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トンネルの先には  作者: 椎名れう
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俺の願いは叶った。

「なあ、こいつ俺のしんゆ…同級生なんだけど」

「知ってる。だから映し出したのさ。こいつはあんたの気分を害した元凶の一つだろ」

「…」

「あんたが何を願ってここに来たか、私は知っている。気晴らしが欲しいんだろ。させてやる」

「どうやって?」

まさか、中に入ってこいつと遊べってんじゃないんだろうな。

「その中にあんたは入れない。ちなみに、中の奴が外のあんたに気づくこともない」

…やっぱこいつ、俺の心を読みやがる。

「でも、外からこいつにちょっかいかけることはできる」

「またちょっかいか」

「岩を叩いてみな」

いざ叩こうとして俺はためらった。何だか、岩の中の舞鳥まで叩いてしまうような気がしたからだ。でも、逆らったら、また「ギラン」が始まるかもしれない。それにこれは気晴らしだって言うし…。

バーン! ちょっと叩いただけでむちゃくちゃ音が響いた。俺の手も結構痛い。だけど、そんなことはどうでもよかった。俺の目は舞鳥に釘付けになっていた。

なんと舞鳥はそのまま地べたに倒れ、ワーワー泣き出しやがったんだ! 膝からは出血が止まらない。それに合わせるかのように、舞鳥の泣き声もどんどん大きくなっていく。

「まじかよ。こいつこんなに泣き虫だったのか」

で、俺はこんな泣き虫に今まで背を向けられてたってわけか。何だか腹が立ってきた。それに、少しだけ…喜び?

「こいつは本物なのか?」

「ああ、今頃こいつは地べたに転んで泣き叫んでいるさ」

快感?

「罵声を浴びせたって構わないんだぞ。中の奴には聞こえないしな」

まじかよ。これ、すげえ気晴らしだ!

俺はすっと息を吸い、演説の準備をした。

「おい舞鳥、聞こえるか! てめえ、よくも俺をバカにしやがったな。こっちの事情考えずに金村たちとつるみやがって。よくも俺をバカにしやがったな! まじで覚えとけよ! こんな泣き虫のくせに! よくも俺をバカにしやがったな! バカはおまえなんだよ! 泣き虫野郎にでかいツラされる筋合いはねえんだよ!」

ここで一旦切って幼稚園児の方を見ると、ニヤニヤ笑っている。…見ていて不気味すぎる。俺は演説を続けた。

「まだ終わってねえぞ、舞鳥! おまえはバカなんだよ! 泣き虫なんだよ! わかれ! だから、俺の前で二度と偉そうなツラ見せんじゃねえぞ!」

…さっきから似たようなことばかり言ってる気がする。疲れたことだし、俺はここでストップすることにした。

「終わりか?」

「疲れたからな。あ、そうだ」

不意に俺は舞鳥の膝に目を向けた。さすがに出血は収まっていたが、傷が結構でかい。ちょっとやり過ぎたか。

「あんな膝で大丈夫かよ…」

とたんに、岩が消えて俺は背中に衝撃を受けた。地べたに叩きつけられたらしい。幼稚園児はというと、さっきとはうって変わって不機嫌そうに突っ立っている。

「危ないじゃんか!」

「今日のお遊びはここまでだ」

それだけ言ってクルリと身を翻し、トンネルの奥に歩いていく。しょうがない、帰るか。俺が立ち上がりかけた時、幼稚園児がこちらを振り向いた。目が光っていて、奴の背後にはトンネルの奥の闇が広がっている。

「あいつは君が傷ついているのに平然と他の奴らとつるんでいる。けしからんことだ」

「そりゃそうだ」

「そんな奴に情けなど必要ないじゃないか」

「…」

「また来い。何度でも気晴らしをさせてやる。」

俺は頷いた。舞鳥の怪我のことは若干心残りだけど、自業自得と考えるのがいいのかもな。

それより、これから気晴らしをするのにわざわざ隣町まで行かなくて済んだことにバンザイだ。これで俺の願いは叶った。気分爽快!


さっぱりした気分のまま家に帰る。玄関で、親父と鉢合わせした。

「どこへ行ってきた?」

「…」

「遥」

どこでもいいじゃんかよ。そんな遅くねえんだし。とにかくこれからは、あんたに叱られることもないってわけだ。最高の気晴らしだぜ。

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