第28部 人狼の秘密 緑の宝石覚醒
1937年(昭和12年)8月13日 モンゴル
*)クライの覚醒
三浦教授、麻美、石川、館長、館長の父、ターニャ、ルカ、クライ の8人。
ようやくウランバートルまで帰ってきた。山脈でロシア軍と交戦までして来た。
私たちは館長さんご家族を無事に探しだした。でも、とても無事にとはいえない。ロシア軍の人狼捕獲作戦がぽしゃり、私たちは、交戦、撃破までしてしまったからもう逃げるしかない。
ウランバートルで、前に泊った同じホテルに戻り、前回の予約が出来ているかカウンターの確認には、
「予約確認は石川くん頼む!」
「はい、教授。ちょっくら行ってきます」
ロシア軍にはこのホテルは知れてるだろう。でも、直ぐには襲って来ないだろうからこのまま泊る事にした。逃げた研究員は何処にも寄らず電話も掛けずに、イルクーツクに戻るのだ。だからロシア軍は捕獲失敗を、まだ知らないままである。都合がいいのである。
さて、館長のご家族を見つけて保護した訳だが、館長が負傷している。医者に治療して貰うのがいいのだろうと、教授が尋ねた。
「ルカさん、ご主人の傷は大丈夫でしょうか。長距離の移動はできますか?」
「ええ、明日にはすっかり治っていますから安心して下さい」
「ええ? そんなに早いのですか? 瀕死というか、死亡されましたよね?」
「三浦さま、そのような胸に突き刺さるような事は言わないでください。気を使わないでくださいませ」
一時的とはいえ夫が死んだのは、ゴルの妻としての最大の汚点なのだ。この脳無し教授の発言には、自分のこころが折れる思いがするのである。
「申し訳ありません。心ない発言をお許し下さい」
「いえいえ、そのように謝られる必要はございません」
「すみません館長さん、病院には行けないので心苦しいです」
「三浦さん、もう大丈夫ですので、次からは身内の方を心配されてください」
「はい、そうですよね」
「私の心配は終了して下さい。それよりも、クライの封印を解きますか?」
教授は考えるが、判断に困りルカさんに回答を振る。ルカさんは、
「ええ、解いてみましょう。捕まれば危険ですが、解いてしまえば、クライも自分で判断して行動が出来ます。一人でも逃げる事ができますから」
館長さんも了解して、封印を解く事に決まった。
石川くんは予約が残っていて宿泊できるからと戻って来た。部屋割りは前回とは1室増えたので少し違う。館長さん一家、教授と石川くん、残りは美女2人と決まる。館長さん一家は定員オーバー。お爺さんが教授の部屋に追い出された。
麻美が、
「もう直ぐ夕食の時間になります。お爺さんと先生にビールを頼んでいます。館長さんはもう1日我慢されてください」
三浦教授は、
「すみませんが、今日も一番安い定食ですが、ルカさんとクライさんと会えた事を祝って、ステーキを追加しています。私が腕を振るって8等分に切ります」
「ええ!!!そんな~」
「誰がひとりに1枚と言いましたか?」
作者はせこかった。館長だけが大笑いしている。
館長は、
「麻美さんには、本当に頑張って頂きましたし、命の恩人でもありますから、私から何かお礼をしなければなりません」
「ゴル、私たち親子も助けて貰ってますよ。忘れないで」
「はい、では倍返しで行きましょうか」
「?・?・・? お言葉だけで十分です」
「ルカさん、服はそのままでよろしいでしょか。何か変装になるように服を買いに行きませんか?」
「ええ? これでいいですよ。私の面は割れていませんもの」
食事が済んで、みんなは館長さんの部屋に集まる。封印を解き今後の対応を協議する予定だったが。
「お姉さん、私がお化粧をしてあげます。きれいになりましょう?」
妹のターニャが気の利いた事を言った。だから、ルカは家族が居ることが嬉しくて泣きだしてしまう。ようやく緊張の糸が切れたようだ。
「うん、お願いね」
この後直ぐに、男共がすべて廊下に追い出された。女の時間だそうだ。男は階下のレストランにビールを飲みに行く。
ミーシャさんがレストランに居る教授らを呼びに行く。しかし、ミーシャさんは戻ってこないから、私が迎えに行くと、
「ま! ビール」
「みなさん、用意が出来ていますので集まってください」
集合したところでルカさんが話し出す。
「私たち家族を助けて頂きありがとうございます。日本の皆さまにはお世話になりました」
ルカは私たちにお礼を言うと、母娘の事情を簡単に話した。
ロシア軍は兵の改造、人狼兵の増員を決定し計画を開始した。その過程で人狼の女・巫女の血液が必要とわかり、巫女狩りを始めた。各方面に散らばる巫女の調査捕獲が始まった為に並行世界に逃れていたと。
続けて、
「10年前位に、巫女が1人捕まっているようです。しかし、兵の増強には沢山の血液が必要なので、他の4人の巫女も探しています」
などの状況説明を受けた。
クライが落ち着いたようだからと、封印解除を始める。
「クライ、母さんがお前の封印を解くから、このベッドに寝て頂戴。この宝石を胸に持っててね。いいかい?」
「待って! 私のロザリオも持たせて下さい」
私がブレスレットをクライの左腕に嵌めて、ロザリオを右手に捲いて持たせた。
ルカは優しくクライに話しかける。
「今から長い眠りにつくけれど、母がいるから安心していいよ」
「うん、お母さん。いつでもいいよ」
「我は汝の記憶を司る。我は汝の真名を唱える、ファティーマ クライ」
クライは眠りについた。
「これからいい夢をいっぱい見るんだよ、愛してる! クライ」
クライは夢を見ている。黒い大きな馬がいる。横には、誰だろう! 女の人が立っている。1人、2人、3人・・もっとたくさんの人がいる。
クライが目を覚ました。大きくなっている。23歳になる。身長は麻美よりも大きい。170cmはありそうだ、みんなは驚く。
かの麻美でさえ、自分が経験しても見れた訳では無いのだから、大いに目を見張っていた。
「うそ~、やだ~、そんな~、私もだったんだ~!」
クライは身体が大きくはなったが、麻美や霧の時とは違い、目覚めが早かった。封印が弱かった、期間が短かった、まだ他にも目覚めの時間が早い、という要因があるのかもしれない。なぜだろうか。
「お母さん、あ! お父さん、ターニャ?」
「それから、ん~ユキさん? ですね。親子で助けて頂きありがとう」
私は微笑んで「はい、そうですよ」と言った。そして、ロザリオを受け取る。
「クライさん、服を用意してるから、着替えようか」
「ターニャさん、来て!」
私はクライに着替えを促し、ターニャを誘って自室へクライの着替えを取に戻った。服を選んで部屋へ戻る。
女らは全員、男共を睨む。女と男と別れた。もう遅いので就寝となる。
「ターニャ、あなたのは大きいから、脱いで!」
私はターニャの胸から一枚を頂いて、クライに着せた。
「麻美さん、胸が寒いわ。どうしてくれるのかしら?」
明日からは、ウランバートル から モスクワまで移動して、エストニアまで逃げる。




