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叫喚  作者: 澄川あや
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死神

私という人物を知ってほしくて、詳しく書きました。

体を壊してもあれだけ神楽を舞える鬼滅の主人公のお父さんはすごいと思います。

 私の祖父母の話をしようと思う。祖父母は私が小学生に上がる前に亡くなった。なので、覚えている事はとても少ないし、うろ覚えな事も多いのはご容赦いただきたい。


 私の祖父は神職だった。若い頃、東北の神社に席を置き、厳しい修行を行い霊能力を授かったらしい。これは戦前の話なので、今はどうかはわからない。わからないが、私が10歳になると、私もお世話になる予定だった。

 祖母はあまり自分の事を語らない人であった。どこかの島の巫女で、生まれつき霊能力が強かったらしい。体が弱く、きれいな物が好きで、生活感のあまりない人だった。


 家には神様のお部屋があった。

 小さな和室に横幅が170cm×三段の屋内神殿が祀られていた。上段に神棚、女の私が触ることは許されないご神体、ご神鏡、ご神具。中段と三段目に神馬、狛犬、左右向きの座牛などの神使を小さくしたものや、上段とは異なるご神具があった。

 祖父母はかなりの高齢で祖母は寝付いていた。祖父もあまり体が動かないので、お水やお米など神饌とお掃除は私の仕事だった。重たいし、チェックが厳しく幼い私にはなかなか辛い仕事だった。

 お掃除の最後にきれいな乾いた布で神使を拭く仕事があり、私は左向きの牛を拭くのが好きだった。右向きの牛に比べ柔らかい顔、なだらかな肩からお尻にかけてのラインを布越しに撫でるのが好きだった。

 いつからか私も祖父と一緒に朝夕のお勤めをしていた。

 生活は質素で、特に食生活は四つ足動物の不殺生が掟だったため、野菜と魚ばかりが食卓に上った。私の成長を心配した祖父が神様にお願いをし、私だけが一日と十五日のみお肉を食べても良い、お肉の日となった。


 細々とご奉仕していたが、氏子さんもほとんど来なかったので、お客様が来た記憶は鮮明に覚えている。

 ほぼ引退したとはいえ、祖父は祓える霊能力者として有名だったらしく、遠方からいらっしゃる方もいた。私もなぜかいつも同席していた。

 神様のお部屋に入ったらドラマの様に激しく暴れ回る人は稀だったし、よっぽど悪質なものでなければ問答無用で祓うこともないので危険を感じたことはなかった。

 一度、私から見ても危ないものの時は、無理矢理除霊してその後1時間くらい祝詞をあげ、大ぬさで祓い浄め、その後お話をして祝詞をあげた。お客様は元気になって帰ったが、祖父は数日寝込んだ。祖父を看病していると、なぜか日付が頭の中に降ってきた。その時の私には意味がわからなかった。


 祖父はいつも無理矢理祓うことはお互いに幸せにならないからと、お話を聞いて納得して成仏してもらう浄霊が多かった。

 霊は恐いものではなく、自分の人生を振り返り、少し戸惑い、迷子になっているだけ。話をして途を考える手伝いをするのが我々の仕事。あとは自分で選ぶ。体がないだけで、自分の人生を自分で決めることが幸せなのだと言っていた。 


 祖父はとにかく厳しく誇り高い人であった。霊能力を授かったということは広く人々を助けよという天命だと言って体調が悪いのにご相談に応える。私はその度に日付が視えた。祖父母にそれを伝えると二人は困ったように笑い、祖母が口を開いた。


「それは、うちらの死ぬ日じゃ。あんたも視えとったんじゃね。うちらのことはええ。ええが、あんたのことが心配じゃぁ」

「じゃったら、ご相談、もうせんで」

「それは出来ん。神様との約束を破ることになるけん」


 祖父の意思は固く、ご相談に応える度日付が早まっているのが視えた。

 祖父は私が視た日にちに亡くなった。私が殺したんだと泣く私を祖母は慰めたが、祖母も永くないのが、もうずっと前から視えていた。

 私が視た日にちに祖母も亡くなった。私は親から死神と呼ばれるようになった。私は自分の視えた事を話さなくなった。それは悪い事なのだと理解した。

 二人がいなくなってから、家でも外でも誰かに監視されているような恐怖しかなかった。唯一、安心出来るのが神様のお部屋だけだった。

 当然そのお部屋で寝るようになった。寝る前にはお祈りをし、お気に入りの座牛を撫でる。

 私は大人になり、祖父母の言い付け通り御守りをお返しした。家に居たくなかった私は一人暮らしを始めた。

 お気に入りの座牛を撫で、元気でねと別れを告げ、家を出た。

 大丈夫だと過信していた。それが大きな間違いだったと痛感するのはすぐだった。

お読み下さって、ありがとうございます。お肉が大好きな澄川です。

前作[記憶]をたくさんの方が読んで下さったので、他のお話を書く勇気になりました。ありがとうございます。

本当は記憶だけで終わる予定でした。そのため詳しい情報を極力書かず、純粋に兄弟の悲しさを感じて欲しかったのです。

私の恐くて不思議なお話が皆様に少しでも楽しんでいただければ幸いです。

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