・看護系の東風(とうふう)大学はなおさらのことで、新入部員が入ってこないことは至極当然のことであった。不貞腐れ構内のベンチに座り込む3人、スナック菓子をつつきながら反省会をしていたところ1人の学生が話しかけきた。


「あ、あの……単車会サークルの皆さんですよね……? わ、わたしっバイクに興味があるんですけど……」

 死んだ魚のような目をしていた3人、思いがけない言葉に水を得たかのように目を輝かせる。聞けばこの池上ゆきやという医学生は同い年の2年生、父親が昔バイクに乗っていて憧れを持っていたと言う。3人はゆきやを歓迎し是非とも入部しないかと誘うが、彼女の父親は厳格であり娘には二輪免許取得を認めないとのこと。せめて後ろに乗らせてくれないかと懇願するゆきやであったが、カノンが悪魔の囁きをする。


「なんや、もう19なんやし勝手に免許取ったらええやろ。ウチは大学もバイトもアパートもぜーんぶ親に相談せず自分で決めとるで。単車に興味持った時点で“こっち側”や、はよ教習所いこいこ。ちょうど千鳥が通ってるんや、そうだ今から一緒に行こか!」

 あっという間にカノンのペースに飲まれるゆきや、即日自動車学校に連れていかれることとなる。千鳥は部員であったものの免許がなく、ようやくこの春に教習代を用意でき通っているところだ。いつもはまごめが後ろに千鳥を乗せていたが今日はカノンのZ125へ。そして部長のGSX―R125のタンデムシートにゆきやを乗せ4人で教習所に向かう。生まれて初めて乗るバイクに緊張するが次第に何物にもかえがたい開放感に満ちていくゆきやであった。

挿絵(By みてみん)

「すごい……これがオートバイ、まさに風をきって進む自由の化身!!」

 ゆきやは教習所に着くころにはすっかり虜になっていた。千鳥が1人実技教習に向かい3人は2階から様子を眺める。まごめとカノンとの差は明らかで動きはぎこちなくふらついていて危なっかしい。何度もコースを間違えてるようで教官から注意を受けている。ゆきやはなんだか難しそうと心配するがまごめがフォローする。


「大丈夫さ体の小さいあたしでも中型取れたんだし……小型ならもっと簡単だよ。それに車の免許持ってるんでしょ? あっという間に二輪免許取れるよ。」

 緑髪の怖そうな姉さんととっつきにくそうな金髪の2人は思ったよりも親切で友好的であった。その後4人で夕食し帰路につくころにはゆきやの決意は固まっていた。今まで親の言うとおりに生きてきた人生、今こそ自らの意志で二輪免許を取ろうと!

 こうして親に内緒で教習所に通うことになる。秘め事をする背徳感にある種の愉悦を感じながら教習を進めていく。無免であり学科教習もあった千鳥に追いつき2人同時に卒検合格、小型限定の普通二輪免許を取得した。その後は父親に免許取得がバレてお小遣いを停止させられるトラブルがあったが、カノンの紹介によりカフェのアルバイトで順調に貯金。バイクを購入し現在に至る。これがゆきやと3人との出会いであった……



~そして只今~



「なんであんなこと言ってしまったんだろう……大切な仲間なのに。」

 まごめはゆきやとの出会いを思い出し、独りよがりになっていた自責の念にかられて涙を浮かべる。一方のゆきやも逃げ出してしまったことを悔やみホテルの一室で枕を濡らしていた……


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