表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
セカンド・ブラック  作者: 陽炎煙羅
一章 
8/14

皐月晴れ、燈也は迷う…3

しかし、ドラゴンなんてもの誰が考えたんでしょうね。

昔の人はいろんな意味で頭がぽぽぽ(略 ですから、知る由もないですけど。

 ――翌日。


 俺こと若槻燈也は、寂れてボロボロな街道を一人で歩いていた。

 ……いや、特に何かあった訳じゃないんだが、その所々穴とか空いたり金属片が刺さってたりする人っ子一人いない街道は、俺の通学路(・・・)なのだ。


 竜の強襲がもたらした傷跡は、人々が想像するよりよっぽど深い。

 ここのように、かつて竜に蹂躙された都市は、未だに片づいていないところが多いのである。


「しかし、困ったな……」

 昨日、学校をさぼってまで十六夜と押し問答をしてみたのだが。

 結論から言うと、『現状に変化なし』であった。


 やはり十六夜は、どこか一部の記憶が抜け落ちているらしく(それが一昨日の屋根ドカンの所為だと俺は確信している)、肝心なところは思い出せないらしい。自分の住所など、個人情報がわからないとなると、やはり“軍”に調べて貰うのが一番なのだろうが、なにせ当の本人がそれを拒否している。


 俺は自分のお節介体質も相まってか、無理矢理“軍”に引き渡す、なんてことはしたくない。

 “軍”には黒い噂も絶えないしな。こんな年頃の女の子を引き渡しでもしたら、大変なことになるだろうしな。



 ……さて。歩きに歩き、俺は今、鋼鉄の門の前に立っている。

 俺の通う関東西部軍事学校の広い敷地を包む鉄の柵が横に広がっているのだ。


 さて。ツールを確認するが、今日は大丈夫だ。遅刻じゃない。助かった。


「……よし」

 何人かの生徒が先に校門を抜けていくのに従い、俺も鋼鉄のそれをくぐった。



―――――――――――――――――西部軍事学校、高等部館。


 ここの軍事学校は、いわゆるエスカレーター式の学校だ。

 中学校の試験に合格して高校、成績が十分であれば大学への進学も保障される。

 もっとも、親族や人類の恨みを晴らすため、高校卒業後、軍部に直接進学する生徒もいるが。


  ちなみに十六夜は家にいる。屋根の修理は請求書通りに金を払ったから、大家さんがなんとかしてくれるだろう。


 ……しかし成り行きで置いてきたが、十六夜はいったい何者なのだろうか。

 なんだか失念しかけていたが、人間が屋根を突き破る速度で上空から飛来した場合、まずその人は助からない。

 しかし、十六夜は着ていたであろう服(今となってはぼろ切れ)以外は目立った外傷は無かった。


 どういうことだ? さっぱりわからん。


 自分の教室に入り、クラスメートに挨拶し、廊下側に位置する自分の席に腰掛ける。

 鞄から歴史書を取り出し、それをカバーにしてツールを起動する。

 ……しかし、教育制度が一応しっかりしているあたり、うちの国民は意地のある奴ばかりなんだなー、といつも思わされる。


 まあひとまず、考えるのは止めて、ツールでYDNとの戦況に変化がないかを確認するとしよう。

 そう思い、ツールを軍の共通ネットワークに接続させようとした時、首筋に激痛が走った。

「ぬぐおおおおお!?」


 痛え! 滅茶苦茶痛え!

 ……しかし、犯人は分かっていた。


 なぜなら、いつも(・・・)のことだからである。

 痛む首をねじるように回し、席の横を見る。


 そこに立っているのは、比較的小柄な体躯に、肩まである髪の少女。

「おはよーつっきー。でも朝っぱらからツールをいじくるのはどうかなぁ」

 ……つまり、俺の腐れ縁だった。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ