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17 妖精の嬢王/二重マップ

 前方に巨大な森が見えて来る。

 コーザが目指していた妖精の森だった。


「あそこだ。まだまだ距離があるけどな」

「コーザさんの故郷ですか?」


 はにかんで答えるセリーリアに、コーザは否定も肯定もできない。代わりに、全く違う話題をセリーリアに伝えていた。


「何かほしいものはないか? まあ、まだタイオンになれてねえお前に、選ばせるっていうのも無茶な話だが」


「何ですか、急に?」


 その話題を出したとき、セリーリアの顔が一瞬曇ったのだが、コーザは気がついていない。

 周囲への警戒と、先に進むのに夢中だった。


「抽象的な表現でもいいぞ。なるべく近いものを、セリーリアにプレゼントするよ。妖精の森に着くまでに、ちょっと考えてみてくれよ」


「……まだ、旅はつづくんですよね?」

「もちろんだ」


 コーザは笑って答える。

 嘘ではない。

 自分と一緒ではなくなるだけで、セリーリアの暮らしはまだまだはじまったばかりだ。

 妖精の嬢王(ティターニア)にはそれをサポートしてくれるプレイヤーが大勢いる。


「心配ねえよ」


 コーザはセリーリアの手を引いて進みつづける。

 セリーリアは何も答えない。

 ただじっと、考えこむように自分の腕を引くコーザのことを見つめていた。




✿✿✿❀✿✿✿




 ようやく森の一端が見えて来た。

 セリーリアとともにコーザは森の中へと入っていく。

 妖精の森という名前だけあって、やはり凛とした空気が漂っている。オカルトの類を信じていないコーザであっても、そこには思わず神聖さを感じてしまうほどだった。


 初見のセリーリアであれば、もっと感動するのではないかと、期待して隣をチラ見したコーザだったが、セリーリアの様子は拍子抜けするほど淡泊だった。


(……こういった神秘系は興味の範囲外だったか)


 先ほどからうつむいたまま、セリーリアは視線を上げようとしていない。


「セリーリア。悪いんだが、ちょっと手伝ってくれ」

「……」

「セリーリア?」


 もう一度名前を呼べば、今度こそセリーリアも顔を上げる。


「……。探すのを手伝ってくれ。この辺りに別のマップへの入り口があるはずなんだが、うちじゃ見つけられなくてな」


 探しているのは二重(にじゅう)マップだ。妖精の瞳でなければわからない。


(……大回りすれば行けるらしいが、二重(にじゅう)マップから向かったほうが確実だ)


 それは保護対象がいることの、これ以上にない証拠になる。


「もしかして、あれですか?」


 セリーリアが走っていく。

 大木と大木の間。

 ぎりぎりプレイヤーが通れない隙間に駆け寄ったセリーリアが、手元を操作していた。


「『二重(にじゅう)マップに侵入しますか?』って書いてあるんですが、入るんですよね?」

「ああ、そうだ。許可してくれ」


 妖精の瞳がいれば、パーティーを組んでいるプレイヤーも問題なく、該当のエリアに向かえる。

 セリーリアがメッセージに同意。

 すぐさま2人のアバターが、吸い込まれるようにして森の中へと消えていく。

 もちろん、行き先も妖精の森であることに変わりはない。

 前方にプレイヤー。

 二重(にじゅう)マップの中にいるのだから、間違いなく妖精の嬢王(ティターニア)の人員だろう。


「このとおりだ、うちに敵意はない」


 コーザは両手を挙げて、すばやく抵抗する意思のないことを示した。

 それは二重(にじゅう)マップ側から来たことで、相手にも伝わっていた。


「ああ、それはわかっている」

「こっちの子が妖精使い(ピクシー)だ」

「……ひょっとして、この前、公開アナウンスされたカーティルか?」


 目を丸くしてフィノットがセリーリアを見つめる。プレイヤー名の表示はシュナイダーだ。

 コーザは笑ってうなずく。

 誇らしそうな顔つきなのは、気のせいではあるまい。


「そうだ」

「ずいぶん早いな……。いや、いい。わかった。保護しよう」

「……っ」


 息を飲むセリーリア。

 首をぶんぶんと横に振ったセリーリアが、コーザにがしりとしがみつく。それはまるで、予期していたかのようにすばやい動きだった。

 コメントまでは望みませんので、お手数ですが、評価をいただけますと幸いです。この後書きは各話で共通しておりますので、以降はお読みにならなくても大丈夫です(臨時の連絡は前書きで行います)。

 次回作へのモチベーションアップにもつながりますので、なにとぞよろしくお願いいたします。(*・ω・)*_ _)ペコリ

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