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魔王に憧れて  作者: ごるし
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新しい生活

 物語の舞台は「エルコンドル」。

 私たちの住む世界とは違ったお伽噺に出てくるような世界。

 文化も異なれば生息する生き物もまた違う。

 様々な魔獣が存在し、冒険心くすぐられるダンジョンも存在する。

 この世界には魔力が存在し、人々は魔力を中心に文化を築いていった。

 国同士の争いもここ数百年起こっておらず、とても平和な日々を過ごしていた。

 そんなエルコンドルでは今、空前絶後のブームを巻き起こしている競技があった。

 その名も「Devil GAME」。

 二つの陣営に別れて先に相手のリーダーを倒した方の勝ちというなんとも単純なゲームである。

 リーダーは魔王と呼ばれ最大七人の仲間を連れて戦うことができる。

 年に一回「Devil GAME」の大会が行われ優勝すると大魔王の称号と多額の賞金、名誉が与えられ歴史に名を刻むことになる。

 多くの人が大魔王に憧れていた。

 これは、主人公「リン」が大魔王を目指す物語である。

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「ここが今日から少しの間あなたがお世話になるお家よ」

 母に連れられてきたのは塀があり敷地内に道場と思われる建物が存在するとても大きな敷地を持った屋敷であった。

 俺は今日からここで生活することになる。だけど、両親に捨てられたとかそういうわけではない。

 俺には日常生活を送るうえでの重大な欠陥があり、それを改善するために親元を離れて生活することに決めた。

 この屋敷には、母の小さい頃の幼馴染みが住んでおりその人に魔力の扱い方を学ぶためにここまでやって来た。

 母曰く「泣き虫でドジでいつも笑っている人だった」とのことだ。

 そんな人から教わることがあるのかなとも思うが母が大丈夫といっているのだから大丈夫だろう。

 そんなことを思っていると目の前の門が開いた。

 中から一人の男性が出てくる。

 背丈は男性の平均を上回っていると思われ、胴着に身を包み所々見えている肉体は細身ながら引き締まっており、笑顔が似合いそうな男であった。

 母から聞いて想像していた人物像からは大きく離れており戸惑いを隠すことができなかった。

 そうしている間に二人の間では会話が済み男は僕の方を向く。

「はじめまして、僕はウィル。君のお母さんとは幼馴染みでね。その縁で君の病気……と言っていいのか分からないけど日常生活が問題なく送れるように手助けをすることになったんだ。よろしくね」

 そう言って男……ウィルさんは柔和な笑みを浮かべながら挨拶してきた。とても母と近い年齢だとは思えない。

 魔力の扱いに長けたものは若く見えるということがよくある。

 これは、ウィルさんが僕の病気……魔力のコントロールができず、感情の起伏次第では暴走させてしまうという欠陥を克服するのに最適な人物であるということを意味している。

 僕は警戒心を少し緩くした。

 お互いに挨拶を交わしたあとは母と別れて門をくぐる。

 両親と妹にはしばらく会えないけど仕方がない。

 僕が普通に暮らせるようにならなければ家族に迷惑がかかる。

 ここは一時の辛抱だ。

 そんなことを考えているとウィルさんが話しかけてきた。

「うちは三人家族なんだ、今日から四人になるけどね。娘達に紹介したいから先に道場に行こう。」

 そう言うとウィルさんは道場と思われる建物の方へ歩きだした。

 道場の中は当たり前というべきかキレイに掃除がいきとどいているように見えた。

 神聖で清謐な場所。

 この場にいるだけで軽い緊張感を抱いてしまう、そんな印象を受けた。

 そんな場所に一人の少女がいた。

 僕とそう変わらないような年齢と思われる。

 身長も僕と大きく違うということはなさそうだ。

 長い黒髪は後ろで結んでいる。

 意志の強そうなとても鋭い目をしていた。

 その少女はというと誰もいない道場で一人構えをとっていた。

 イメージトレーニングなのか少女の前には誰かいるように感じられた。

 すると少女が突然動いた。

 少女の蹴りは相手のこめかみを的確に撃ち抜き、相手に一歩も動くことを許さず戦闘不能にもっていったように見えた。

 僕の目から見ても分かる。

 今の蹴りは素人のものではない。

 多くの時間を鍛練に費やし、何千何万と繰り返して無駄をなくし身に付けたものであると。

 一連の動作は流れる水の如く、見ていて感動すら覚えるものであった。

 やがて、少女がこちらに気づいて近づいてくる。

 父のとなりにいる僕が気になったのか質問をする。

「父さん、その子がこの前言ってた今日からうちで預かる子?」

「そうだよ、リンくんだ。リンくん、この子はうちの姉妹の妹の方、イオって言うんだ」

 僕たちはお互いに挨拶する。

「僕はリン、今日からよろしく」

「私はイオ、こちらこそよろしく」

 そう言って僕たちは握手しようと手を伸ばす。

 手が触れた瞬間、イオは弾かれたように後退する。

 そして、まるで敵を見るかのように睨んできた。

 突然のことで僕が動揺を隠せないでいると

「イオ、それは君の悪い癖だ。まだ幼い君に精神を完璧にコントロールしろとは言わないが常に平常心を保つことは心掛けなさい。相手がつけこむ弱点となりえるからね」

「はい……ごめんなさい」

 そう言ってイオは頭を下げる。

 何が彼女をそうさせたのか僕は分からなかった。

「ごめんねリンくん、イオは魔力が大きい人に対してはああいう態度をとってしまうんだ。本人も治そうと思っているんだけど中々うまくいかないらしい。許してあげてくれないかい」

「もとより僕は気分を害していません。許すも何もありませんよ」

「そう言ってくれると助かるよ、これからは家族として一緒に暮らしていくんだから仲良くしないとね」

 それよりも気になることがあった。

 僕が魔力が大きいということだ。

 僕が魔力を暴走させてしまうのは僕が周りよりも魔力の扱いが未熟だからだと思っていた。

 しかし、今の話を聞くと僕が魔力を暴走させてしまう原因は魔力の大きさということだ。

 身近に他人の魔力を感じ取れるという人はいたが、魔力量までも測れる人はいなかった。

 やはりウィルさんは教えをこうには最適な人であると確信を深めた。

 それと同時に僕が周りと比べて劣っているという劣等感も少し緩和された。

 魔力が大きい方が扱いが難しいのは当然のことだ。

 僕の現状は全く変わってないが心は少し軽くなった気がする。

「イオ、レイはどこにいるか知ってるかい?」

「いいえ、またどこか歩き回ってると思うわ、ぶらりと気の向くままに」

 ウィルが尋ねるとイオはそう答えた。

 レイというのはイオの姉の名前であろう。

 今は留守のようだ。

「それじゃあイオ、リンくんに屋敷や周辺の案内をお願いしてもいいかい?」

「……わかったわ」

 イオは渋々とだが了承した。

 どうやら彼女に嫌われてしまったらしい。

 ウィルさんはどうやら用事があるらしく道場から出ていった。

 イオは、眉間に深い皺を刻み仏頂面でこちらを見てくる。

「じゃあ、早速案内するわ。着替えてくるから少し待ってなさい」

 そう乱暴に言い捨てるとこちらを振り向くことなく道場を出ていく。

 何も知らない場所で知り合いもおらず、住人の一人には早速嫌われてしまった。

 気が重いことこの上ないがそんなことは二の次だ。

 僕は自分の魔力をコントロールするためにここに来たのだ。

 もうあんなことを起こさないために。

 誰も傷つけることがないように。

 そのための環境は整っている。

 あとは自分次第であると自分に言い聞かせ、僕はイオを待つのであった。



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