#31 二つの不良?
多少短め、
話自体はあまり進みません。
次回への布石ですね。
新キャラ登場予定です。
「―――――――――頭痛い。」
昨夜はなかなか飲んだな。最初のエールから始まり赤と白の葡萄酒(ワインだよね?)、蜂蜜酒、林檎酒、ブランデーまで飲んでしまった。カシンも進める割にスローペースで俺ばっかり飲んだ気がするし。
"酒のチャンポンと親の苦言は後から効いてくる"なんて格言を聞いたことがあるが、正にその通りだ。
まあ多少頭が痛い程度で戦闘には支障がないとは思うけど、いつもより少しゆっくり活動するとしよう。まあ既にゆっくりモードだけどな……ん?何か聞こえるな、ザァーザァーと。
体を動かすのが億劫なので、【千里眼】で外の様子を覗いてみる。過去最高に不精な使い方だけどそれは置いといて……どうやら外は雨が降っているようだ。
これは今日の冒険者活動は中止だな。全くもって仕方無いが、雨ならしょうがない。うん、しょうがない。そうと決まればマオにも伝えなければ。
これも過去最高に不精な使い方だが、【浮遊能力】で一階に降りてマオの部屋に……行こうと思ったらキッチンから良い匂いが。
よく考えなくても俺の起きた時間はいつもより遅いので、コレは当たり前と言えば当たり前だったか。そのままキッチンへクラゲの様にプカプカと浮かんでいくと、調理を終えたマオとちょうど目が合う。
「あ、おはようございますご主人様。そろそろ起こしに行こうと思っていたところでしたが、体調は大丈夫ですか?」
「おはよう。まあ絶好調とは言い難いけど、そこまで不調でもないかな。ああそうだ、今日は雨だし冒険者活動は休みにしようと思う。マオも好きに過ごして構わないよ。」
「好きに……ですか?それはつまり暇を貰えると言う事でしょうか?」
「うん、そうだね。あ、お小遣い渡すから買い物にでも行ってくればいいんじゃない?日用品以外でもなにかと必要な物もあるでしょ?」
女子だし?服とか買いたいものが色々あるだろう。
「ん~そうですね。ではこの後は買い物に行って、そのあとは装備品の手入れや家の掃除でもしようと思います。あと時間もあるので、晩御飯は少し仕込みに時間のかかる料理を作らせていただきますね。」
「お、それは楽しみだね……っと、とりあえず朝御飯食べるかな。」
食器が二膳あるという事はまだマオも食べていないのだろう。律儀というかなんというか、まあ"らしく"はあるけどな。
早々に朝御飯も食べ終わってしまいすることもないので、もう一度横になってくるかな。まあ昼頃には本調子に戻るだろうが、その頃には雨も止んでいるだろうか?
そういえばこっちに来てから初の雨だ。どの程度の頻度で降るのか、雨季や乾季などの有無も知らないが、雨が続くと冒険者はどうするんだろうな。
雨に打たれながら頑張っちゃうのか?
でも迷宮があるよな、アレは屋内だ。いやでも強いんだっけか?じゃあ結局実力の無いブロンズ級は雨に打たれながらしかない。風邪引かないか心配だな。
ぶっちゃけ、【サイコキネシス】を傘の様に頭上に覆えば濡れないんだけどさ。流石に不自然過ぎる、まあ風邪なんか引く俺でもないんだけど。
少ししてマオが買い物に出かけ家を静寂が支配する。
家を出る時にちゃんと断りを入れる律儀さを発揮するマオを見送り、寝る事も出来ずに布団に横になること数十分。いや暇だわ、雨も止む気配ないし。ん?止む気配はないが玄関に人の気配が。
マオにしては早過ぎるかと思い【千里眼】で確認すると紙切れを持った見知らぬおっさんだった。いや誰だよ、しかしノックされては対応せねばなるまい。
「―――――――――はいはい、どちら様ですか?」
「失礼、ユート様はご在宅でしょうか?」
「ユートは俺ですが。」
「これは失礼、カシン様より言伝を預かっております。どうぞお受け取り下さい。」
「はあ、ありがとうございます。」
何かと思えば電報か、まあ"電"ではないだろうが。なになに………なるほど、要約するなら「雨だし暇ならカジノでも行かない?」的な誘いか。
アイツも暇を持て余しているらしい。特にすることもないし誘いに乗るとしよう。
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待ち合わせは昼頃にキースの店という事だったので、昼飯は食わずに店に向かう。
帰っていたマオも誘ったのだが、少し険しい顔をしつつ断られてしまった。まあギャンブルに良いイメージはあまり無いだろうしな。その代わりお土産は期待してもらおう。
「――――――お!来たかユート、あんなに飲んでたからダメ元だったんだが二日酔いは平気みたいだな。」
「まあな、流石に寝起きは調子悪かったが今は平気だ。というか昨日は随分飲ませてくれたな、自分はあまり飲まなかった癖によ。」
「は?いやいや、俺も結構飲んだんだぜ?というか腕っぷしで勝てないから酔い潰してやろうと思ったのによ………強すぎるぞ。俺も結構自信あったのに朝は死にそうで久し振りに酔い覚めの薬を飲んだ位だ。」
「そ、そうだったのか。」
どうやら俺は酒豪だったらしい。まあ酔い潰れる心配をしなくてもいいし弱いよりはマシだろう。食事の時の楽しみが増えたのは嬉しい事だ。今度から自分で買って飲んでみるのも一興だな。
「……まったく、酒まで強いなんてユート君も可愛げがないな。俺も結構強いんだがユート君には負けるよ。」
「キースさん、別に俺に可愛げは必要ないと思いますがね。それより、腹が減ったので注文いいですか?」
「へいへい、まあ俺の料理じゃ満足出来ないだろうがな。」
あ、やっぱり気にしてるのか。カシン、フォローは任せたぞ。
カシンのフォローで機嫌を良くしたキースは置いといて、食事を終えカジノへと向かう。
俺は兎も角カシンも正装に着替えているが、身長が高いのでなかなか様になっている。だがやはりこの手の服が派手なのは変わらないらしい。
「さて、お互い頑張ろうぜ。せめて負けないように、あわよくばガッポリ稼げるようにな!ああだけど、スロットは止めといた方がいい。アレはリールが速過ぎて狙えなかったし割に合わねえ。」
さてはお前やったな。
だが安心しろ、前回ガッポリ稼がせてもらったから今日はやるつもりなどない。流石の俺も連続で大金をせしめるのは悪いと思うし、目を付けられるのは困る……手遅れでない事を祈ろう。
カジノに着くと中は相変わらず人が多い。暇人というか、ダメ人間の巣窟だな。まあ今日限りは………って前回も同じ事考えた気がするな。
まあそんなことはスルーするとして、前回はスロットしかしていないから今回は色々楽しみたいところだ。
だが残念ながら他のゲームのルールが分からないので、カシンと一緒に回らせてもらうことにした。トランプ、ルーレット、ダイスなど数多くあるが、特にトランプとダイスは種類が多い。
一々ルールを覚えるのも面倒なのでとりあえずルーレットにさせてもらった。
これなら単純だからルールも簡単だし、なにより一番カジノっぽい。そんな俗っぽい理由で選んだルーレットだったが、思ったよりも奥が深い。
回転盤には均等に区切られた黒か白のボールの落ちるポケット(【0~36】の数字が記されている)がありどのポケットに落ちるのかを予想するのだが、その予想の種類が想像していたより多かった。
予想……言い方がダサいので【ベット】に変えるが、ベットは一枚100ギラのチップを使って行う。
回転盤の横にはベット用のレイアウト表があって、【1,2,3】という風な数字三つの並びが十二列、つまり【34,35,36】までの欄と欄外に【0】が描かれている。
この時点で特定の数字一点、隣合う数字の二点、横並びの数字三点、十字の四方向にある数字四点と種類があるのに、更に縦一列十二点や【1~12】【13~24】【25~36】など大中小に賭けられたり色や奇数・偶数などに賭ける事が出来る。
ルール自体を覚えるのは簡単だが、これは一筋縄ではいかないだろう。
だがこれでこそのギャンブル!そう!俺はこういうヒリヒリ感を求めていたんだ。間違ってもただボタンを押すだけのお手軽ゲームではない。
というわけでカシンと共に挑戦すること十数ゲーム。
野生の勘なのかカシンは収支プラスに落ち着いているのだが、俺はというとそこそこ負けてマイナスに傾いている。というのもベット出来るのがボールを投げる前で持ち前の動体視力が生かせない為だ。
いや、例え投げた後にベット出来たとしてもボールを投げるのは人間なので、毎回毎回ボールを投げる強さが変わり判別が出来ない。
ルーレットは俺の強みを生かせない苦手なゲームと言えるだろう。いや、スロット以外はそもそもどうしようもないのか。
………なんと素晴らしい、こんなに本気になれる事は他にないぞ。今まで苦労した事がない俺としては新鮮でこれは嵌ってしまいそうだ。もっと早くに出会っていたかったが、未成年の俺には縁がなかったからな。
これからは週一で来てもいいかもな、負けが嵩んだらスロットで取り返せばいいし。
―――――――――実際のところ地球で考えるのなら、日本におけるパチスロは当たりのパターンに入らないと狙おうが揃わないし、カジノスロットはコンピューターで制御されていて誰がどう打とうが変わりはないのだが、未成年の彼には知る由もないのであった。
次回の新キャラ登場をお楽しみに。
残念ながらカジノの中で会うので
若干ダメ人間かも知れませんが。




