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トンネルの先には  作者: 椎名れう
22/30

幼稚園児の企み

暗いトンネルに眩しいほどの光が灯った。幼稚園児が手を当てている場所だけだが、とても明るい。幼稚園児は光の中に半身を入れ、遥に手を差し伸べた。

「さあ、俺と一緒に来い」

「その中へか?!」

遥はびっくりしている。

(まあ、そうだろうな。人間には)

「俺と、このトンネルの一部になるんだ」

「な、なに?!」

遥の目に怯えが走った。幼稚園児は小さく舌を鳴らす。

(これだから人間はめんどくさい。この宣伝文句は、俺たちの種族には大受けなのにな)

「ああいや、言いすぎた。別に土塊とかになるわけじゃない。ただ、俺の家に行くだけさ」

「あんたの…家?」

「ああそうだ。そこにはたくさんの魔法の道具があるぞ。お前に見せた岩の他に、呪いの人形だとか、召使いの小人とかな」

遥はじっと考え込んでいる。幼稚園児はさらに、甘い声で誘惑してみる。

「食い物の心配もしなくていい。人間の食い物ぐらい、なんでも作れるさ」

「…」

「お前は、今生きている世界で限界を感じているんだろう? 俺が居場所を与えてやる」

「あんたの…家に?」

「そうだ。さあ来い。もうなにもお前を悩ませるもののいない世界に行けるんだぞ」

遥はなにも言わない。だが幼稚園児の方は、じりじりしていた。遥の感情が揺れていることに危機感を感じているからだ。

(ここで引っ張り込んでしまえばもうこっちのものだ)

自分の手元で好きなように「教育」できる。そうすれば、遥は永遠に自分の元で純粋なエネルギーを出し続けるだろう。

「もう迷うな」

だが、ここまで言っても遥は手を握り返そうとしない。その口からぽつりと言葉が漏れた。

「…り」

「あ?」

「舞鳥が…」

「忘れろ。あいつはお前を苦しめてきただけさ」

「…本当に?」

「今まで散々苦しめられてきたじゃないか」

もう限界だった。腕を自在に伸ばし、有無を言わさず遥の手を掴む。遥は抵抗しようとしなかった。放心した顔で、されるがままになっている。

(しめた!)

そのまま引きずり込む。遥の脚がズルズルと地面の上を引きずられ…。

そして止まった。

「!」

遥の手を引くのに、さっきよりも力がいる。幼稚園児は反対側から遥の腕を引くものがいることを知った。

「さては…!」

「山城君! 行っちゃダメだよ!」

光を照らすと、必死の形相の港海輝が遥の腕を引っ張っていた。


「今まで散々苦しめられてきたじゃないか」

確かにそうかもしれない。俺はそう思った。もう、なにがどうなってもいい。そう、思っていたのに…。

「山城君! 行っちゃダメだよ!」

この声でなぜかハッとした。

「…港?」

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