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魔法?いや、超能力なんです。(小休憩中)  作者: ぢそべ某
第3章!
42/45

#42 ヘタレ?

あけましておめでとうございます。


今年も月イチの亀更新ですが

お付き合い頂けると幸いです。


お仕事が忙しくてそもそも

スマホやPCすら触れないのが辛いですね。


でもたまに見ると

評価ptが上がったり感想が増えたり

してるので励みになります。


なので頑張って幕間的な短い話も

投稿出来るようにしたいですね。


期待は…してもいいですよ。

 










「―――――――――鑑定の結果、ご提出された三つの竜鱗粉は全て金竜の物である事が証明されました。全て出品なさりますか?」


「はい、お願いします。」



「かしこまりました。出品物は鑑定書と共にこちらで保管するので、当日はこの勘合符と交換で受け取って下さい。」


 受け取った勘合符には【二十】の数字が書いてある。出品する順番が二十番目って事かな?



 ちなみに、鑑定書は鑑定機によって出た結果を羊皮紙に写し書いた物だ。商人ギルド認定の判子も押され、本物という証明がなされている。




「出品物の下限価額ですが、鑑定の結果と量、それと需要を鑑みて大金貨百枚が妥当だと思うのですがどうでしょう?まあ勿論、下限価額で売れる事はないでしょうが。」


 なら適当でいいか。



「ではそれでお願いします。それと買い手としても参加したいのですが、事前の手続きはありますか?参加費が銀貨五枚と言うのは聞いているんですが。」



「それは当日に参加費を払うだけで大丈夫でございます。」


「ただ、ご自身が出品する番の三つ前になったら待機していてもらう必要がありますし、落札されたら引き換えの手続きもありますので、もし全ての出品物をご覧になりたいなら出品を代理の物に託す事も出来ます。」



「こちらで代理の者を用意する事も出来ますが、二割か三割の手数料は掛かりますね。その分煽りなど慣れているので高く売れる可能性も高まりますが。」



 手数料か……利に聡い商人だけあって仲介で儲けるのが上手いねぇ。まあわざわざ乗ってやる必要はないけどさ。代理人の一人位、用意出来る。



「代理人はこちらで用意する当てがあるので大丈夫です。それと出品や買い手の時に顔を隠しても大丈夫でしょうか?」



「構いませんよ。出品の手続きの段階で出品物や身元の確認は出来ているので他の出品者は勿論、買い手同士で顔を隠しても問題はありません。」




 そりゃそうか、でもそれならひと安心だな。顔を隠せるのなら隠した方が問題も起きづらいだろう。顔を覚えられても面倒だ。






 その後、オークションに関しての細かな説明を受けてから自宅へと戻る。結構時間を食ったがマオとシリュウはまだ戻っていないようで鍵が掛かっているから、合鍵を使い家に入る。



 戸締まりは大事だよね。鍵っていっても昔の南京錠みたいな単純な作りなので、ピッキング位出来そうだけど。



 いや、そもそもピッキングなんてしなくても窓を割ればいいのか。脆い曇りガラスだから割るのは簡単だ。音がネックだが、手早く済ませれば済むだろう。



 ………いやいや、何を思案してるのよ俺は。空き巣なんてするつもりは無いってば。――――――まあもしかするとエルピス騒ぎの黒幕のアジトに潜入するかもだけど、それは必要な事だから。



 断じてやましい事はない。ないったらない………価値のある物があれば徴収するけどね?折角だから。



 流石に盗品ぽいのなら駐屯所に捨ててくるが、汚い金で買った物なら貰ってもいいだろうよ。


 その位は貰わないと割に合わない。慰謝料的な意味で。






 △▼△▼△▼△▼△▼






 マオたちが戻ってくるまで暇だからと調合薬のレシピ集を読んでいたら、思ったより早く帰って来た。いや、もう外が暗くなってきたから意外と時間が経っていたようだ。



 部屋が薄暗くて照明を付けていたから、外の明るさまで目がいっていなかったな。



 と言うかよく考えれば何時間ハミル山脈にいたんだって話だ。昼前は家を出たらしいから軽く六時間はいた計算になる。



 まあそんな時間までいても、晩御飯はいつも通りの時間である。しっかりと昼前に作り置きをして、冷蔵庫に仕舞っていたお陰だ。


 あとは【発火能力】で温め………る事は出来ないので、昼頃に買ったホットプレートの様な魔具で温める。



 電子レンジもどきを探したけど無かったから妥協した形だ。俺がいない時や超能力が使えない時の事を考えて買ったんだが、早くも出番が来て良かった。


 冷蔵庫があるなら、温める道具も必要だからな。



 それにしてもやはり、冷蔵庫を作っておいて良かった。なんだったらもう一台位なら作ってもいい。その場合は【瞬間冷凍】で更に冷やして完全食材用だな、未加工の肉とか魚とか。



【瞬間冷凍】なら絶対零度、マイナス三百度近いから調理済みの料理を入れるには冷えすぎているが、未加工の物ならいいだろう。


【状態変化】のお陰で溶けないから、接地面がくっつく心配もないしな。



 ………そういや生の魚介類は向こうに比べて食べる頻度が減っているな。この世界に来た時に一帯の地理は確認したが、海は結構離れていた。新鮮な魚はあまり簡単には手に入らないだろう。


 白竜を使う手もあるが、使える人が多いわけでもないしコストが掛かる。



 干物ですら思ったより高めだが比較的入手は簡単だ……あんまり好きじゃないんだけど。日本人なら刺身でしょ。



 衣食足りて礼節を知るとも言うし、自分の食欲に我慢を強いる必要はない。そのうち、ひとっ飛びして買いに行ってみるか。



 海鮮丼、カルパッチョの様に刺身で頂くのもいいが、フライや天ぷらも趣があって良い。調理用の材料や道具も揃えておかなければな。






 食事の後、順番ずつ風呂に入っていき最後に俺の番だ。超能力が使えないため、湯船は使わずシャワーヘッドのような魔具で体を洗い流す。



 一応シリュウに魔法で湯船を温められないか聞いたら、「人の使う魔法は苦手」と断られてしまった。じゃあ竜の魔法は?と聞いたら、加減が出来ないから家ごと燃やすかもとの事。


 魔法も意外と不便だったのか。



 風呂から上がると、冷蔵庫からキンキンに冷えた果実水を取り出し一気に仰ぐ。牛乳じゃないのが残念だが、晩御飯のスープやらキッシュに使われてしまった為に無かった。



 いつも通り美味いからいいんだけどさ。鶏肉とキノコのミルクスープとか、じゃがベーコンのキッシュとか。特にキッシュはニンニクが効いてて美味かった。



 食文化は割と似ている事が多いのに、風呂上がりには冷たい牛乳という文化はないのか。まあ風呂上がりに冷たい飲み物を飲む事自体、実は内蔵への負担を考えると控えた方がいいんだけどね。



 それでも出来上がってしまった文化、習慣はそう簡単に変えられるモノではない。だから明日は絶対に牛乳を飲もう。



 そんな決意を胸に寝室へ向かうと、寝室が桃源郷になっていた。…………はい?



 落ち着け俺、見間違いなんて超能力者だろうがする時はする。餅つけ餅つけ………全然落ち着けてねぇッ!



 だって目の前にはベッドの上で正座する二つの人影。


 マオはその白い肌と似た真っ白なネグリジェ、シリュウはその長い紫髪の映えるピンクのネグリジェをそれぞれ纏っている。



 これで興奮しないのは男じゃないだろ。


 だがまずは状況を把握させて、切実に。



「―――――――――どうしたんだ二人とも?そんな格好をして。」


 ポーカーフェイスを貼り付けながら震えないように声を掛ける。



「はい、リリアンさんに紹介して頂いたお店で買ってきました。お金はシリュウちゃんの今日の稼ぎからです。」



 質問の答えと微妙に違うが………とりあえず元凶はリリアンか、やはりアイツは一度〆よう。



「ご主人様の元へ来てもう随分と経ちますが、一度も夜伽の相手に呼ばれず不安になっていた事を相談したら、リリアンさんにこの格好でベッドで待っていたらきっと大丈夫と言って頂いたので。」



 いや、元凶はヘタレな俺か。確かに自分に魅力が無いんじゃないかと不安になっても無理はない。男としてどうなんだろうそれは。



 そういう事を強制するのは良好な関係を築く上で邪魔になるからと色々理由を付けて逃げていたが、こういう行動に出てくれる程度には良好な関係を築けているのだろう。



 ならここは男らしくいくべきか。だがその前に聞くべき事がある。


「すまないなマオ、いらない気苦労を掛けた。――――――それでシリュウはなんでまた?」


「リリアン殿に自分の主には全てを捧げるものだと言われたので。」



 こっちは全面的にリリアンの陰謀か。


 リリアンの策略に嵌まるのは癪だが………もう乗ってやろう。ここまでされて乗らない程冷めた人間じゃあない。



 ベッドの空いたスペースにゆっくりと座り込み、まずはマオの膝に置かれた手を握る。小さくて柔らかい女の子の手だ。



 そのまま目を合わせると、マオが意を決したように瞳を閉じる。その唇にキスをした。柔らかな唇の感触になかなか離れられなかったのは仕方の無い事だと思う。



 続いてシリュウにも同じようにキスをする。マオに比べて少し薄い唇の感触を味わっていたら、口内にぬるっと何かが入ってきた。



 俺も負けずと舌を忍び込ませ、舌と舌とを絡ませる。いきなり舌を入れるなんて絶対リリアンの差し金だろうが、構うものか。



 唇を離すと、唾液の糸が照明で光りながらプツリと切れてベッドに落ちる。上気した表情のシリュウが目に入るが、俺も似たような物だろう。



 興奮でボンヤリとしながら、次の段階へ進むべく、俺は服を脱ぎ始めた。











 △▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼











 気だるい微睡みの中、目を覚ますと両隣には二人の美少女。人生で一番最高な目覚めとはこの事だろう。



 だから一瞬訪れる強い頭痛も何のそのだ。いつもより痛い気もするけど気にする事は無い。



 さて、いったいどんな超能力が―――――――――ほう?【無限収納庫(インベントリ)】か。どうやら収納量も収納物のサイズも無制限の収納庫らしい。



 収納庫の中は生きている(・・・・・)生き物が収納出来ないと言う制限はあるものの、時間が止まっているので腐る心配がない。これなら生鮮食品も安心して仕舞えるな。俺が行商人なら便利だっただろう。



 しかも何故か、超能力が使えない時でも使えるらしい。


【状態変化】が超能力の使えない時でも効果が消えないように、【無限収納庫(・・・)】自体が消滅する事はないから関係無く使えるのだろうか?



 …………ん~イマイチ納得出来ないが、まあ使えるのなら文句は言うまい。【自己把握能力】を持ってしても、仕様までは分からないからな。



 そもそも両親と違って何故俺が複数の超能力を持ち、更に増えていくのかすら分かっていないのだ。考えるだけ無駄だろう。




「――――――んっ。」


「ん?おはようマオ。」



「おはようございますご主人様。すみません、起きるのが遅くなってしまって。」


「気にしなくていい、俺が少し早起きしちゃっただけだからね。」



「ありがとうございます、すぐに朝食の準備をしますので。ほら、シリュウちゃんも起きて。」



「?…………マオ殿、主殿おはようございます。」


「おはようシリュウ。」


「おはようシリュウちゃん。ほら、早く朝食の準備しないと。」



「そうですね、今行きます。」



 二人が一階へ降りるのを確認してから、ベッドの上を改めて確認する…………うん、事後感が半端無い。赤い汚れとか、所々濡れてたりとか。



 赤い汚れは落ちるのだろうか?酸素系の漂白剤とか重曹があれば落とせるんだろうが………あるの?重曹位ならありそうだけど。


 似たような天然鉱石があれば可能ではあるが、化学反応なんて分かるのかな?俺も詳しく覚えてないっての。



 まあ汚れが目立つようなら新しいシーツを買えばいいんだよな、だからこれは実験に使おう。



 シーツをベッドから剥がすと、触れたまま【無限収納庫】に【イン】と念じてみる。すると手元にあったシーツは姿を消した。



【無限収納庫】の中身を思い浮かべてみると、頭の中に収納されたシーツのイメージが出て来る。さっき確認出来なかったシーツの僅かな汚れまで、しっかりと把握出来ているな。



【アウト】と念じると、手元からさっき収納されたままの状態で出現した。出るのは手元からだけかな?



 次に、【発火能力】でシーツに火を付けてから収納する。十数えてから取り出してみると、火は燃え広がる事なくそのままだ。


 火が消える事もないとは、本当に収納された状態で時が止まるようだな。



 火を握り潰してから、ふと思いついて床に落としてから足で触れて念じてみると、収納出来た。触れていれば何処でもいいのか?



 試してみると、肌が出ている場所なら何処ででも収納出来る事が判明した。出現させられる位置も同様だ。


 もしかしてこれなら………と思い、【サイコキネシス】で部屋の隅を占領している竜鱗粉の小瓶を掴んで収納と念じる。



 収納出来た。


 これもアリなのか。布越しに触れても収納出来ないのに。


 そして当然のように、【サイコキネシス】で作り出した手の中に出現させる事も可能だった。



 これが出来るのなら、【サイコキネシス】の及ぶ範囲内の物ならなんでも収納出来る事になる。


 便利なのは行商人じゃなくて泥棒か。悪用は自重しよう、うん。




 ブラックな活用方法はさておき、この超能力があれば手ブラでも困る事が無くなったわけか。勿論、不自然にならないようにバッグを手放す事はしないけど。


 容量を気にしなくていいのは大いに結構だ。



 これなら部屋の隅に立ち並ぶ貴重品たちにも盗難の心配が無くなるし、生魚や生肉、温かい料理等を大量に収納しても無問題(モーマンタイ)



 夢が広がるね。


次回、暗躍。

………昼間なのに。


オークションまであと三日。

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