灰色のウサギ話
私の目の前にいるのは、なくなったはずの人型の『ダイキ』。
いったいどうしてこんなところで再会してしまったのか、まったく推理できない。
「ダイキ、どうしてダイキまでここに?!」
「えへへ、ボクも正直よく分からないんだ。」
そのあと、家に戻りリビングにある食事用の大きなテーブルに、二人が正面で向き合えるように座ると、ダイキは自分が今のところ理解しているところまで話してくれた。
それから話されたのは、ダイキがあの日、突然目覚めない眠りについてしまった原因だった。
ダイキがあんなことになったのも、予想はしていたが、私の時と同じ、あのロリ女神の仕業らしい。
ダイキがあの日の前日、眠りにつき体を休めていると、突如目の前に美しい翼をもった女神が現れ、いきなり異世界へと連れられかけたらしいのだが、最初は女神の言葉に反論したらしいのだ。
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「おす、オッスー!女神ちゃんでーす!今からあなたを別の世界に連れていきまーす!」
「えぇ、君だれ?愛輝がこの前言ってた危ない人?」
「むむっ、アタシはちっとも悪いやつではなぁーい!でもやっぱ人の言葉が分かるんだねぇ。」
不思議なことを言うその人は、ボクをどこかへつれていってしまうらしい。
「いい?あなたはもともと『この世界』のウサギじゃないの。だから故郷にかえすのよ!」
「えぇ?でも、愛輝とお別れするのは悲しいよぉ。」
愛輝は、初めて会ったときに、ボクを見てとってもニコニコしていたのが最初で、しばらくたつと、また愛輝は現れて、気がつけば愛輝のお家のなかだった。
愛輝はボクを持ち上げると、「よろしくね、ダイキ!」とボクに声をかけた。
それから少し経って、ダイキとはボクのことを言っているのに気付きはじめた。
それからはとっても楽しくて、お腹が空くと、愛輝は美味しいご飯をくれるし、いつもボクの名前を呼んでくれるし、何よりも嬉しいのは、ボクを見ていつも幸せそうに笑ってくれること。
それがとっても嬉しくて嬉しくて、ボクは愛輝が大好きだ。だから愛輝と離れるなんてとても寂しい。
「大丈夫!『あの子』のためにあなたを連れていくんだから!」
「あの子って・・・!・・・だれ?」
あの子というのが誰だか分からなかったので、女神さんに質問したら、なぜかこてっと宙返りをした。
「大丈夫?」と聞くと、女神さんはまた立ち位置に戻り、「平気よ!」と言って胸を張り、話を続けた。
「一回しかいわないからね。あの子っていうのは、あなたの主人『愛輝』のことを言ってるの。」
「えぇ?!どうして愛輝をつれてっちゃうの?」
「私だって、お仕事でやっているんだからしかたないの。で・も!君にはあの子のサポートをしてほしいの!」
サポートとはどういうことなのだろう。そのあとも話を聞くと、ボクには先に異世界というか、故郷にかえって、愛輝が来たときにサポートをしてほしいということらしい。
「・・・どう?のってくれる?」
「・・・・・・愛輝が絶対に逃れられない運命なら、分かったよ。」
「おお!!よっしゃー!交渉成立ー!!」
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「て、ことがあったんだぁ。」
「・・・へぇ。」
何てことだ。
私の知らないところで、ダイキが私のためにこんな決意をしてくれてたなんて。
「てことで、これからもよろしくね、アイラ!」
そう笑うダイキの笑顔は、姿が変わっていても変わらない笑顔で、なんだか少し、これからの生活に安心感が持てた。
異世界生活の一日目。