第1話 前途多難!! 波乱の旅立ち!
初投稿です。
自身の日本一周旅行を参考にしています。
にほいち47 第1話
「前途多難!! 波乱の旅立ち!」
※この作品はフィクションです。
令和元年(2019年)夏
東京都大田区多摩川のほとり
「ああっ!! もうこんな時間!」
怒涛の勢いでベッドから飛び起きる。金髪のショートカットで小柄な彼女の名は、
“望来まごめ”
医療・看護系の私立東風大学の3年生であり、バイク乗りのサークル“単車会”の部長である。
「部長が遅刻じゃお話にならないし!」
消防士の如く身支度を済ませ部屋を出る。
「ふわーあ……あれ、まごめちゃんまだ行ってなかったの?」
リビングで同居人から声を掛けられる。女性専用のシェアハウスで、昨夜は旅の出発記念の飲み会をハウスメイトに開いてもらった。大学の定期試験の疲れもあり不覚にも寝坊をしてしまったのだ。
「昨日はありがとう! んじゃいってくるわー!」
事前に準備してあった荷物をバイクに乗せエンジンスタート。いよいよ待ちに待った夏休み……そして日本一周ツーリングの始まり! この日のために節約・倹約を重ねアルバイトを必死にやって資金を貯めてきた。そのせいで本業である学業を疎かになり、まさに紙一重で試験を突破! 危うくもう少しで3年生をもう1周するところであった。
「気をつけてねー! お土産待ってるよー!」
同居人に見送られながら家を後にする。左手の親指を立てサムズアップ! 帰ってくるのは約1ヶ月半後、今まで経験したことがない長期旅行。しかし不安や寂しさよりは血湧き肉躍る高揚した気分がはるかにまさっていた。
「集合時間の6時まであと5分か、飛ばすぜ相棒!」
アクセルをガバっと開け勢いよく加速、まごめの愛車はスズキのGSX-R125。ピンクナンバーの小型二輪いわゆる原付“二種”。高速道路は走れないものの一般道では車と同じように走ることができ、50ccの“一種”とは似て非なる全くの別物だ。
「ふう~少し遅れたけど着いたー……ってアレ!?」
待ち合わせ場所の大学正門に到着したものの誰の姿も見えない。今回の同行者はまごめの他にあと3人、全員同学年のサークル仲間。遅刻の常習犯たちだが日本一周の出発日でも当然のように集合時間には集まらなかった。
「もーーっ! あいつらときたらー!」
まごめは呆れた表情でスマホを取り出す。まずはメンバーの中で最もまともそうな、
“池上ゆきや”
に電話をかける。容姿端麗なお嬢様、4人の中で唯一の医学部で見た目は優等生っぽいが……どうも天然でどこか抜けているところが垣間見れる。
「あっ!! まごめちゃんおはよう! 今ドライヤーかけているところなの、もしかして……もう大学着いてる? ゴメンね……もう少しで行くから!」
朝から呑気に風呂に入っていたようだ、まさか6時には誰も来ないであろうと高を括っていたのだろう。ちなみに彼女の“もう少し”は軽く1時間を超える。
「まったくゆきやんの奴……次はアネキにかけるか。」
まごめはかったるそうな表情で引き続き連絡する、
“朝霧カノン”
関西出身で豪放磊落、背も4人のなかで最も高く姉貴分的な存在。バイクの経験……いや、人生経験が豊富であり部長であるまごめも頭が上がらない。
「おはようさん!! なんやまごめ、もう着いたんか! わりぃわりぃウチ今タイヤ換えてるねん、もうちょいかかりそうやわ。」
なんと出発当日の朝にバイクのタイヤ交換をしていた。どうやら6時集合というのはみんな希望的観測・建前だと思っていたようだ。
「んーそんでまごめの他には誰か来とるん? ……あーせやろなー試験の翌日に出発なんてやっぱ無理があるでー。 ウチとゆきやんはともかく、あの“寝坊王”が準備できとるわけないやん。これから起こしに行くんやろ? ウチもボチボチ向かうでー。」
この事態を予測していたカノンはいたって冷静であった。一方、約束の時間に誰も来ず急いで支度してきたことが徒労に終わったまごめはおかんむり。ムスっとしながら“寝坊王”のアパートへバイクを走らせた。
“謝名堂千鳥”
まごめの大学入学当初からの親友。すごくレイトな方向性でルーズかつマイペースであり寝坊・遅刻は日常茶飯事。あまりにも朝起きられないのでまごめにアパートの合鍵を渡し、起こしに来てもらうのが当たり前になっていた。
「いつもいつも世話やかせやがって……千鳥、入るぞー! うっ……!!」
いつものように部屋に入ると床に千鳥がうつ伏せで熟睡していた。どうやら荷物を整理している途中で力尽きたらしい。部屋の片付けも終わっていないようであたりには物という物が散乱している。
「起きろ千鳥! 今日は出発だぞこの寝ぼすけ!」
まごめは千鳥をブルンブルンと揺さぶる。もはやちょっとやそっとではいつまでたっても起きないので強引にでも叩き起こさないといけない。
「ん……んん……? ハッ!……まごめっち!」
ようやく千鳥が目を覚ます。
「ああっー!! 寝ちゃった……うえーん全然準備できてないよー!」
千鳥は今にも泣きそうな表情で寝落ちを悔やむ。昨夕まごめに荷造りを手伝ってもらっていたものの、まごめは飲み会のため途中で帰ってしまった。ひとりで頑張ってみたもののやはり試験の疲れからかダウンしてしまった。
「やっぱこうなるかー、しょうがねえなぁ手貸してやるよ……ってなんじゃこりゃあ!」
まごめは見かねて荷物をまとめようとすると、持ち運びの麻雀セット・バドミントンのラケット・たこやきプレートとおおよそバイクに積むには邪魔としかいえないものが含まれていた。
「車で行くんじゃないんだから! これも不要! これもいらん!」
まごめはごった返しの荷物を取捨選択する。千鳥はみんなで遊べるのに……と選ばれなかったグッズを惜しむ。バイクは積載量が限られるので本当に必要な物だけ積んでいくのが賢明である。そうこうしている間にカノンがやってきた。
「おう千鳥! 邪魔するでー……ってなんやこれ!? 全然片付いてないやん!」
あっけにとられたという顔をしつつもすぐに納得し一緒に部屋を片付け始める。時計の針はまもなく8時をまわろうとしていた。ここでようやくゆきやが到着、全員が揃う。
「おまたせしてゴメンね、結構道混んでたよ……」
朝ラッシュが始まる前に出発する計画は完全に破綻、学生は夏休みに入ったが世間はお盆前の駆け込みで大忙しである。部屋の片付けも完了し朝食を済ませたころには9時をまわっていた。ようやくスタートといいたいところだが、せっかくなので本来の出発地点の大学で記念撮影していくことに。予定が狂ったまごめは苛立ちを抑えながら4人で校門へ向かう。するとちょうどサークルの顧問の矢口先生が通りかかった。
「あれ、お前ら早朝に出発するんじゃなかったか? ははーんさては試験疲れで準備できてなかったんだなー?」
図星を突かれ不服そうなまごめたちであったが写真撮影をお願いする。煽られつつも旅路を心配してくれた。
「気をつけて行ってこいよー!!」
「行ってきまーす!!!!」
先生に見送られながら今度こそ旅の始まり! 予定より4時間遅い10時発となってしまった。ようやく走り始めた果てしなく遠い日本一周……こんな調子で完走できるのだろうか!? 結末はいかに!? 彼女たちの闘いはこれからだ!!
改善点あればご指摘いただければ幸いです。
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