しょーとすとーりーず21
メッカ。
円形の庭、細かく細かく手入れされ設計されてある、緑の木々装飾の造形の隙間流れゆく運河、大見栄タカマル幾何学ナル簡素の迷宮。
中央にはのっぺりと白く柔らかく伸びた美しいイスラム建築。
夜。
調和、しっとり永遠なる静寂、微風の嵩なり、凛と鳴る青磁の塔。
運命の朝。
取り壊しを待つ以外無かった。
建造物と建造物を湛えた円形の庭以外の周囲の街並みの全てはもう取り壊され、更地となり、がらんどうとしている。
いよいよ取り壊しなる直前夜、空からおおよそ直径1mのスライミーなゼリー状の粘着物の球体が、透明スル無数の色彩で大量に降ってきた。
ゼリーの逼迫、圧。
建造物を浸透するカタチで、ゼリー状が建造物を取り込んでしまいたちまち建造物は埋め尽くされてしまった。
取り壊し業者の面々。
翌朝、ゼリーに癒着された建造物は、硬質を解体されて、ゼリー質へと変貌をとげている。
解体業者の面々絶え間なく、驚愕している。
ギャラリー。
日は進み、次第にゼリー質は再び硬質へと、今回は透明な結晶質へと固まってしまう。
観察実験の注視なる態度、ギャラリーの質は飛躍的に昇り、ごった返し、白い眼は光って夜も眩しいくらいに。
盗賊。
結晶質は、完全なる硬質へと、固まってしまった。
チェーンソーを手に、土地のやからが結晶を削り持ち去ってゆく。
多彩な莫大な宝石の輝きである。
いつの間にか、区画され、整列し、順番を待つ行列ができあがっていた。
ビジネスと客。
時間制のビジネスとなる。
客は絶えない、儲け話を聞き付けた世界中のヤカラたちへ、惜しげもなく、これはつまり、果樹園の果物狩りの要領と等価であった。
反して、結晶は、高級な宝石として売りさばかれてもお釣りが来た。
この状況におかれても、秩序は崩れない。
最新技術の目玉製品に為される整列の態度にて、いつまでも折り目正しくキヲツケをしていた、マエニナラエとして。
夢幻者。
チェーンソーでの粉砕が厳しくなる。
砂塵が舞う。
固まりでの報酬が不可能となりつつある。
強烈なハンマードリルで、粉砕していく、サイケデリックなミクロの流星群がチカツいて、眼には眩し肌に痛痒し。
粉塵を吸った者が幻覚を覚える。
爆薬、解体ショーとギャラリー。
個人的な能力での解体は不可能とされてきた。
爆薬を使ってそれはなされゆく。
爆発、爆発、爆発。
現場は巨大な幻覚でつつまれた。
物体化するイメージたちのオブジェのそれぞれ。
爆薬に対し日増しに解体効果が薄れゆく。
粉塵を吸ったある一人のイメージが、ついに、この庭先のすぐ向こう側へと具現化する、記念碑、世界、第一の具現化。
世界中の人々。
イメージのオブジェ化の口コミは、あっという間に世界中に広がった。
人々それぞれの胸に咲く固有の無限の世界の具現化を目指して、世界中から人々が集まった。
イスラム、土地のやから。
第一人者のなしたオブジェは、巨大な、ピンクの、松の樹木であり、高級な盆栽の職人技の媚態で、その結果庭向こうの巨大な樹木を破り引き裂いた。
上海、美女。
タスマニア島を丸々黄金の塊まりへとコーティングしてしまった。
ボリビア、青年。
〇月×日に降り注いだ世界中の雨は、全てゴム製なるカラフルなリアルな等倍なる雨粒。
イングランド、熟女。
サハラ砂漠のど真ん中に、東京ドーム46個相当の敷地よりなる巨大な遊園地を打ち建てた。
・・・・・・
その他斯く斯くしかじか。
オブジェたるオブジェの全て、良くも悪くも欲望の成就における瞬間的達成の権化。
現存世界の物体を刷新するため、つまり、世界中が、更新による恐慌にさらされてゆく。
ハンター。
全面的に近づく事が禁じられる。
しかし、機動隊が、暴力を振るうごとに、その機動隊めがけて、オブジェは炸裂した。
ハンターである。
ハンターと機動隊の抗争が始まり、悪化してゆく。
崩壊後、世界のメッカを目指す人々。
世界の秩序の盾という盾は破られてしまった。
オブジェの起爆剤たる巨大な宝石の岩に近づく事は、一時に比べ容易である。
世界中から集まった人々。
しかし、それに近づかぬ人々も少なくない。
オブジェ化により、更新され、同胞家族を亡くした人々。
最も悪辣なるは、オブジェ化を願った途端、自らの肉体を裂き、オブジェと引き換えに、生命を経つこの上ない不幸。
カルト。
リスクに次ぐリスクと事件。
それでも自らの理想郷への欲望は絶たれない。
その歪みは究極のカタチへ昇華されてゆく。
カルト教団の窮状なる掟、オブジェ化による自死。
それを果たした人々は英雄化され、その教団は、魂の物体を教祖として崇めたてる。
新世界の住人。
はじめ、ゼリー質に取り込まれ宝石化された建造物は、今や完全同化した宝石の巨大岩として全て粉砕され人々の体内に取り込まれ消えてしまった。
世界中の物質世界が刷新されてしまった。
新しい世界の住人は、かつてよりこうであったかのように新しい物体世界に住み慣れてしまった。
新世界。
世界中の物体世界に、魂が宿っている。
それは、新世界風景たる今世界風景に前提して生け贄として捧げ、宿された魂である。
物質、以前より、場所自体に所有されてある、魂のちから。
新世界世界中の場所の全ては、パワースポットである。
前提たる生命群その全てより引き継がれしパワー、スポット。
その、パワー、世界において、なかでも頂点とされる場所。
世界中より、円形に真っ白に切り取られた、完全なる空白。
埋め尽くされてしまった世界中より、異様なる実在感、引きの美学と、圧倒。
空白。
建造物は円形の庭ゴト、見事なまでに、完全に、世界より消え、新しい世界を埋め尽くすオブジェを、円形は、一切許すことはなかった。
グラウンド・ゼロ。
新世界住人は、空白の、円形の、その場所をそう名指すことで、神聖なる創造力の源泉を、世界より峻別し、遵守尊厳なる意志を確定した。
メッカ。
メッカは、新しいメッカとして、新生した。




