#16 体質?
タイトル修正しました。
(旧)魔法を使いたかったけど───です。
だいぶ迷走しましたが、
もう修正はしないつもりですので安心?してください。
キースの店を後にした俺は、そのままの足で掃除道具を買うため街を歩き始めた。デカい地図を往来で広げるのは憚れたので、店を出る前に場所だけ確認して、そこからは千里眼で位置関係を確認しながらである。
少しして街の一角へとたどり着いた。ここは掃除道具、家財道具、調理道具などの店が建ち並ぶ街のホームセンター的な通りだ。
買うのは……とりあえず掃除道具だけでいいだろう。ベッドや食器類は掃除が終わって部屋が片付いてからだな。
ということで箒に塵取り、雑巾に木桶などの掃除道具を購入し、途中の家の近くの井戸で桶に水を入れてから自宅へと帰った。
さていよいよ掃除だが、勿論自分の手を使う訳がない。だって超能力者だし。箒も雑巾も余分に多めに買ったので、千里眼とサイコキネシスを自動能力制御の能力によって有効的に活用し居間で寛ぎながら掃除を開始する。
やはり使われていなかったから埃が凄いな。テーブルの下、タンスの上などなど綺麗に掃除していく。7部屋+トイレ+風呂場の掃除だが、この調子ならすぐに終わるだろう。
しかし風呂場は脱衣場と浴室を合わせるとそこそこ広いな。ガラス窓がないので脱衣場と浴室の境目がタール?を塗られた黒い木戸だったり、そもそも1部屋1部屋が大きかったりやはり日本とは違う。
───そんなこんなで寛い…もとい、掃除を終わらせ腕時計を見ると時刻は17時過ぎ…大体1時間位かかったか。
晩御飯にはちょっと早いが、出掛けるには中途半端な時間だ。……ん~久し振りにノートでもまとめるか。
【ギルド会員】 ブロンズ級
【所持金】
・大金貨 24枚
・金貨 8枚
・銀貨 8枚
・銅貨 5枚 計248,850ギラ
【買う必要のある物】
・ふかふかのベッド
・座り心地の良いソファー
・食器、調理道具
・正装着(カジノ用)
・お風呂で使う道具(桶、手拭い)
・可愛いメイドさん(相場を確認後)
───こんなもんだろう。ベッドとソファーは体に合ったものを使いたいし、出来れば時間をかけてゆっくりで選びたい。正装着も急ぎではないし、今度暇な時にでも買ってそのままカジノに行こう。
食事に関してはバッグがあることだし、暇な時にまとめて買うか。掃除してみるとキッチンもちゃんとしてるし、本格的な料理も作れるだろう。
風呂道具は早めに買っておきたいから、飯を食べて少ししたら買いに行くかな。…おっと、色々考えたり悩んだりして書いていたら時間が過ぎてたな。
いい時間だし飯にするか。まだ食器も食材も用意していないが、幸いバッグの中にはラパスを出る前に買った食料がまだ残っている。まあ予定よりも早く来れたからだな。
バッグから取り出したローストチキンとチーズのサンドイッチにかじりつく。まあ本当の名前は違うけど、鶏肉とチーズらしいものではあるので、便宜上そう呼ぶとしよう。
「───ゴクゴクゴク……ふぅ~。」
それを2つ食べ、水筒に淹れておいたお茶を飲み干して今日のディナーは終わりだ。明日は外の店で食べてみるのもいいかもな。家購入のお祝いの意味を込めてまた少し豪華な店で一人飯でもするか。
──ふらっ
お、やば、飯食ったからって急に眠くなってきた。まだこれから街に出ようと思ってたのに…この睡魔には……勝て…そうに……な………い────バタンっ!
△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼
「─────はっ!」
……知らない天井だ……じゃなくて、なんで地べたで寝てんだ?いくら掃除したとはいえ、土足上等のこの世界で地べたで寝るなんて…。
えっと昨日は……キースの店行って、家買って、そんでまたキースの店行って、色々買い物してから家の掃除して、晩飯食べて───ああ、それから急に眠くなってそのまま寝ちゃったのか。
ということは…………やっぱり超能力が使えないな。
実は俺の超能力だが、最初から今と同じ種類の超能力が使えた訳ではない。産まれてすぐは、自己把握能力とサイコキネシスだけだった。
しかし、たまにこういう風に超能力が使えなくなった翌日には、超能力が増えたり、今持っている超能力が上方修正される。
言ってしまえば俺というソフトウェアのアップデートみたいなもんだな。しかしなぜこんなことが起こるかは、自己把握能力をもっても分からない。
まあ増えるのはそこそこ嬉しいし、超能力が使えないのも1日くらいならそんなに困らないんだが、1つ重大な問題がある。
これこそ俺が早く家を買おうと思った"体質"なんだが、超能力が使えなくなるのには前兆がある。今回の場合ではよく眠くなって睡眠時間が増えるのがソレに当たるんだが、毎回同じではない。
前兆には3種類あって、どうやら人間の欲求に当たる食欲、睡眠欲、排泄欲がそれぞれ抑えられなくなるようだ。
多少程度の違いはあるが、食欲なら力士並みの食事を摂らないといけなくなったり、睡眠欲だと眠気が襲ってきてナマケモノ並みにだらだらと過ごすこともあった。
ここまではまだ……多少譲歩すれば許せるというか、受け入れられるんだが、問題は残りの1つだ。
排泄欲、つまりは小便を出したり涙を流すことだな。赤ん坊の頃なら小便をよく漏らしたり、急に泣き出す位のものだったが、中学に上がってからは違った。
保険の教科書に載っていたんだが、排泄欲には"性欲"も含まれるらしい。
この前兆は大体2~5日の期間だが、それでも大変だ。想像出来るだろうか?酷い時には数日間発情しっぱなし、女子とすれ違うだけで前屈みにならざるを得なくなることを。
そうなると家から…というか部屋からも出られなくなり、ティッシュを減らすだけである。
流石にそういう状況になる可能性を考えると、自宅を持っていた方が安全だ。宿だと壁も薄いだろうし、女性と接するのは危険な気がする。
自分の理性を信じたいが、想像以上にこの欲求というのは抑えが効かないからな、元の世界だろうと異世界だろうと性犯罪者になりたくはない。
───しかし、超能力が使えないとなると今日はギルドの依頼を請ける訳には行かないな。今は常人より少し動ける程度の身体能力しか持たない普通の人間だ。
となると……カジノか!あそこなら超能力が使えなくても問題ないし、どうせ暇な時に行こうと思ってた。そして今がその暇な時だ。
善は急げ──ってことで、朝飯を早々に食べそそくさと家を出る。正装着を買う店は昨日確認済みなので、早速向かうか。
少し歩いて王都の中央街に店を構える"ノッブラ・ファール"に到着する。ここは正装着専門の洋服店で、男女共に気品溢れる人達が利用する王都でも人気店だ。
俺としては正装着なら別になんでも良かったんだが、キースに「金持ってるんだし、こういうのは変にケチると縁起が悪い」とか、「安い服で行くとカジノ側から軽く見られる」なんて言われたので結局この店にした。
店内に入ると、おしゃれな服に身を包んだ貴婦人やダンディーで紳士なおじさんたちが何人かいた。多少安い服も置いてあるが基本的にはお高い服が主流の店なので、やはり客層はこういう感じになるよな。
まあ本当の貴族連中は仕立て屋を呼ぶからここにいるのはあくまで只の?金持ちなのだが、それでも年齢層的に一回り所か二回り以上年上の人達に囲まれるのは居心地が悪い。
さっさと買ってカジノに向かうとするか、うん。
幸い店員が話し掛けてくることはなく、ぷらぷらと店内を回って無難な物を会計に持っていく。装飾の派手な物もあるが趣味ではないのでスルーだ。
「すいませんコレお願いします。」
「はい、かしこまりました。……こちらの商品でお間違いなかったですか?」
「?はい。ああ、そのまま着て行きたいのでお店の奥で着替えさせてもらってもいいですか?」
「…はい、大丈夫です。」
「ありがとうございます。じゃあ代金……と、では場所借りますね。」
そのまま店の奥へ案内してもらい、袖口に軽くフリルの付いた深紅のジュストコールに赤色のベスト、黒のズボンに焦げ茶色のシューズと、世界史の教科書に載れそうな出で立ちに着替える。
ジュストコールの背中には鮮やかな幾何学模様が描かれ、所々キラキラと光っているのは綺麗な石…宝石か。これでも地味な物を選んだんだがな。
酷いのはもうアレだ、目がチカチカするレベル。
しかし店員のアノ反応…俺がこれを買うのは変だったのだろうか?これでも比較的無難な物を選んだつもりだが。それとも値段か?一応こんなんでも大金貨2枚くらいしたからな。
父の勝負服だったアル○ーニのスーツとかのイメージで少し奮発して買ったけど……俺が買うには上等過ぎたか。まあ所持金がこの年齢には不相応だからな。
よくよく考えると家を買える金額の3分の1近くをしれっと持ち歩く高校生なんて普通におかしいし、しかもそれを持ってカジノに向かうなんて変だよな。
海外ならもしかするとあったかも知れないけど、日本人の俺には馴染みがない。まあこれからもっと増えるかも知れないけど…
今後も超能力は増える予定です。
もし良ければ感想などでリクエストも募集します。




