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人狼と少女  作者: 冬忍 金銀花
第2章 シベリア紀行

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第11部 並行世界 ユキとクロ



 1937年(昭和12年)8月4日 シベリア


*)調査開始


 黒い馬は麻美の家族だから一応目的は果たせた。麻美も当然の如く日本へ連れて帰る気満々だ。それにもまして、キリが乗馬出来るので麻美以上に離れないでいる。このクロには不思議な能力があり、自分で並行世界を自由に行き来が出来る。


 私たちが遠くまで移動しても並行世界を利用して移動して付いて来る。しかも時間差はあまり無いのだから驚きである。麻美とキリが呼べば何処からともなく現れる。


 全員が揃った事で山間の調査に出かける事に決まった。麻美の提案で防寒着を全員分が用意された。この地では二回も三回も冬の並行世界に繋がった。


 今回もそうだろうか。


「三浦くん……今日の調査だが」

「ええ、そうですね。とにかく人狼の伝承が残ってないか探してみたいんです」

「しかし、あの二人は動きそうも無いんだがどうしようか」

「私たちだけで進めましょうか、その方が早いかもしれません」


 杉田先輩が教授二人の話に割って入っていく。私は勿論ついて行く事にする。


 麻美とキリはもう私を全く相手にしてくれないので淋しい限りだ。


「麻美さんのお父さんも居る事だし置いていこう、なに二人は大丈夫だ」


 阿部教授は杉田先輩の意見を支持した。この先の村には六人で行く事に決まった。石川くんは影が薄いので読者の方は、忘れないでほしい。ガイドくんも居るよ。



 もう麻美とキリはべったりである。麻美とキリは人狼に覚醒したその後の状況の変化の出来事を確認しながら話し合っている。面白い能力が確認できたとか。



 阿部教授がガイドくんに麻美を呼んできてくれ、と頼んだら霧がやって来た。あまりにも麻美と霧は似ているからか、ガイドには見分けがつかないのだろうが、ま、霧でいい。ガイドくんには紹介していないから当然か。


「キリどうかな、お姉さまの有難さは」

「うん、お父さん。とても不思議な感じですてき! なんか桜姉さんとは違ってユキ姉さんの考えている事が判るような、そんなの」

「そうか。良かったな」


 キリはうん、と小さく頷く。


「キリ、父さんたちは五人でこの先の村を調べに行くがついて来るか?」


「お父さん、ありがとう」


 父の阿部教授は??? 一応確認だけはと思い尋ねたが、答えはノーだった。


「姉さんともっと話していたいし、それにクロとも一緒に居たい」


 調査隊の人員は、安部・三浦教授、杉田先輩、桜子。と、ガイドの五人。予定人員の石川くんは酔い潰れてしまって動けないでいた。多分だが行きたくなくてウオッカを飲んだのだろうか。瀬戸の親父さんは第一がクロの研究だから無理ね。


 ユキとキリはこれからクロに二人乗りして乗馬を楽しむのだとか。


「分かった、じゃ荷物の番を頼むな」

「気を付けてね、お父さん行ってらっしゃい」

「それと、ユキ姉さんには何の用件があったの?」

「いやなんでもない、同じ質問さ」

「そう、でも本当はキリをお願いする、とかなんとか、言いたかった訳なんだ!」


「キリ、お前なんか感覚が鋭くなってないか?」

「鋭くじゃないわ、する+毒の間違いね」


 キリは冗談も言える位に元気になっている。


 教授らの一行が出発する。昨日合流した者が疲れているからと、少し遅めの出発となった。私たちが疲れているのは、ま~ま違いではないのだがね。


 私は先輩の腕にぶら下がる。そう私はダッコちゃんに変身したのだ。ダッコちゃんはこの私が考案した人形よ、分からない人が多いでしょうね? ダッコちゃんを知っている人は第一にこれを読まないだろう、嘘だとバレているからね。



「おい桜、暑いから離れろよ。」

「嫌よ、帰ったら霧に場所譲るからそれまで一緒ね」

「キリちゃんには、この大きい左腕があるよ。気にしないでくれ」


 私たち二人を見て早くも周りの人間は足取りが重くなった様子。


 麻美が倒れた処に着いたがなにも変化はない、平行世界は何処かしらね。


「三浦くん、今日は何も起こらないかな」

「残念ですがそのようですね、少し休んでみましょうか」


 先輩は元気だ、休憩も取らずに方々を歩いている。


「ここで麻美さんが見つかって、それと倒れた所ですね。別段変わったようには見えませんね。阿部教授は何か感じるところは無いんですか」

「そうなんだけれども、第六感は働かないな」


「先輩! その先にある大きな岩に登ってみてください」 

「登ったが、なんだい桜!」


 ん~いい男よ!?


「何かしらの、俯瞰ふかん的な感じはありませんか。小径があるとか」

「桜!……そこに祠があるから見てくれるか。もう少し左の、そうその先だ」


 私は小さな祠を見つけて覗いてみる。


「先輩~……教授! 来てください。何か有ります」

「阿部くん、これはもすかすると麻美さんを見つけた時の、お祖母さんの手荷物かもしれないね」

「奥に入れてあるから、あの後誰かが入れたんだろ」

「開いてみようか」


 小さな人形と紙切れがあり他は服のようだ。紙切れには、土、その下には二つの点々? かな。その下は十字のように見える。それは麻美の名前の漢字の幸の字だがとても残念なことに、判読が出来なくて分らなかったのだ。


「人形は麻美のかな? ベースに帰ったら見せてみよう」




*)人狼の巫女と新しい宝石が二つ


 休憩が済んで歩きだしてから一時間くらいで村には到着した。三浦教授が歩いていた女性に声をかけている。黒い馬のこと? 人狼の伝承とか聞いていそうだね。


「すみません、この村の長老さんを訪ねたいのですが、お教え下さい」

「ええ、そうですね、分かり難いから案内いたします」

「この村には何の用件で見えられたのですか?」

「黒い馬の事とか、人狼の伝承が残って無いかと思い訪問しました」

「そうですか、でも何も無いと思いますよ」


 女の人は教授から離れて私に近寄ってきて話しかけてきた。


「娘さん。この山道は大変でしたでしょう、ちょろっと行けば長老の家ですよ。それで、黒い馬は見つかったのかしら?」


 ちょろっと行けば? 何処の方言かしら? なんか日本の南の方かな。


「昨日見つかりました。幼馴染が見つけたんですよ」

「そうですか、見つかりましたか。今も一緒に居るんでしょう?」

「ええ、もう姉妹揃ってべったりとしてます」


「姉妹で? あなたは?」


 女性の表情が変わったのが私には分らなかった。


 女の人は考えた。クロと一緒という事はあの人の娘たちだわ。そうか、姉妹か。安心したように一呼吸した感じで空を見上げて顔に手を当てた。私に判らないように涙を拭いたのだった。


「その姉妹とあなたは長いお付き合いなのでしょうか?」

「そうですね、姉とは幼馴染で妹は教授宅で一年ほど一緒に暮らしてます」


 女の人は笑顔になり「そうですか」と言ってブローチを私の胸に着けてくれた。


「これはこの村を訪問して頂いたお礼です、私からの贈り物ですわ。貰って下さい」

「すてきなブローチですね。この宝石は何でしょうか」


 一言二言話してくれて、そして最後にこう言って去って行った。どういう意味だろうか。


「長い事待っていた甲斐がありました、良かったわ!」


 その後、長老に会って話しを聞いても情報は何も得られ無かった。



 昼過ぎの十五時位に私たちは帰ってきて、キリは私に駆け寄り結果を求めた。


「なにも無かったわ、この白い水晶かな? ブローチを頂いたくらい」

「桜姉さん、このブローチは逆さまよ……直してあげる」


 霧はそう言いながら私が付けているブローチに手を触れた瞬間に手を引いた。


「キリ、どうしたの?」

「ううん何でもない、少しビリッとしただけだから」


 キリは自分でも驚いた様子だった。再度手に取り太陽に翳して見上げている。


「綺麗なブローチ、でも宝石は光ってないな。桜お姉さまはいいな? カチューシャと対で。これは何だか銀で作られているみたいでロザリオと同じかな」


「はい出来た。どうして逆さまに付けちゃったのかな、柄が判らなかった?」


 判らなかったのでは無い、あの女性は故意に逆さまに着けたのだ。だが、あの女性が望んだ結果にはならなかった。


「これね、女の人に道を尋ねた時に頂いたの」


 この白い宝石はあなたのお守りになるからと、言われて胸につけて貰ったと霧に話した。麻美は怪訝そうな顔つきで白い宝石を見つめている。


「麻美にも有るわよ。この人形なんだけれど麻美のかな?」


 麻美はそのような人形は知らないと言った。でも私は人形を大事にバッグに仕舞う。私は二つの宝石を持った為に少しずつ巫女の力が芽生え始めてゆくのだ。


 行きは五人帰りは四人で一人少ない。ガイドを途中の川に落としたようだ。


「クロ、拾って来てくれないか。」

「ブヒヒ~ン!」


 二人の教授は簡単に説明をして、少し休憩してベースの村へと下山した。クロも一緒なのだが私の後を付いて来るのよ。麻美が呼んでもクロはどうしも私の傍からは離れなかった。


「クロ! 私を好きになってくれたの?」

「ブルルル!」

「そうね、鼻で答えてくれても私には理解できないね」


「ブヒヒ~ン、ブヒヒ~ン」


 突然に私とクロが並行世界に飛ばされた。三浦教授が話していたあの雪の世界だ。


「クロ、私たちどうしたんだろう」


 クロには話が通じないがクロは落ち着いているのが私には理解出来た。


 雪が降っていて自分の体がそらに浮いていた。降る雪を避けるように昇る。どれくら揚がったのだろうかと身体を捩じり地上を見た。


 一面の銀世界で遠くで女の人が歩いているのが見えた。女の人は私を見上げて叫ぶ。自分の左胸を叩きながら叫んでいるから、私は何気なしにブローチに手を当てた。


 すると女性の声が聞こえてきた。


「私はミーシャ、早く私を見つけて! 湖の東の村に居るから、ね、早く!」

「その白いブローチが導くから見つけられるわ」


 と言ったようだ。私はクロの所に降りて行き直ぐに並行世界から弾かれた。元の

世界に戻ったのだ。


「キリ~麻美~!!」


 防寒着を着ていなかったので凍えた私は、キリと麻美の名前を呼んで助けを求めたら、直ぐにユキとキリが駆け寄って来て雪を払ってから、しっかりと抱きしめてくれた。温かかったな、人の温もりとは嬉しいものだ。


 三浦、阿部両教授は驚いて私たち三人を見ていた。クロが行かせたのだろうか、クロはもう私はから離れていた。


 阿部教授は思った。


「クロ、お前が行かせたんだね」



 私は直ぐみんなに起きた事を話した。並行世界と思われる冬の世界に行ったこと。雪の降る湖? そうだ湖が見えていた。できるだけ情景を思い出すように話した。


 女の人が歩いていたのは湖の直ぐ横の道だったと。


 三浦教授はここでの調査は終了して次の目的地へ行こうと言った。なので急ぎ村へ戻る。村に到着して荷解きを済ませ、明日の予定を打ち合わせを始めた。


 計画はこうだ、おおむね予定通りだった。


 キリと教授、私と先輩がイルクーツクの大学を訪問し文献の調査をして、三浦教授と麻美と麻美のお父さん、そして石川くんの4人がモンゴルのウランバートルの大図書館の調査。そこで見つかるだろう情報の確認。

(ガイドさんは川に落ちたので解任です。)


 またシベリア鉄道に乗って出発する。麻美のお父さんは麻美が心配だからと、もう少し同伴すると言って付いてきた。


 シベリア鉄道は壮観だ。汽車はとてつも長く、何も先を遮るものが無ければ天国へ通じてるのかとも感じる。白と黒の銀世界だったらどのような感じがするかな。夏は緑がとてもきれいだから、そうきれいだ。



 私は眠る、人形の中の宝石が夢を見させているだ。黒の宝石を持った女の人が立っているのが見えた。


「この女性は誰だろう」


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