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魔法?いや、超能力なんです。(小休憩中)  作者: ぢそべ某
第3章!
29/45

#29 ハミル山脈へ行こう?

 










 翌朝、朝食を済ませると冒険者ギルドに向かった。ハミル山脈で狩れる魔物の事と、一応迷宮の事も聞くためである。



 最近は冒険者としての自覚が出来てきたため……というか夜更かしするような娯楽がなく早寝早起きの生活リズムで、今朝も起きたのは日の出とほぼ同時だった。



 そのため家を出たのもそこそこ早かったのだが、露天は早々に開き利用する冒険者らしき者たちがちらほらといる。やっぱりちゃんとした冒険者はこうでなきゃな、うんうん。


 そしてそんな冒険者共の中に、見覚えのあるイヌミミ野郎を見つけた。向こうも気付いたようで近付いてきたな。




「――――――おう!久し振りだなキャ…ユート。なんだ、お前もこれからギルドか?」


「久し振りカシン。ああ、ハミル山脈で狩りでもしようと思ってな。依頼書を見に行くとこだ」



「そいつは奇遇だな、俺もハミル山脈に行こうと思ってたとこだ。お、そんなら一緒に行かねえか?いつもはソロか誘われたパーティーにでも入るんだが、ユートなら安心して背中を任せられるぜ。」



「じゃあお言葉に甘えるかな、ハミル山脈は初めてだし経験者がいると心強い。あ、ツレがいるけど構わないよな?」


「そっちの嬢ちゃんか?見たとこ戦闘奴隷だが……使えんのか?」



「ああ、ブロンズ級だったらしいが最近の動きを見る限りじゃ充分だと思うぞ。まあカシンには勝てないだろうけど、あの大会だったらトーナメントには出れたかな。」



「ほう……いやぁあの大会って俺とユート、それにあの魔法士の嬢ちゃん二人以外は似たり寄ったりだったろ?」



「いやいや、もうちょいちゃんと評価してやれよ……まあアレだ、B3の魔物にギリ勝てるかな?ぐらい。ラパスでの二日間の駆逐作戦でもC級じゃ相手になってなかったから。」



「なるほどな、まあそれなら大丈夫か。――――――いや待て、駆逐作戦って終わったの昨日だよな?今日ここにいるのはおかしくないか?」



「あっ……まあ俺だから。」



「んな適当な返しするのアリかよ。はぁ……まあいいさ、ユートが色々すげぇってのは知ってるからな。今回のも秘密の魔法ってヤツだろ?」



「そんなとこだ。さて、じゃあそろそろギルドに向かうとするか。」


「そうだな、早いとこ行かないとこの時間はすぐ混むんだ。よし、走るぞ遅れんなっ!」



「ちょっ……行きやがった。しゃーない、俺たちも急ぐか。」







 △▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼







 走り去っていったカシンを追いかけ冒険者ギルドに入ると、朝早くとはいえ中はガヤガヤと賑わいを見せていた。まあ常駐型の依頼を請けている奴等もいるだろうし、駆逐作戦の時ほどの混雑はない。



「遅かったなキャ……ユート。さ、とっとと掲示板見てテキトーに請けてこいよ。俺は昨日常駐型を何件か請けてっからさ。」


「おう、少し待っといてくれ。……それとよ、いい加減ユウトで慣れてくれない?そっちの名前はバレるとめんどいんだからさ。」



「はははっ、悪い悪い。まだ抜けきれなくてな……まあ努力するわ。」


 まったく、壁に耳あり障子にメアリーと言う諺を知らんのかお前は。



 まあカシンの事は置いといて。


 Bランクの掲示板を見てみると多種多様な依頼書が掲示板を埋めていた。……多過ぎてよく分からんな。一応説明に魔物の絵も書いているが、一体どれを請けたら良いのか。




 ――――――こういう時は、採用基準を一つに絞る事が大事だ。


 何を重要視するか。魔物の特性やら難易度を無視すると、他の基準は報酬と生息域だ。……あんまり奥に行くのは面倒だし近場の魔物中心で請けるかな。



 幸いな事にお金には困ってはいないし、冒険者としてのランクを上げる事に集中しよう。テキトーに請けていてもB級の依頼ならそこそこ貯まるしな。





 常駐型の依頼を数件請けるとカシンと共にハミル山脈へと向かう。カシンもマオも既に俺の秘密を知っているので、時間短縮のため飛んでいった。


 勿論マオの事はしっかりと手を握り、カシンはサイコキネシスで脇に浮かべてだ。野郎の手を握る趣味はない。



 カシンは俺の浮遊能力に驚いていたが、単純なのか無知なのか早々に「まあキャ……ユートだからな。」と納得していた。……両方だろうなぁ。




「―――――――――さて、ユートも当然Bランクの依頼を請けてる訳だしCランクに用はないよな。ってことで、こんな麓付近はとっととおさらばしようぜ。中腹まで楽に行ける近道があるんだ。」



 ハミル山脈は登って行けば行くほど険しくなり、それに順応するため魔物が強くなる傾向があるので麓付近は大体Cランクが多い。飛んで行っても良かったが、多用するのもな。



 それに折角カシンが便利な近道を知っているのなら、活用しない手はないだろ。



「おう、道案内よろしくな。」





 麓から軽く山道を進み数分、ここでカシンの案内によりいきなり木々の隙間など道ならぬ道を歩かされ、それから十数分もすると山の中腹へと着いた。


 覚えづらい道を通りすぎて、超能力無しじゃ帰り道一人で帰られる自信がないぜ。




「さて、来るまでにCランクの雑魚で準備運動も済んだし、こっからが本番だぜユート!折角だからお香でも使うか?」


 ………ああ!魔物を惹き付けるあのお香か。



「じゃあお願いしようかな。マオは倒せそうなヤツがいたら叩いてみて、深追いはしないように。無理そうなら声かけてな。」


「分かりました、頑張ってみますっ!」



「よし。カシン、準備オッケーだ!いつでもいいぞ。」


「あいよ、じゃあ使うぞ。」



 カシンが火を付けるとお香から薄ピンクの煙が発生する。やはり匂いはしないが、カシンやマオなら分かるのだろうか?いや、少なくとも魔物はちゃんと分かっているらしく、数分もすると群がってきた。



 岩の体表を持つ青い象と赤い鳥人間に、色味の激しい蛾と蜘蛛がわらわらと俺たちを取り囲むように。


 象は"ロックシアン"と呼ばれる前回見たメタルシアンの岩バージョンの魔物で、難易度はB2。


 鳥人間はいわゆる"ガーゴイル"で、体を覆うデカい翼に長い尻尾、河童みたいな顔をしたこれまた難易度B2の魔物だ。



 蛾と蜘蛛はそれぞれ"ソンノモース"、"パラリルアラクネ"と呼ばれるB3の魔物で、蛾は鱗粉に付着した睡眠毒、蜘蛛は毒針による麻痺毒をそれぞれ使う。いや、見た目からして毒を使うのは分かってるけどね。


 どっちも黄色にピンク、紫とか色味の主張が激しいし。毒々しいとは正にこの事である。




 マオには蛾と蜘蛛を任せて、俺は象とガーゴイルを相手するか。まあ一応、蜘蛛の毒針は【発火能力】で燃やして使えなくしておこう。


 蛾の鱗粉も剥がしておきたいが……鱗粉を完全に無くすと飛べなくなるからな。少なくとも地球の蛾とか蝶は。



 構造自体はそんなに変わらないし下手な事はしない方がいい。飛べない蛾の相手なんてつまらないからな。それに睡眠毒くらいなら大丈夫だろ、多分。



 やばそうだったらフォローに入ればいい。過保護にしていては成長出来ないし、本人が強くなることを望んでいるのなら多少厳しくした方が正解だろう。



 俺だって色々しんどい事があったからこそ、超能力を使いこなす事が出来るようになったんだしな。昔なんか【サイコキネシス】で物を掴む時、力加減が上手くいかなくてよく潰してたし。



 最近は慣れてきて、どんな超能力でもなんとなくで使えるようになってるけど。経験から来る超直感ってヤツだな。




 そんな事を考えながら、向かってくる石コロ共を切り裂いていく。流石に石相手なら鋼鉄の剣でも問題なく使えるようで、刃こぼれもしていない。



 ……いや、あの金属野郎が特殊なのか。確か難易度A2とかって言ってたし、B2ならこんなもんだよな。



 近寄ってきた蛾と蜘蛛も倒すが、こちらも難しい相手ではない。蛾は鱗粉を撒き散らす前に胴体を串刺せば問題はないし、蜘蛛も毒針に注意して邪魔な手足に翻弄されなければいい。



 群がる魔物を斬りながらマオの様子を確認すると、なんとか紙一重で攻撃を避けながらも倒しきれないでいた。身軽だし回避力は高いマオだが、その分攻撃力は低めだ。


 これは改善が必要……か。



 まあ攻撃を食らいそうな感じはしないし、時間をかければ倒せそうだからもう暫く放置……いや見守りの姿勢でいいだろう。俺はマオが集中出来るように環境を整えるとしよう。







 △▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼







 お香の効果が消えてからも、遭遇する魔物を倒しながら少しずつ奥に入っていく。Bランクの魔物だとコア以外にも素材を回収しなければならないのが面倒だが、まあ慣れだな。



 俺とは違ってカシンとマオは手際良く素材を剥いでいるし。


 だがそんな中、申し訳ないことにパラリルアラクネの素材が毒針だったらしく軽く非難を受けてしまった。マオが相手をするヤツの毒針を全部燃やしていたのが結果的に裏目に出たらしい。



 こそっとやっていただけに、とても恥ずかしい。一流の冒険者なら、ただ倒すだけでなく売却する事まで考えるんだってさ。



 カシンは兎も角、マオにも「毒針があっても大丈夫ですから、その様な勿体無い事は止めてください。」って言われてしまった。信用してないみたいで申し訳ないな。




 まあそんな事があったりしながらも順調に狩りは続き、現在は昼を少し過ぎたところだ。マオは勿論カシンも消耗しており、ようやく見付けた見晴らしの良い平原で昼食を摂る事になった。



「――――――しかし、マオちゃんなかなか筋がいいな。俺の弟子にしたいくらいだが……ユートが教えてるんなら充分か。」


「ありがとうございます、カシンさんもとてもお強いんですね。お二人はどういったご関係なんですか?」



「駆逐作戦で行ったんなら分かるだろうけど、ここから少し離れたラパスでやった武闘大会で知り合ってな。決勝戦でやり合ってそこから友人だ。ユートは俺を倒して優勝したんだぜ!」




 ………お二人さん俺を置いて盛り上がってますね。いや、悪くはないんだよ、少し寂しいだけ。



「そういやユートはパーティー組まないのか?俺はたまに旅をするからアレだが、ユートは王都に家も買ったし拠点にするんだろ?」



「確かに王都を拠点にするのはその通りだけど、パーティーはな……。」


 信用出来る奴に出会えるかどうかだ。マオは身内と考えるとして、カシンの様に分かりやすく付き合いやすい奴だらけとは限らないし。



 現状で特に困っている訳でもない。



「そうか……まあユートの実力ならそれでも平気だよな。いや、知り合いに調子に乗ってソロだったばっかりに大怪我した人がいてな。少し心配してんだよ。」



「覚えとくよ、俺も怪我なんてしたくないしな。」


 最近まともに怪我なんてした覚えないけどさ。



「はっ、そりゃそうだ。―――――――――さて、そろそろ休憩もいいだろう。もうちょい狩りを続けるとしようぜ。」


「そうだな、マオも大丈夫?」


「はい、大丈夫です。充分休めましたから。」




 それじゃあまあ、引き続き頑張っていこうか。


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