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人狼と少女  作者: 冬忍 金銀花
第2章 シベリア紀行

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第23部 シベリア紀行 並行世界 キリと人狼


 1915年(大正4年)10月 並行世界 シベリア



*)霧の妊娠と霧の致命傷と


  霧とミーシャ。教授と先輩 の4人


 エカテリンブルクの1915年10月に次元跳躍していた。


 街の中で動かずに先輩の傷が治癒するのを待つ。教授は先輩の服を買い求めに行った。霧は付きっきりで看病をしている。人狼になった経緯が怪我だから、いくら快復するとはいえ、人狼になったばかりで、まだ身体がついてこない。本人も困惑していてもどかしい。


「智治くん、俺は君の服を買いに行ってくるよ。今の服ではどこにも行けないよ。何か希望があるかい?」

「はい、お父さん。似合う服をお願いします。それだけでいいです」

「あっは~、俺は信用されてはいないんだな。ミーシャさん、一緒に買い物をお願いします」

「すみません、今日は教授お一人でお願いします」

「はいはい、いってきます」



 つい先日までは、霧が10歳、智治が23歳だった。それが、今では霧が20歳になり、夫婦にまでなってしまった。いきさつは不幸だが、二人が幸せならばいい。23歳の男に10歳の幼女がじゃれついていた時とは違う。馴れない関係でぎくしゃくしている。女の常識を知らない、大人の常識を知らない10歳だった子供だ。いくら聡い子とはいえ、面食らうのは当然だ。


 また、女の扱いも出来ないお父さんだから、杉田夫婦も大変だ。そんな間を縮めようと努力する霧。今まで人間ウォッチしてきた霧は、頭で考えて大人になろうと努力している。話し言葉は桜子や麻美が元となっているから、やはり普通ではありえない。


「ねぇ、智治さん。身体の変化とはキツイのかしら」

「そうだね、傷ついたらその部分が、カーっと熱くなるんだ。また、身体はとても軽やかになったよ。他には~、目も耳も鼻も顔も良くなったね!」


「まっ、冗談が過ぎますよ。そうね~、耳が出てきたら、モフモフをしてあげます。しっぽが出てきたら、毛づくろいと一緒に切ってあげますね」

「おいおい、霧の方が、冗談が過ぎるぜ!」

「あら? 私はいつしっぽを切ると言いました?」

「顔で言っているよ。違うかい?」

「いいえ、違いませんわ。切っても直ぐに生えてくるんでしょう? あなたのしっぽでマフラーを作りたいですわ!}


「悪魔め!」 

「うふふふ!」 

「サタンめ!」 

「サンタさん!」



 とりとめのない二人の世界に入れないミーシャ。ミーシャは昨日から二人に謝りたと思っているのだが、なかなか言い出せないでいる。


「私はお二人に謝らなければなりません」


 ミーシャが努めて平静に話し出す。二人は力をいれ構えだす。肩に腕に足に。顔は? こわばっている。


「霧さん、智治さん。勝手な事をしてしまい、すみませんでした。霧さんは旦那さんの事をたくさん愛して下さい。智治さんも奥さんの事をいっぱい愛してください。どうか、お願いします」


 夫婦には少し意味不明だろうか。どういう返事を返したらいいかが解らないから、「はい、分かりました」と、言った。


「分かってくれて、ありがとう」


 と、言うミーシャの言葉には、感情が込められていない。語句のトーンが落ちる言い方だった。ミーシャは、まだ話しておかなければならない重要な事があるのだが遠慮した。あと少し待つことにしよう、まだ30日くらいは大丈夫かな。


「智治~、この服を着てくれ」


 教授が帰って来た。服の用意ができたと、はしゃいでいる。


「ちょっと、お父さん、智治さんは呼び捨てですか~」

「いいだろう? 俺の息子だ」

「そりゃー!そうですが・・・・」

「お父さん、私は構いませんよ。嬉しいです」


 安部教授は、出かける前までは、智治くん!と言っていた。外出中に智治と呼び捨てにする練習をしてきのか?


「ホテルも予約したから、行こうか」


 そう言って父は荷物をまとめだした。買ってきた服を霧は智治に着せる。


 おっかない感じで、ホテルに移動する。ここは並行世界だから、見つかりはしないが、どうも落ち着かない。


「お父さん、街の様子はどうでした。慌ただしいとかは無かったでしょうか」

「多分、これが普通だろう。なあに、恐る事はないさ」


 四人はホテルに着いた。父は先に予約を入れていた。部屋は2つだがミーシャさんが部屋割りを意見した。


「教授、お願いがあります。霧さんと智治さんを同室・同一ベッドにしてください。私は、ソファででも寝ますから大丈夫です」


教授は理由を尋ねた。


「はい、人狼の体を維持するのには、妻の沢山の愛情が必要なんです。一年位でいいのですが、一年間は離れて暮らすような事は出来ません」

「もし離れる事がありましたら、人狼としての力が不安定になり、感情の制御が出来なくなります。何かで怒ったりしましたら、人狼に変身してしまいます」


 二人は無言で聞いていた。霧は言った。


「はい、大丈夫ですよ、私、先輩の事好きですから」

「良かった」


 本当は、結婚前に傷を癒したから、完全には治癒出来ていない。結婚して子供を産まなければ、智治さんは傷が元で死んでしまう。本当に治癒させるには、妊娠をして再度妻の血液を、輸血か体内に直接注ぎ込む事が必要だと。 


 今は言えないか。二人が愛し合い落ち着くまで待つ事に決めた。


 四人は、食事とバスタイムを済ませて休んだ。霧と先輩は・・・・。


 翌日もホテルで休む事にした。並行世界だからロシア兵の心配は要らない。だが、ロシア軍の人狼研究は、すでに始まっていた事はまだ知らない。


 人相は知られていないので、そのままシベリア鉄道でモスクワに行く。




 1915年(大正4年)11月 並行世界 モスクワ


*)ルミャンツェフ図書館


 モスクワの市内には、モスクワ市電が走っている。モスクワ川は運河として利用されていて、道の駅ならぬ川の駅がある。冬の川は完全に凍結するから、川の駅も凍結される。きれいな街並みが続く。


 あれから1か月後に霧は妊娠していた。


「霧、先輩の傷だけどね、まだ完治してないの。このままでは完治する事は無いから、再度、霧の血液を先輩に与えてる必要があるの」


「分ったわ、ミーシャさんどうしたらいいの?」

「今度は口移しで構わないからね」


 霧はドキッとした表情になるのを見たミーシャは、クスリと笑った。


「口と口でお願いしますね?」


 と、まじめな顔をしていうミーシャだ。


 しかし、智治はうそだと思っている。


「霧、左手の指を噛んだらいいだろう。それで、俺は霧の血を飲むから」

「智治が噛んでくれる?」


 智治はミーシャを見て、


「ミーシャさん、霧をからかわないでください」

「はい、はい。ごめんなさい。あまりにもお二人の仲が良いので、つい!」


「でも、智治さん。ごめんなさい!」


 同時にミーシャは、ナイフで智治の左腕を刺していた。


「わ! 何をする」


 二人はミーシャの行いに驚いた。霧は、・・・・、


「あ!そうでしたね。口ではなく体内に直接入れるのですよね?」

「はい、そうです。いきなり切りかかって驚かせました。お二人には腕を刺すとかは出来ませんもの。私が悪者になるしかありません」

「では! あの人では?」

「当然、無理です。また倒れてしまいましたわ」

 

 無事に儀式は終わった。



 モスクワ国立図書館(ルミャンツェフ図書館)で人狼の文献漁りをしていたら、ロシア軍の人狼研究所に知られてしまう。毎日、図書館に通い続けていたから検問に合う。そして、とうとう図書館を出た所で逮捕されそうになり逃げるも、銃撃されて今度は霧が負傷した。霧は重症だった。


「智治さん、霧さんを抱いて逃げるのは不可能です。とても速く走れますので、半分だけ人狼に変身して下さい。」

「分かった、やってみる」


 智治は初めての変身だ。出来なくて全身を人狼にしてしまった。最悪の展開になった。


「霧! 大丈夫か」

「うん、智治、重くてごめんね?」

「いや、軽いよ。すぐに手当てをするよ」

「智治、ホテルで落ち合おう。俺は消毒薬を買いに行ってくる」

「はい、分かりました。お父さんも気をつけて」


 ミーシャは一人で囮になってくれた。無事に逃げおおせたが、ホテルに着くのには時間がかかってしまう。教授はさらに遅れて到着した。服装が変? になっていた。


「霧、大丈夫だからね、心配しないで。直ぐに私の血液を霧にあげるから」

「智治さんは霧の傷の洗浄と消毒の用意をしていてください。間もなく教授が消毒液を買われて帰ります」


 教授が治療薬と包帯を買ってきた。治療が始まる。ミーシャは右手に嚙みつき、


血を流したその手で霧を突き刺して、弾を取り出した。麻酔も無く、素手で弾を取り出すのは、正気の沙汰では無い。


 霧以上に先輩が見ていて痛がる。無事に終わったが下腹部近くだからとても心配だ。お父さんは卒倒していた。


 霧は脂汗を流しながら、必死で耐えている。人狼の巫女だが、普通の女と同じだ。痛いのも痒いのも同じだ。本当に卒倒していたら、痛い思いはしなくて良かったかもしれない。見ている智治も汗が酷かった。


 ミーシャは、霧を助けたいからミーシャも必死だ。この手荒な治療とも言えない治療を行うのだ、まともな感情では出来ない。鬼になるしかない。


 霧はお腹で息が出来ないから、胸で息をしている。呼吸のたびに肩が大きく動く。口呼吸で、はーはー言っている。智治には優しい笑顔を向ける。


 霧はとても強かった。


「あら、いやだ。お父さんは痛くないのにね。智治さん父を、そうっと していて下さいね」

「霧! ダジャレも言えるから、安心したよ。俺が人狼でなければ、俺も倒れていただろうよ」

「その方が良かったかしら?」

「そうだね。でも、倒れている間にしっぽが無くなっては敵わないよ」

「うふふふ! きっとそうだわね」


 手当を終えて緊張が切れたミーシャは、二人の会話を聞きながらへたっていた。


「ミーシャさんには、二度も助けて頂いたわ。ありがとうございます」

「ううん、いいのよ、気にしないで。私たち母娘おやこも助けて頂きましたもの、お相子あいこですわ。次私が負傷しましたら、手当をお願いします」


 霧は妊娠中だから安静にして街中に隠れる。傷は深く治るのには、一か月が掛かった。お腹の赤ん坊に影響は無いが、腹部損傷が悪い。手当が悪いからか完治しなかった。


 霧が動けるようになり、モスクワからエストニアに向かう。


 モスクワからサンクトペテルブルグまで来た時、ロシア軍の人狼部隊と交戦を始め、ここサンクトペテルブルグにロシア軍の人狼研究所が在る事を知る。ここも安全ではないので、エストニアの東のナルバまで逃げて隠れた。


 キリたちは、エストニアに行く途中で、並行世界から弾かれて、現世に戻った。次からは、いよいよエストニアでの戦いにはいる。

 


1915年1月19日 第一次世界大戦が始まった。

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