#20 Side マオ?
いつもより少し長めかも。
駄文ですがすみません。
感想、罵倒お待ちしてます。
side-マオ
私の名前はマオ。
マオ・ショルツベルドが本来の名前だったけど、奴隷になった瞬間に"マオ"になった。
私が14歳を迎えて少しした頃、冒険者として家計を支えていた父が大怪我を負う事件が起きた。
父はシルバー級の中でも実力が優れていて、同じシルバー級の仲間とパーティを組み依頼をこなしていたけど、ある日B1の青竜討伐のためにとある山へと出掛けた。
青竜は白竜と違い群れを作らないため、実力のある複数人で一気に叩けば苦しい相手ではない。そのため父たちのパーティは1匹の青竜に対し5人での総攻撃という戦法の元、時間をかけながら数匹を撃破していった。
そして3匹目を撃破し4匹目の青竜を探そうとしていると、不意にヤツは姿を表した。
青竜よりも二回りは大きい体躯に、黄色に光る頑強そうな鱗。そう、黄竜である。
黄竜はA3に分類される青竜の上位種だ。青竜より更に硬いその鱗は耐魔法攻撃にも優れ、ゴールド級でも複数での討伐が基本の強敵である。
だが幸い、黄竜は竜族で唯一飛行能力を持たず鈍足なため逃げるのはそう難しくない。そこで父は殿として黄竜の気を引き付け、他の仲間を逃がそうとした。しかし、現実はそう甘くない。
黄竜は足が遅い分、遠距離攻撃を得意としている。
尻尾の先を足元に刺したかとおもうと、そこから地面を吸い取り弾丸として次々と撃つ。向かう先には逃げようとしているパーティメンバー。
吸い取られた地面は鉄のような硬さになり、放たれる速度も合わさって破壊力は凄まじい。
結論として、町に逃げ帰ってきた時にはパーティは父ともう1人の2人だけとなり、重傷だったもう1人もまもなく死亡。父も左腕と右足を骨折していたが、それよりも心の傷が大きかった。
更に亡くなったパーティメンバーの家族は自分ひとり生き残った父を責め立て、堪えきれなくなった父はお酒とギャンブルに溺れた。
シルバー級とはいえ5人で分割される収入では裕福とはいえない。そんな状況で収入が絶たれ、酒とギャンブルに溺れ、パーティメンバーの家族から求められるままに賠償金を払った後に残ったのは、借金だけだった。
父の代わりに母が働くも急に大金を用意出来るわけはなく、利息も払えない状況に残された手段は私の身を売るということだった。
幸いにして私の容姿は悪くはなく、歳も若いため借金を一括で返せる程の値段で売られることになった。
売られる最後の夜、父と母は泣いていたが私は不思議と涙が流れなかった。これで両親が元に戻ってくれるなら、これでもいいと思ったから。
翌日、奴隷商の遣いの馬車に乗せられる時に父は言ってくれた。お酒もギャンブルもやめる、と。そしていつか必ず私を見つけ出すと。
正直1度奴隷となったものが再び家族の元へ帰れる事はほぼない。折角大金をはたいて買った奴隷を手放しはしないからだ。手段としては購入者と交渉して買い取るか、購入者が死亡して奴隷から解放される位だろうか。
父もそれを分かっているはずだが、多分励ましの意味も含まれているのだろう。人によっては奴隷になる事を拒否して自害することもあると聞く。
そんな父の優しさに涙が流れそうになるが、なんとか堪えて馬車に乗り込む。今日から始まる奴隷生活への不安と一緒に。
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馬車に乗せられること7日、私は一軒の屋敷に運ばれた。
ここは奴隷となった人々が、実際に奴隷商で売られる前に"商品"としての価値を高めるために教育を受ける場所だ。
公用語であるパラサイ語の読み書きに、清掃、洗濯、炊事など必要最低限の家事の指導、それと戦闘奴隷としての実践訓練を朝から夕方まで行う。
そして夜には性奴隷としての奉仕技術を学ぶ。最初の頃には抵抗もあったが、女性スタッフが道具を使っての指導なので少しずつ慣れていった。
それに家事や…こういう事は覚えておけば買われた時の扱いに違いが出ると、先輩の奴隷は言っていた。
彼女は別の奴隷商の元とある男の資産家に買われたらしいが、その奴隷商ではここよりも奴隷への教育が乏しく、買われたものの少しして他の奴隷を買った時に売却されてしまったそうだ。
彼女は元令嬢ということもあり家事全般は壊滅的、更に男性への免疫も無かったらしい。
1度購入された経験があると、奴隷の価値は下がってしまう。そして価値が下がると、それだけ扱いも下がる。だから私にもしっかりと指導を身に染み込ませるようにと言っていた。
そんな毎日を来る日も来る日も続けていたある日、私は屋敷から連れ出された。どうやら規定の教育日数を終えたらしい。
そこから馬車を10日走らせて着いたのは、私を買い取った奴隷商の本店がある王都"ライディオン"だった。本店というのも、王都に店を構えるほどの豪商らしくどうやら他の都市にも店があるらしい。
馬車が王都の中心部へと走り少しして店に着く。店は大きく、他にも多数の奴隷たちがいた。今日明日で売られる訳でもないので、ちゃんとコミュニケーションを取っていかないと。
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さて、早いもので王都に来て既に20日だが私はまだ買われていない。まあ当然だろう。奴隷の価値はピンからキリまであるが、それでも奴隷を買えるのはある程度富を勝ち得た人のみだ。
そしてそんな人たちでも、奴隷は露天の野菜の様に気軽に買うものでもない。
だけど20日もあれば、他の奴隷は何人か売れていった。男の戦闘奴隷だったし恐らく闘技場の人員補充だったのだろう。
「───────‼」
……なにやら騒がしいが、どうやらお客さんが来たらしい。何人かの奴隷が呼ばれて応接室の方へと行く。少しして私を含む同室の子たちも呼ばれ、部屋の前で数分待機したのち入室する。
部屋に入ってまず目に付くのは、奴隷商である店主のジール。そしてその向かいに座っているのが、今回のお客さんなのだろう。
いやに若い。人族は比較的年齢が分かりやすいが、私と同い年くらいに見える。てっきり使用人が代わりに買いに来たのかと思ったが、その考えはすぐに否定した。
なぜなら着ている衣服が使用人とは思えないほど上等な物だったからだ。装飾も見事だし、生地もしっかりとしていて深みのある色をしている。
顔も血色が良く整った顔をしており、黒髪に黒目とあまり見掛けたことのない珍しい容姿をしている。多分この辺りの出身ではないのだろう。
軽い面通しの後、私だけが面接を受ける。
質問の内容は普通だが、奴隷である私にも物腰の柔らかい言葉遣いだ。使用人が違うとなると何処かの富豪の息子なのかと思っていたが、そういう人に共通する傲慢さや偉ぶる感じが一切感じられなかった。
面接を終え、私はもといた部屋へ戻される。さて、どうなるだろう。出来ればそろそろ売れたい。それに先程の男性なら多分、奴隷への扱いもあまり酷くなさそうだ。
若干謎は多いが、下手な富豪よりは良い方だと思う。
そんな事を考えていると、目の前の扉が開く。どうやら私はあの人に買われるらしく、ジールに連れられ先程の部屋に戻る。
部屋に戻る前に言われたが、私は大金貨60枚で買われたらしい。私とさして歳の変わらない人が、そんな大金を払えるのは驚きだ。冒険者とは聞いているが並の実力ではないのだろうか。
部屋に戻ってからはジールが奴隷についての説明をして、そのあと店をあとにする。
「…とりあえずマオの服とか必要な物を買ってから昼ご飯にしようか。」
そういえば今着ている服は奴隷商から与えられたペラペラの服だった。流石にこの服はあまり人前に見せられるものではなかったかな。
「はい…えっと、危害を加えられないように"命令"をしなくてもよろしいのですか?」
勿論そんな事をするつもりはさらさらないけど、なんとなく聞いてしまった。だって常識的に考えて、奴隷に最初にする命令といっても過言ではないし。
「…まあ必要ないかな、別に襲われても困らないし。」
「そ、そうですか…」
ますますこの人の事が分からなくなった。いくら手練れでも不意を突かれる事もあるだろうに…それほど自信があるのか。
その後地図を片手に歩き始め、少しして服屋へと着いた。
必要な物を買うように言われたが、明らかに奴隷が服を買うような店ではない。さっきちょうどいい店があったときスルーしたから変だとは思ったが、いくらなんでもこれはないだろう。
だが、その事を言うと値段は気にせず選べと言われ…仕方なく従う。いや勿論、値段を気にしないのは無理なので、比較的手頃な価格の物を選んでいく。それでも結構な値段だけど。
選び終わり声をかけようとして、そういえばこの人の事をなんと呼べばいいか疑問に思った。
旦那様?いや年齢的にもそれはない…じゃあご主人様かな?
そう思ってご主人様と呼ぶと、この人…いえご主人様は少し驚いたような顔をしたあと、少しばかり顔を赤くして返事をした。
ちょっと可愛いと思ってしまったが、それを言うと馬鹿にしてるのかと怒られそうなので言うことはない。まあご主人様なら怒らなそうだけど、それはあくまで私の想像だし下手な事はしたくないからね。
買った服に着替え続いて向かったのは武器屋と防具屋だ。武器は鉄製のダガーナイフ、防具は高いだろうに革の鎧を購入してもらった。その時防具にかかっている魔法の事を説明したけど……どうやら全く知らなかったらしい。
今までオーダーメイドの装備品しか使ったことがないのかな?
店を出るとちょうど昼頃で、昼食を取ることになった。
店は……また価格高めの所。一応確認したが、私もここで食べるみたいだ。
しかもメニューまで自分で決めていいと。流石にここまでサービスされると逆に不安になってくる。ついつい声を荒げてしまったが、怒られはしなくて良かった。
結局ご主人様に決めてもらったが、まさかの同じ物を注文。
本当に一体何を考えているのか分からない。
でもそんな不安はとりあえず脇にでも置いておこう。魚…もとい料理が運ばれてきた。ムニエルと蒸し焼きか…どれも好きな料理だ。というか魚料理であれば基本的になんでも好きだけど。
まあ猫人族だしね。狼人族が肉料理を好きな位当たり前の事だ。
目の前に置かれた料理に堪らずフォークを伸ばす。う~ん美味しい。あっちでも食事は出たけど、健康管理の意味合いが強いためか基本質素な物だった。
だから久しぶりの、しかもこんなに美味しい魚料理についつい頬が緩む。心が弾む。
それにムニエルは"ノブレサモン"、蒸し焼きは"ペアドラダ"とどちらも安くはない魚だ。ノブレサモンは確か1度だけ、しかも父がシルバー級に上がった時に1匹を家族3人で分け合った記憶がある。
私のいた村は沿岸近くだった為そこまででもないが、王都は内陸で海も近くはない。値段は更に跳ね上がっているだろう。
……それを今は1人で1匹、いやペアドラダを含めると2匹を食べている今の状態に、なかなか現実味が湧かない。でも口に広がる上品な香り、ふわふわの食感は紛れもない現実だ。
───奴隷も意外と悪くない?なんて考えが頭をよぎった。
前言、いや口には出していないから前思考…を撤回しよう。
食事を済ませた私たちが訪れたのは、寝具店。まったく何を勘違いしていたのだろう。多少待遇が良かろうが、奴隷は奴隷だ。私はご主人様の命令には従うしかない。
なんだか自宅に帰るのが怖くなってきた。覚悟は奴隷になったときに決めたはずなのに。
そのあとの事はいまいち覚えていない。ご主人様の後に付いて店を2、3回ったと思ったらいつのまにか自宅らしき家の前に着いた。
「──────さ、ここが今日からマオの暮らす家だ。」
……流石に私を買うだけの事はある、大きい家だ。そういえばご主人様の事は殆ど聞いていなかったけど、家族などはいるのだろうか?
「随分と大きいご自宅ですね。他に同居されている方は何人いらっしゃるんですか?」
「?俺とマオだけだよ。ああ、ベッド届いてるから中に運んで組み立てようか。マオも好きな部屋使っていいから。」
「……はい、かしこまりました。」
2人きり…また少し体が強張る。でも気付いた、ベッドが2つある。しかも好きな部屋を使え?ということは寝室は別らしい。
これで多少は気が楽になった…かな?
ご主人様に続いて家に入り部屋を見渡す。外から見ても分かっていたが、広い。それと気付いたのは、どうにも生活感がない。まるで何年も人がいなかったみたいだ。
買った物を見ていてなんとなく予想はついたけど、この家は最近購入したばかりらしい。まあ今ベッドを買ってる時点ですぐに気付いたけど。
ご主人様は私の分のベッドを2階に持っていこうとして…諦めたのか1階で組み立て始めた。なんで業者に頼まなかったのだろう…まさか忘れてたとかないよね。……ないよね?
ベッドを組み立て終わると、自分の分は放置してバッグから買った物を出していく。そっちは組み立てないらしいが、じゃあ今夜はどうするのだろう?……私のベッドか、はぁ~。
買った物を次々とバッグから取り出し、棚やタンスへとしまっていく。買い物してるときは気付かなかったけど、買い過ぎの気がする。ご主人様は値段をちゃんと見ているのだろうか?
────アレ?これは……杖?どうやらご主人様の持ち物らしいが、バッグを整理するときに出したのたか。しかし杖か…ということはご主人様は貴族なのかな?
でもお金の使い方以外は貴族っぽくないし、元貴族の線も薄い…なら貴族の堕とし子が有力か。でもそれだけならあの羽振りのよさは説明が出来ない。
となると冒険者としての実績が凄いか、貴族の親をどうにか脅しでもして大金をせしめたか。どちらにしろご主人様を見る目は変わりそうだ。
そんな事を考えながらも、作業はしっかりとこなしていたのでようやく終わった。
「そろそろご飯にしようか。マオには明日の夜から作ってもらうとして、今日は買った物があるからそれを食べよう。」
明日からか。そういえば食材も買った覚えは無かったしね。
「はい、明日からはしっかり頑張ります!」
そのあと夕食を食べる。…どうしようか、聞いてしまおうか。聞くなら今しかないよね。
「…あのご主人様、質問してもよろしいですか?」
「───!ああ、何でも聞いてくれ。」
「ご主人は冒険者との事でしたが、ランクはどうなっているのですか?家や奴隷を買うくらいですからシルバーかもしくはゴールドでは?」
「いや、まだブロンズだよ。だから心配しなくても難しい依頼にいきなり挑戦!……なんてしないから、安心して。」
「なるほどブロンズでしたか────ブロンズでこの羽振り、やはり……」
予想通りだろうな。まあきっと辛い境遇を経験したのだろうから、自分の親への復讐も兼ねているはずだ。これ以上は聞かないことにしよう。
「ん?なにか言った?」
「いえ、なんでもありません。ご馳走さまでした、ではお風呂の準備をしてきます。」
「ああ、お願いね。そのまま入っていいから。」
「え、いやでも一番風呂はご主人様が入るべきでは?それに私は商館では3日に1回濡れた布で体を拭くだけでしたので、お湯を汚してしまいます。」
「いやいや、それなら尚更早く入ってきなさい!」
「は、はい……では頂きます。」
ご主人様に言われ一番風呂に浸かりながらも、まだ若干戸惑いを隠せないでいる。 貴族でなくとも奴隷に一番風呂を譲るのは思うところがありそうだが、むしろ進んで譲られた。
奴隷そのものに対しての対応が普通とは違う。奴隷制度のない別の大陸からでも来たのだろうか。まあ流石にこれ以上は聞けないし聞かないけど。
さてそろそろ上がるか。もしかするとご主人様が入ってくるかもなんて考えが頭をよぎったけど、その心配はなかった。
「────ご主人、お風呂頂きました。」
「う、うん分かった。じゃあ明日はギルドで依頼受けるから、しっかり体を休めておいてね、おやすみ。」
「……はい、おやすみなさいませ。」
…あれ?大丈夫そう。ソファに毛布かけてあるし、もしかしてあそこで寝るのかな?
それならそれでラッキーと思うべきか。まあ明日以降どうなるかは分からないけど…いや分かってるけど。
とりあえずもう寝てしまうか。明日の事は明日の私に任せるしかないしね。
次回も別視点で行きます。
皆さん忘れてるかもですが、金髪のあの方です。




