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トンネルの先には  作者: 椎名れう
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自然体でどうにかなるよな。

光が消えた。これで、トンネルはまた真っ暗だ。だけど、俺は一人じゃない。隣には港がいる。

「これで、終わったんだよな」

恐る恐る訊く。暗闇の中であいつが頷く気配がした。俺は念のため、壁を突く。何の反応もない。てか、それが当たり前だよな。

「良かった〜」

二人同時に言って、笑い合う。お互い、土だらけだったんだ。

それから、今までのことを話し合った。俺は、このトンネルに初めて来た時から、港は、俺と舞鳥たちとの話を聞いて俺に声をかけようとした時から。

暗いトンネルの中で喋ることはかなり深刻で、それでも今となってはどこか微笑ましい話だった。

全部言い終わってから、俺は港に頭を下げた。

「今まで、助けてくれたりしてマジでありがとな。俺、ちゃんと礼言ってなかったよな。マジでごめんな」

「うううん、こっちこそ、いろいろ首突っ込んだりしてごめん」

港はやはりどこか恥ずかしそうだったが、前みたいに気弱な感じはしなかった。俺もどこか変わっただろうか。

さてと。俺は立ち上がって港に声をかけた。

「帰ろう。今日はもう遅いから俺ん家泊れよ。涼子さんと寝ればいいだろ?」

港は頷いた。よしよし、そうこなくっちゃな。

トンネルの中を歩く間、港が、俺とすれ違いに俺ん家に入った時のことを話してくれた。港によると、親父も涼子さんもどうにか平静を装おうとしていたらしい。

「さっきも言ったけど、私君のお父さんとは面識あるの。玄関に入ってすぐ、喜んで迎えてもらえたわ」

「あの親父に?! お前すげえな」

「でも、すぐに涼子さんに文句言い出すの。『私がお前と結婚したのは、息子に代わって家事をやってもらうためだった。なのに君は結婚しても遊んでばかりだった』って。私がそばにいるのにね」

「空気読めてねえな」

「と言うか、自由な人なのよ。でね、涼子さんも最初はうなだれてたんだけど、どもりながらもこう言い切ったの。『私だって手伝おうとしたことはあった』って」

本当かよ。

「それは…親父に言われてからじゃなくて?」

「ううん。その前からだって。一回、面白半分に山城君のかけかけたアイロンをいじってみたんですって。そこで、服焦がしちゃって後始末に追われて、さらに膨大に積まれたアイロンかけ待ちの衣類を見て、山城君の大変さを思い知ったらしいの。まあ、その焦がした服は自分のだったらしいけど。でね、その後声かけてみたりしたんだけど、山城君に嫌われてるんじゃないかって思って、はっきりと言えなかったんだって」

「…」

俺は、いつか涼子さんが「あの、私てつだ…」まで言いかけてやめたことを思い出した。あれには、そういう意味があったのか。

ふいに、鳥の鳴き声が聞こえてきた。もう出口は近いらしい。

「なあ」

「なに?」

「家に帰ってから俺、どう言う風な態度とったらいいと思う?」

港はふふっと笑った。

「そんなの自然体でいいじゃん」

確かにそうだな。それで何とかなると言うのなら、信じよう。

そして、俺たちは二人でトンネルを出た。

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