表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
トンネルの先には  作者: 椎名れう
25/30

これは俺の意思だ。

「君は、舞鳥君ともこれで終わりになっちゃっていいの?!」

舞鳥…。どうだろうか。

あいつは最近俺と、特に親しい仲じゃない。今までの俺のあいつに対する態度が「自分勝手」なら、もうむしろ会わない方がいいのではないか。

「舞鳥君、言ってたよ! 『俺と山城はなんでも言い合える仲だと思ってた』って! 今多少距離があっても、舞鳥君の中では山城君との繋がりは切れてないんだよ!」

なに…本当か?

「それに、ちょっと前のこと覚えてる? 飯谷さんが君に文句つけた時、舞鳥君は真っ先に否定してたじゃん!」

ああ…そうだった。思い出した。そういや、あの時ちょっとだけ嬉しかったんだ。そんで…。

俺は振り返って、港を見た。こいつが、俺を救ってくれたんだ。俺の安定しない気持ちを見ていてくれた。あの時は全然素直になれなくて、感謝ひとつしなかった。だけど、もし素直になれるなら…。

この世界で、生き直してみたい。

そのためにはまず…。俺は口に力を入れた。ビリビリと音がして、空気が入ってくる。

ここで俺ははっきりと我に返った。まず、足元を見る。港が俺の手を握ったまま、倒れていた。もっとも、意識はあるようだ。そして、真ん前には…見たくもない顔。

俺はまず、港を立たせようとした。

「おい港、だいじょうぶか」

「おい遥、何をやってる」

「うるせえ!」

俺は幼稚園児の手を振りほどいた。

「あんたには、ついてかねえ。どっか行っちまえってんだ」

「は?」

「港、起きれるか」

「だ、大丈夫」

にっこり笑って港は立った。良かった。

続いて俺は、幼稚園児野郎を睨みつけた。

「俺は、もうあんたとは縁を切る」

「聞いたでしょ。さっさと消えなさいよ」

幼稚園児は歯ぎしりしやがった。

「お前は、俺がいなくちゃやってけない。分かってるんだ!」

「そんなの、今までの話だろ。これからは違う」

「考え直せ」

「直したぜ」

「そうか、そのつもりなら…」

再び奴の手が伸びて、俺の脚に巻きついた。

「何すんだ、離せ!」

「こうなったら実力行使だ!」

奴の力はものすごく強い。俺は港の腕にしがみついたが、どうにもなんねえ。

「離せ!」

「俺には、お前が必要なんだ。お前に潜む孤独な闇が…」

もう奴は俺の言うことなんて聞いてない。一人で狂ったようにしゃべり続けている。すると、そんなやつの口から紙切れが飛んできた。港が素早く拾う。奴の顔が引きつった。

「えーと、なになに」

「読むな!」

馬鹿野郎、そう言われて読まない奴がいるか。

「港、読め!」

「えーっと、東京都、山野名院(やまの めいいん)の屋敷。家族四名。父母兄本人。名前」

「やーめろーぅ!」

やつの手がうなり声とともにすごい勢いで港に向かった。

「名前、パジリスク!」

「ぎゃああああああ〜〜!」

奴の動きが一瞬止まり、それからものすごい叫び声を上げながら、光る壁へと吸い込まれていった。


「『パジリスク』じゃなくて、バジリスクなら知ってるわ。猛毒を持つ伝説の蛇よ」

どーでもいいけど、それが奴の本名ってことか。あいつが消えたのは、あれか? 悪魔が本名知られたら、やばいってやつ?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ