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人狼と少女  作者: 冬忍 金銀花
第2章 シベリア紀行

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19/41

第19部 シベリア紀行 ミーシャ


 1937年(昭和12年)8月9日 シベリア


*)ミーシャ


 こうして霧からの逆襲を受けながらも私たちは出発した。


 無事にミーシャは見つかるだろうか。ブローチが導くというが、ビームが出て行く方向を示したらいいけど。私と教授は毛布に包まる。ロシアに出て来た初日と同じだ。霧!先輩を口説くなよ。


 一時間後に桜島が噴火したのだった。


「ボコ~ン!」


 やはり席は譲れない、霧を引き摺り下ろしたのは当然である。


 疲れた、かれこれ小一時間は走っただろうか。霧が幌から首を出したら一台の黒い車が見えた。


「ねぇ、お父さん。ここは広いロシアだよね、出発した時は後続の車は無かったと思うけれども。ヴァシーリーさんと同じ車がついて来るよ」


 教授は幌からは首を出さないで隙間から覗いた。家政婦さんの特許だ。


「ん~そうだな、ホテルを出て2時間か、休憩しようか。杉田くんに合図を頼む」


「ボコ~ン」


 運転席の後ろから大きな音がした。止まれの合図だ。杉田先輩に、


「ヴァシーリーさんは、気がづけば止まるから、ヴァシーリーさんが止まったら後ろまで進んでくれ。私が行って休憩したいと言ってくる」


 車が止まる。安部教授はヴァシーリーさんに駆け寄り話しかけた。


「すみません、娘二人が休憩して欲しいと言いますので、少し先に町が在りますから休憩をお願いします」

「気がつきませんで申し訳ありません。ではそうしましょう」


 ヴァシーリーさんはすぐに了解し、安部教授はお礼を言う。


「霧、どうだい先ほどの車は、どうした」

「後ろで一度止まった。今は見えないけど、ついて来ているよ」

「そうか、分かった」

「さくらちゃん、杉田くんに話がある。私と交代してくれ」

「嫌ですわ、教授。霧が怒ってるから怖いんです」

「大丈夫、フグになってるだけだから針で突けば萎むよ。これ針ね!」


 私は、?? ペコリマークのあめ玉だった。棒が付いているキャンディだ。


「これで突けば、しぼむの?」


「杉田くん、思い過ごしではないようだ。私たちは尾行されてる。どうかして回避しないといけない。霧が気づいてくれたから本当だろう」


「そうですか、黒い車が離れて走ってましたね。尾行ですか」

「こう考えると、ヴァシーリーさんも怪しい。あの人も避けようか」

「そうですね、そう考えたがいいかもしれません」

「この先で休憩するから、その隙にこのトラックを故障させてくれ。故障だとヴァシーリーさんもさすがに残る訳にもいかんだろう」


 先輩は、ボンネットを上げて何か作業を始めた。主にトラクターだがメカには強い。構造は似てるのだろう、動けなくしてしまった。


「さて、私の出番だ。さくらちゃん、一緒に来てくれないか」


 私を連れて行ってどうすのだろう。まさか、ヴァシーリーさんの車に乗れ?とは言わないよね。


「ヴァシーリーさん、この先に店が在りますからそこまで乗せて頂けませんか? トラックは直ぐには修理出来ないそうですから」


「ええ、分りました。慣れない車でしょうから、何かミスされたんでしょう」

「彼は農機具の修理まで出来るから、重宝しております」

「ヴァシーリーさん、お願いします。修理より先に気晴らしのお買い物したいので助かります」


 私も役者やな。アドリブが出来ました。んなバカな!!


 安部教授はヴァシーリーさんに、お待たせするのも悪いから、お別れしましょうと言い出した。


「この先、15k先位に三叉路があります。道路標識がありますので、右折しましたら一本道です。分かりますので私は先に帰ります。では道中お気を付けて」

「今日はありがとうございました」


 安部教授は私にお礼の挨拶をさせた。もちろん日本語である。女の方が口当りがいいからか。「どういたしませて!」少し発音が違うが、日本語で返事がきた。


 無事にヴァシーリーさんを先にやり過ごせた。後続の車は来ない。10分位でトラックは来た。


「杉田くん、奥さんをありがとう。無事にヴァシーリーさんを先にやり過ごせた」


 私は、杉田桜子、たまにだが「奥さん」と呼ばれることがある。だがそれは三浦教授だったはず。恋の予感が現実に!?


「上手く行って良かったですね。でも後続の車が追い越していませんよ。ヴァシーリーさんは簡単に先へ行きましたね。尾行に自信があるのでしょうか」

「だろうね。一本道だ、前後でへばりつけば見失うことは無いんだろう?」


 もう暫く休んで出発した。


「お父さん地図見せて。この先にバヤンダイ、という街が在るから泊らない?」

「ん~そうだな。急いでいると思われるのも、何か問題視されそうでいかんな」


「それに目的地はまだ遠いし、桜お姉さんには、まだお礼も済んでもないし!」

「霧、さくらちゃんをいじめないでおくれ。大事なお預かりの娘さんだしな」


 私は霧の笑顔に騙されない。霧の目は笑っていない。霧は怖いのだ。


 宿屋を探しあてた。直ぐに見つかったのだが、


「すみなせん、まだ時間が早いので、お部屋の準備が出来ておりません。暫くラウンジでお待ちください。ご用意できましたらご案内します」


 杉田先輩が


「ええ分りました。ではお待ちしております。この町に図書館はありますか?」

「教授、ここでの調査は中止にしましょう。尾行が事実ならもう見張られているでしょう。また、図書館は無いそうですよ」

「部屋割りは、奥さんがしてないだろうね?」

「そうですが、何かまずいですか? 男女別になっていますよ」

「さっきはつい口が滑ってさ、いらぬ事を言ったので、少し心配したからね」

「三浦教授と同じ事を言われたんですね?」

「すまぬ!」


「先輩!この宿屋のラウンジはとてつもなく広いのですね。どうしてですか?」


 杉田は、桜子にとって先ほどの教授の言葉が、嬉しかったようで燥いでいると思い、無愛想な返事をした。第一に屋外のテラスをラウンジと言った。


「俺に訊くな。仕切りが不足しているだけだろう?」

「そうですか、どうりで寒いと思いましたわ」

「桜お姉さん、運動不足解消に駆けっこしましょう」

「おう、ここの庭は広いからいいだろう?」


 霧が小さなテーブルに着いている女性を見つけた。


「お父さん、ちょっといい? あそこに座っている女の人が妙に桜姉さんを見ているのよ。私と桜姉さんで声かけていいかしら。大丈夫よ上手くやるから」

「そうなのか? 気になるなら行っておいで。」


「桜姉さん、手伝って!」


「あ、霧。青の十字架を見えるように、服の前に出してくれ。反応を見てみる」


 阿部教授がひとこと言った。霧は、ペンダントを見えるように服から出す。


 霧が先に声を掛ける。


「すみません、少しこの街についてお尋ねしたいんですが、」


「よろしいですか?」


「ああ、ぼーっとしておりました。はい、何でしょうか」

「ほら姉さん、アクセサリーが欲しいんでしょう? 早くお店が無いか尋ねてよ」

「?・・・・?」

「もういいわ、私が尋ねるから。私が掛けているロザリオとか、姉のブローチみたいなアクセサリーが欲しいんです。お店をご存じありませんか?」


 霧はペンダントを胸の前で、手で持ってピラピラさせている。まるで、ルアーのようだ。


 女の人は、少し考え込んで答えた。


 桜姉さんのブローチを見つめている。桜姉さんは女の人の正面に。私は女の人の右横に座っている。故意にブローチが見えるようにだ。もう策士だな。


「そうですね、やはり存じあげません」

「このアクセサリーが綺麗だから、友人にお土産にいいかな? と思って探しているんです」

「中々綺麗でしょう?」

「はい、綺麗ですね。母が持っていたような気がするんですが。母なら知っているかもしれません」


「でしたら、お母様に尋ねて頂けませんでしょうか」

「そういえば、母とは随分と会っていません。どこで別れたのか思い出せないんです。どうしてだろう、ここでこうして待っていれば、会える気がするんです。だからいつもぼーっとして待っております」


 2人は驚いた。もしかしたら、尋ね人かもしれない。霧は教授を呼んだ。


「お父さん、ちょっと来て~。お話があるの」

「この女の人は、もしかしたら、ミーシャさんかもしれない」


 教授は、名前を尋ねた。


「お嬢さん、私たちは日本から旅行でロシアまで来ました。阿部と申しますお差し支え無ければ、お名前をお伺いしても?」

「?・・・名前ですね、・・・あれぇ? 思い出せません、どうしたのだろう」


「杉田くん、フロントに行って部屋の準備が出来たか、尋ねてくれ」

「はい尋ねて来ます。序でにコーヒーとソフトドリンクの注文も頼んで来ます」


私たちは話し込んでいて、オーダーを失念していた。フロントマンがチラチラと見ていたのは、オーダー待ちを気にしていたのかと思った。部屋ではなかった。


「教授、もう少しかかります。コーヒーを飲み終えた頃には用意出来ていますよ」

「さくらちゃん、部屋の用意が出来たら、部屋でブローチを渡してみたいんだがいいかね。確かめてみるから」


 部屋の用意が出来て、一室に集まる。女の人も快くついて来てくれたが、結果は何も起こらなかった。別人だろうか。


「桜さん、結果は何も起こらないですよ、そうでしょう? 怒るのは、桜!」


 先輩のイジワル!  先輩のイジワル!  先輩のイジワル! 


 教授は、桜子頼みの状態になってしまう。


「さくらちゃん、どうかな。記憶が無いようだがありえない話でもないが」


ユキとキリの事からして判らなくもない。が、確信も無い。桜子も解らない。え~い、ままよ、もう明日にしてしまえ。



 皆、寝てしまう。何も起こらなかった。そして朝である。


 夏というのに、寒い。ドサンコでも寒い。ドコサン?昼は気持ちいいが、夜は10度位に冷える。


 名無しのお嬢さんだが、食事も碌に摂らないで待っているから、食事OKよ?という事で、強引に連れて行く事にした。早くも食事OK、済んでいる。


「すまんが、杉田くん。それと霧とさくらちゃん、二組に分かれて散歩して来てくれないか。昨日の車が在るかもしれないし。頼むよ」


 暫くして、杉田くんが帰ってきた。やや遅れて二人も帰って来た。


「教授、ありました。ナンバーを控えて来てますので、覚えて下さい」

「霧たちはどうでした?」

「在っても古い、中古車ね、無かった」


 霧は、桜姉さんがとても方向音痴で困ったと愚痴を言う。 


 教授はまだ用心しているようだ。


「あの赤い屋根の家の先で、お嬢さんと待っている。そこまで車を廻してくれ」

「霧たちは、普通にして乗ってくれ。私は、トラックについてくる車が無いか

見ておくから。頼んだよ」


 教授の予想通りに昨日の黒い車が離れてついて来る。


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