第21部 シベリア紀行 逃避行 その2
1937年(昭和12年)8月10日 シベリア
桜子、霧、先輩、阿部教授、ミーシャ、スミヤ の6人
*)人狼に会う?
ロシア軍は、朝一に警察署に無銭飲食の女を連行しに行った。
「軍の大尉だ、ここに無銭飲食の女を捕えているだろう、出せ!」
「あの人はもう居ません。昨日に身受け人が見えて、2ルーブルで保釈済みです」
「おうおう、調べはついているんだぜ。10ルーブル貰ったろう。収賄罪で逮捕だ。一緒に来てもらおう。序でに半分寄越せ!」
「ひぇ~軍人さま、不当逮捕です。軍に逮捕権がありませぇ~ん」
「顔が判る暇な者はお前だけだから、一緒に来てもらおう」
「署長には了解済みだ、足掻くな」
受付嬢も追跡に加わった。受付嬢に用があったのだ。ロシア軍は2台の車で追跡を始めた。受付嬢は後に5ルーブル払って解放された。
まだミーシャの存在には気づいていない。現在地は、イルクーツクより西へ400kあまり離れている。私たちは捕まらない。ロシア軍の目を欺く為に、東のトゥルン、まで戻る。ロシア軍から用意して頂いたトラックは、オンボロの乗用車に変身した。皆仲良くなった。トゥルンからシベリア鉄道に乗る。
「オンボロのトラックでしたが、高く売れましたね、教授」
「杉田くん、それはそうだろう。この広い大地で農業を営むなら、トラックが必要だべさ」
「はは、ごもっともです」
さすがに大陸だ。車での移動は困難だから、シベリア鉄道に乗る。エカテリンブルクまで進んだ。
シベリア鉄道では、当然兵の監視が各駅で行われた。一車両ごとに見て廻る。生きた心地がしない。もう逃げ場は無いから並行世界へと飛ぶ。次の駅で降りる。
「クロ!出て来ておくれ。クロ、お願い!」
クロが姿を現す。
「クロ!私たちを、お前の世界に飛ばしておくれ」
1917年8月に飛んだ。安心は出来ないが、シベリア鉄道でケメロボまで進む。ここで下車して元の世界に戻った。ここまで、タイムワープしたからロシア軍には見つからない。筈である。私たちはひたすら、西へ向かう。
翌日に、シベリア鉄道の道中のオムスクで50歳位の人に会った。
「あんたら、どさ行かれるべ?」
どさ、と聞かれたら、返事は、ゆさ、である。これからモスクワを経由してサンクトペテルブルグに行き、最終はエストニアと答えた。詳しく話す事は禁止だが、雑談で日本人とロシア人の組み合わせが解らない、変だと思われてしまう。教授は民俗学の研究です、と答えて女性は道先案内人とうそぶいた。間違いではない。
男性は、霧のロザリオと、ミーシャのブローチを見ている。
「あんたら、人狼の巫女かへ。んだら、ワシの知ってる事教えるべ」
「どうして人狼と言われるんですか?」
「お嬢さんのブローチは自分が見つけて、途中で知り合った女性に託した。そして、何となくお嬢さん2人が人狼の気配がしてくる」
「そうすると、貴方は、スミヤ?さんでしょうか」
スミヤさんは驚いて、そうですと答えた。宿ロクさんは、今のロシア事情を話してくれた。宿ロクさんは、
「巫女さんは、2人だが、3個の宝石を感じるんだが3個をお持ちですか?」
「いいえ、2個ですが。なんでしょうね」
「いえ、そんならば、黒の宝石の持ち主の巫女の居場所を教えますから、会いに行ってください」
エカテリンブルクの北方約30Kのウラル山脈に黒の宝石を持つ女性が居る。名はニキータ。25歳だという。
「名は、ニキータ。私の娘です。並行世界に居ますので、どうしても会う事が出来なくています」
「教授、行きましょう。ニキータさんを見つけましょうよ」
霧は喜んでいる。




