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トンネルの先には  作者: 椎名れう
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トンネルのひとつやふたつ…。

そういえば、舞鳥とはいつからの仲だったかな。幼稚園…いや、もっと前か。

中学二年生の今まで、ずっとクラスが一緒。仲は良かったと思う。他にもダチはいたけど、あいつと俺は特別な仲だったっけ。なんせ、ずっとクラスが一緒だったのはあいつだけだもんな。俺ん家で一緒に宿題したり、教師振り回したり、隣町行ったり…。

そんな時、突然俺の母さんが死んだ。自動車にはねられたらしい。悲しくってむちゃくちゃ泣いた。葬儀が終わって親戚から慰められても、何も答えられなかった。だってのに、親父ときたら…。

「母さんの死を悼みに来てくださった人に、きちんとご挨拶しろ」

なんて抜かす。親父は泣いてなかった。悲しくないんかよ、あんた。確かに、だいぶ年の離れた夫婦だったけど、涙ひとつ見せないなんて…。

その日から俺が全部の家事をやる羽目になった。親父は朝早くに家を出て、夜遅くまで帰ってこないからだ。普段は隣町で高校の非常勤講師をやるとか、座談会モニターに参加するとかして金を稼いでいるらしい。母さんが死んでからこれらだけが収入源だが、結構儲かるらしく、生活には不自由しない。


母さんが死んで一ヶ月もしないうちに、俺は家事に慣れ始めた。もっとも、最初の頃はむちゃくちゃ大変だった。学校の宿題をこなしながら、掃除洗濯料理。洗濯物干し忘れたり、焦げ焦げのカレー作っちまったり。だってのに、親父は何も手伝ってくれなかった。その代わり文句を言うこともなかったけど。

当然ながら、遊ぶ時間は激減した。舞鳥に誘われても、断ることが多くなった。あいつが俺じゃなくて、金村たちとつるみ始めたのはその頃からだったかな。

もともと、舞鳥は俺の他にもダチならたくさんいた。そいつらは舞鳥に接近し、徐々に俺から遠ざけ始めた。あいつもそれにのせられたんだ。で、今は学校でも滅多に話さない。ああ嘆かわしい。

舞鳥はバカなやつだ。てか、むちゃくちゃムカつく。なんで、すぐ幼馴染の俺を捨てちまうのかね。こっちにだって事情はあったんだよ。それよりこっちの身にもなってみろってんだ。俺、中学生で専業主婦みたいな真似してんだぞ。

おまけに親父ときたら、すぐに再婚しやがるし。それも、何の役にも立たねえのと。なんせ、一日中居間でテレビ見るか鏡見るかしかしねえもんな。名前はふじ涼子っていって、未婚で若くて、しかも今は故人だっていう親は財産家だったらしい。つまり、天涯孤独の金持ち娘ってわけ。親父が涼子さんと結婚したのは、案外財産目当てだったりして。

しかも今日はうっとうしい女がー港海輝ーがまとわりついてきやがったし。ああ、どいつもこいつもうっとうしい!

そんな俺の心を唯一癒してくれるのが隣町での気晴らしだ。ゲームセンターで遊んでる時だけは、煩わしい気持ちから逃れられる。

俺が今日ここに来たのは、もう我慢の限界だからだ。気晴らししようとしたら、親父がうるさい。こんな村には何もねーんだよ。俺の心を癒してくれるものは! トンネルで願ったら、気晴らしができるかもしれない。だから、金村とかとのやりとりの後、近所中駆け回ってこのトンネルの情報を集めまくった。重視したのは、「中をくぐれば何でも願いが叶う」っていう噂の信憑性。で、金村以外の人間の証言をゲットした。

願い事が叶うんなら、トンネルのひとつやふたつ、くぐってやるぜ! 怖い? そんな感情は、はじめっから置いて来た。

「本当ですか?」

当たり前だろ。

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