[E竜]終わらせる存在 2
何をしようとしていたか・・・そう・・・思い出しました。
「そう、朝御飯の前に、試し撃ちをしておかないといけないのでした」
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リヴィアは、屋上に悠然と立つ。
周囲には、部下が控えている。
主の偉業を見る為だ。
皆、その目を深紅に光らせ、リヴィアに魅入っている。
最初の目標は決めていた。
此処から遠く離れた地、ラヴァラ帝国。
竜騎士部隊が有名な国で、竜特効の戦闘も得意とする。
特にそこの将軍・・・キャラル将軍は、何度も戦いを交え、決着が着いていない。
言わばライバルとでも言うべき存在。
だから、最初の目標として設定した。
外交ルートを通じ、攻撃の旨は伝えた。
残念ながら距離が遠い為、伝達が届くのが何時になるかは分からないのだが。
今頃、自分を狙う勇者が立ち上がっているのだろうか。
今頃、あの馬鹿な教会共は何か叫んでいるのだろうか。
今頃、あの男はどうしているのか・・・自分だけ逃げるのか、民を逃がすのか。
そろそろ良いでしょうか。
「目標はラヴァラ帝国の首都。これが、魔王リヴィアの輝かしい第一声、です」
力が・・・集う・・・
空間が、軋む。
時空が、歪む。
ヒシ・・・
周囲の城壁が・・・マナを奪われ、その存在を保てず、粉となり散る。
兵士達が結界を強化、そして距離を取る。
「試射・終末の灯火」
光が・・・伸びる。
それは、破壊の概念。
正確にラヴァラ帝国の首都を射貫き・・・・
光が、闇を溶かすように広がる。
音はない。
音すら消えてしまう。
やがて・・・そこには、何も無くなった。
伝達が届き騒いでいた外周部も。
伝達が届いていない中央も。
その周辺の国家も。
それが乗っていた大陸も。
その周囲の海も。
そこには、何もなかった。
海の水がそこに流れ込み・・・消える。
虚無にも処理限界がある。
その為、すぐに海の水がなくなる訳ではないが・・・時間の問題であろう。
恍惚とした表情で、息を吸うリヴィア。
だが・・・
「足りませんね、この世界を滅ぼすには」
今のは最大の火力で撃った筈だ。
だが、まだ足りない。
「朝食を食べたら、この世に終わりを告げる準備をします。朝食の準備をしなさい」
リヴィアは、ふと、慈悲の心が芽生えた。
「それと、全世界に通達せよ。もうすぐこの世界は終わる、残りの人生、最大の享楽に励め、と」
リヴィアは慈しむ様な顔で、兵士達に向けて続けた。
「勿論、貴方達もですよ」
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深夜。
リヴィアは玉座の間にて、夜明けを待っていた。
力の蓄積は少し前に終わっている。
まだ世界を消していない理由は・・・夜明けと共にこの世を消す、その告知を守る為だ。
訪れる者が居ないはずの間。
そこに、訪問者が来る。
フードを目深に被っているが・・・自分と近しい存在を感じる・・・
「誰ぞ」
問いかけるが、答えは分かっている。
ミスリール。
リヴィアの妹。
「部屋での待機を命じましたが、彷徨い出てくるとは。この世の終わりを見たいのなら少し待ちなさい。夜明けの約束です」
リヴィアが重ねて話しかける。
しかし、それは反応しない。