17 妖精の嬢王/二重マップ
前方に巨大な森が見えて来る。
コーザが目指していた妖精の森だった。
「あそこだ。まだまだ距離があるけどな」
「コーザさんの故郷ですか?」
はにかんで答えるセリーリアに、コーザは否定も肯定もできない。代わりに、全く違う話題をセリーリアに伝えていた。
「何かほしいものはないか? まあ、まだタイオンになれてねえお前に、選ばせるっていうのも無茶な話だが」
「何ですか、急に?」
その話題を出したとき、セリーリアの顔が一瞬曇ったのだが、コーザは気がついていない。
周囲への警戒と、先に進むのに夢中だった。
「抽象的な表現でもいいぞ。なるべく近いものを、セリーリアにプレゼントするよ。妖精の森に着くまでに、ちょっと考えてみてくれよ」
「……まだ、旅はつづくんですよね?」
「もちろんだ」
コーザは笑って答える。
嘘ではない。
自分と一緒ではなくなるだけで、セリーリアの暮らしはまだまだはじまったばかりだ。
妖精の嬢王にはそれをサポートしてくれるプレイヤーが大勢いる。
「心配ねえよ」
コーザはセリーリアの手を引いて進みつづける。
セリーリアは何も答えない。
ただじっと、考えこむように自分の腕を引くコーザのことを見つめていた。
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ようやく森の一端が見えて来た。
セリーリアとともにコーザは森の中へと入っていく。
妖精の森という名前だけあって、やはり凛とした空気が漂っている。オカルトの類を信じていないコーザであっても、そこには思わず神聖さを感じてしまうほどだった。
初見のセリーリアであれば、もっと感動するのではないかと、期待して隣をチラ見したコーザだったが、セリーリアの様子は拍子抜けするほど淡泊だった。
(……こういった神秘系は興味の範囲外だったか)
先ほどからうつむいたまま、セリーリアは視線を上げようとしていない。
「セリーリア。悪いんだが、ちょっと手伝ってくれ」
「……」
「セリーリア?」
もう一度名前を呼べば、今度こそセリーリアも顔を上げる。
「……。探すのを手伝ってくれ。この辺りに別のマップへの入り口があるはずなんだが、うちじゃ見つけられなくてな」
探しているのは二重マップだ。妖精の瞳でなければわからない。
(……大回りすれば行けるらしいが、二重マップから向かったほうが確実だ)
それは保護対象がいることの、これ以上にない証拠になる。
「もしかして、あれですか?」
セリーリアが走っていく。
大木と大木の間。
ぎりぎりプレイヤーが通れない隙間に駆け寄ったセリーリアが、手元を操作していた。
「『二重マップに侵入しますか?』って書いてあるんですが、入るんですよね?」
「ああ、そうだ。許可してくれ」
妖精の瞳がいれば、パーティーを組んでいるプレイヤーも問題なく、該当のエリアに向かえる。
セリーリアがメッセージに同意。
すぐさま2人のアバターが、吸い込まれるようにして森の中へと消えていく。
もちろん、行き先も妖精の森であることに変わりはない。
前方にプレイヤー。
二重マップの中にいるのだから、間違いなく妖精の嬢王の人員だろう。
「このとおりだ、うちに敵意はない」
コーザは両手を挙げて、すばやく抵抗する意思のないことを示した。
それは二重マップ側から来たことで、相手にも伝わっていた。
「ああ、それはわかっている」
「こっちの子が妖精使いだ」
「……ひょっとして、この前、公開アナウンスされたカーティルか?」
目を丸くしてフィノットがセリーリアを見つめる。プレイヤー名の表示はシュナイダーだ。
コーザは笑ってうなずく。
誇らしそうな顔つきなのは、気のせいではあるまい。
「そうだ」
「ずいぶん早いな……。いや、いい。わかった。保護しよう」
「……っ」
息を飲むセリーリア。
首をぶんぶんと横に振ったセリーリアが、コーザにがしりとしがみつく。それはまるで、予期していたかのようにすばやい動きだった。
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