和なきて、動き出す…2
朝、8時30分。
朝のホームルーム。
「ほら、つっきー起きて」
「ああ……。そういえば転校生がどうとか……」
眠気眼をさすりながら答える。
見ると、隣の席で皐月が頬を膨らませていた。……おお、これはデジャヴだ。
確か学校に行く前、十六夜も似たような表情をしていた。
「もう、つっきー、転校生が来るんだよ! こんな体験、今の時代じゃ私たちくらいしかできないんだよ! わくわくしようよ!」
あー、お前は元気だなー。
今日も平和で何よりだ。
「もおー。低テンションだなあ。……あ、先生来たよ」
がらがら、と典型的な音を立ててドアが空き、いかつい顔の担任教師が教室に入ってきた。
続く、水色。
……水色?
「あー。お前ら、今日からこの西部軍事学校の高等部に転校してくる……えーと、自己紹介を」
そう、先生が隣に立つ少女に促した。
「青崎海土那です。よろしくお願いします」
そう言うと、水色の髪を持った少女はぺこりとお辞儀をする。
蒼い……髪だと!?
「すごいねー、染めてるのかな」
「いや、地毛のようだぞ」
まゆ毛やまつ毛も同じ色をしている。
おそらくあの青色は……元からの物。
まあ、珍しい事ではない。むしろ、その程度の“変化”で済んでいることの方が珍しい。
竜の襲撃。
それは生態系を大きく変化させた。
なにも、それが動物たちに限ったことではない。
無論、生き残った人間の中でも、核や兵器、竜の力の効果を色濃く残したものがいたのだ。
影響。
理由すらも分からない、変化。
それでも、いい。よかった。
なぜなら、責任は人類の天敵、“竜”にあるから。
すべてをそれに当て、それを憎み、恨む。
「わからないことも多いですが、よろしくお願いします」
クラスがざわめく。
あちこちから、声が聞こえる。
“変化”のこと。それを差し置いても、吊り目の少女はそこそこの美少女だった。
少女が歩き、生徒たちの間を通って行く。
「…………」
……ん?
今、確かにあの転校生、こっちをにらんだような……。
「……気のせいか」
「何がー?」
「いや……何でもない」
なんだよな、ほんと。
また、別の意味で災難の予感がするような……。