転生したら欲しがり義妹になってしまった件~欲しがり義妹ならあげたがり魔王から欲しがりしろと言われた幼女の話
「メアリーちゃん。何か欲しい物はありますか?」
「・・・ないの~。良い暮らしをさせて頂いて感謝しているの~」
「そ、そんな。義姉からの贈り物は・・・いらないのかしら。ダメな義姉ね。グスン、グスン」
「違うの~!お義姉様のオモチャ箱、見たいの~」
「まあ、いいわ!」
私はメアリー、父は騎士だった。戦場で義父になる陛下の命を庇い戦死をした。
陛下は重傷を負いながらも何とか助かり。
感動した国王は母が亡くなり孤児院に送られる私を引き取った。
ヒラヒラのドレスに宝石箱ごと宝石を買ってもらって、そしたらお義姉様は義父に嫉妬した。いや、私ではなくて何で・・・私に物をあげたいそうだ。
お義姉様は11歳、私は6歳、まだ、お義姉様には予算はついているが、あくまでも予算だ。お義姉様が自由に使えるお金は限られている。
「さあ、ここが私が幼年時代に遊びに興じた思い出のあるオモチャたちですわ」
うわ。さすが王家だ。オモチャも品がある。そうだ。一番安そうなこのオモチャのブローチをもらおう。
「これが欲しいの~、ちょうだいなの~」
「まあ、これは・・・忙しい中、家族旅行した思い出の品よ。でもメアリーちゃんのためなら・・」
「やっぱり後で考えるの~」
とやっていたら、お義母様が叱る。それで良い。と思ったが斜め上だった。
「エメラルダ、どうして義妹にものあげないの?」
「グスン、メアリーは私の物、欲しくないみたいですわ」
「まあ、メアリーは心を許してくれないのかしらね」
と更に発破をかける始末だ。
しかし、平民騎士出身の騎士の子である私のために豪華なドレスや装飾品を身にまとわせ。専属メイドや執事をつけてくれる。
中には王家に対してではなく私に批判してくる奴らもいる。
「あ~、すごい才能ですね。どうやって王女殿下におねだりしたのですか?私もあやかりたいものですな」
「はいなの~、頭にプティングの角をぶつければかなうの~」
「な、なんだと・・」
「大公殿下、メアリー様は正式な王家のご養子ですぞ」
護衛騎士が庇ってくれた。ケビンだ。お兄様みたいに慕いたい。
すると、お義姉様が嫉妬に狂うからお礼を言うだけに済ませた。
そんなある日、敵の魔族から、使者がやってきた。
お義父様に怪我を負わせた部族だ。現在、国王は王宮の奥で療養中だ。
お義母様とお義姉様は国王代理で他国との会議に出席中だ。
使者は友誼を結びたい。魔族領側で宴席を設けるので王族の代表が来て欲しいと言う。
こんな時、宰相でもある大公が対処するべきであるが、何と私に行けと言う。
「孤児出身とは言え。動ける王族はメアリー様しかおりません。こんな時こそ恩返しをされては如何ですか?」
「はいなの~」
驚いた顔をしやがった。そりゃ、6歳だが、代理だけ出来る。
初めての代理だ。
「魔王は『あげたがり魔王』と言いますぞ。返答次第では生きて帰って来られません。今なら孤児院に行けば命が助かるかもしれませんぞ」
意味が分からない。ケビンが教えてくれた。
「メアリー様、魔王はプレゼントをしたがります。しかし、欲しがる内容次第で使節団をみなごろしにします。更にその国を荒らし回ります」
「何を言ったら怒り出すの~?」
「それは、分かりません。使者は殺され、魔王は相手が無礼な要求をしたので殺したと言いますから・・・今のところ生き残った者はおりません。16の使節団が殺されました」
「分かったの~」
かくして、私は独断で旅だった。
「もし、75日経過して私が戻って来なかったら殺されたの~、お義父様に報告して国を固めるの~」
「メアリー様、どうかご武運を」
騎士団長にそう言って、護衛騎士、専属メイド、その他エトセトラで旅だった。
馬車で片道30日くらいの距離だ。
この時代、魔王を恐れることは、ローマ人がフン族アッティラを恐れるがごとし。
今までは我が王国が孤軍奮闘して国境に入らないようにしていた。
お義母様とお義姉様は支援を求め各国を飛び回っているのだ。
馬車の王家の紋章を見ると、民はかけよって頭を垂れる。
お義父様は慕われているな。
「皆しゃま、ご苦労様なの~」
「「「幼女?」」」
窓を開け、手を振るが皆は呆然としているな、
途中、国境警備騎士団長に挨拶をして魔王軍の指定された場所に赴く。
隊長は疑うが、宰相の文書を見ると納得する。
「捨てごまか・・・哀れな」
「いいの~、お世話になったの~」
途中、魔族の騎馬兵、農耕馬のように頑丈な馬に乗った兵達と合流し、大きな天幕に案内された。
宴席をもけられた。さすがにお酒は不味いからジュースをもらう。
魔王は黒光りする筋肉ダルマで牙が口から覗いている。角が二つある。まるで日本の鬼のようだ。
「国王代理の養女メアリーなの~」
「東の魔王ゲラだ。まあ、よくきた石の都の者よ」
どんちゃん、どんちゃん騒ぎが起きる。
さすがに、ケビンたちは外で待機する。
専属メイドのケリーは私の側で震えながら私にピッタリ寄り添う。ケビンの妹さんで、孤児院から兄妹で引き取られたそうだ。やっぱりお義父様は優しいな。皆、恩返ししたいと思っているようだ。
あ、何か、気分が乗ってきた。
魔王様も乗り気だ。
「親善の印に私が自ら踊ろう」
踊り出したので、私はお遊戯を見せる。
「メアリーも踊るの~」
ワッショイ、ワッショイと宴会が続いた。
初日、お開きをするときに、魔王は切り出した。
「親善の印に何か贈り物をしたい。メアリー殿は何が欲しい?何でも良いぞ。欲しい物を言ってみよ」
「はいなの~、人族の捕虜が欲しいの~」
「ほお、そうか、魔族領の奥深くに大戦の捕虜がいるが、数代重ねてもはや臣民となっている。今回の戦役の捕虜を帰そう」
「有難うなの~」
二日目も宴会が始まった。
宴会の最後、また、魔王は切り出す。
「親善の印に何か贈り物をしたい。メアリー殿は何が欲しい?何でも良いぞ。欲しい物を言ってみよ」
「はいなの~、魔族領産のお馬さんが欲しいの~、力強そうなの。交配したいの~」
「おお、駿馬を差し上げよう」
最終日の三日目も宴会の終わりに魔王は尋ねる。
「親善の印に何か贈り物をしたい。メアリー殿は何が欲しい?何でも良いぞ。欲しい物を言ってみよ」
「なら、魔王陛下と一緒に踊ったツーショット写真が欲しいの~」
「ツーショットシャシン??」
「魔道写真なの~」
「分かった・・・本当にそれで良いのか?人族なら欲しい物があるだろう。さあ、言ってみよ」
「ないの~、メアリーは親善目的で来たの~、でも、もらったばかりで申訳ないの~、メアリーは何にもあげられる権限ないの~」
目が光りやがった。
「ほお、なら、今、メアリー殿の気持をもらいたい。貴殿は我の贈り物の対価に何をしてくれるのか?」
「なら、メアリーは偉くなるように頑張るの~、魔王様が捕虜になったら、即、返還されるように動き出すの~」
「「「無礼な!」」」
と側近たちは怒り出したが、魔王は手で制止。
「クククッ、それは頼もしい。今回は完敗だ。捕虜と駿馬を渡そう」
「魔王様、捕虜は身代金を取れます。駿馬は魔王様の大事な馬・・・」
「良いのだ」
次の日、捕虜、数十人を連れて、王国に帰る。
捕虜の中には大国の王子ロードリック殿下がいたが、終始聞かれた。
「貴殿は、魔王とどんな取引をした?」
「メアリーが偉くなったら、魔王が捕虜になったら、お国へ返すと約束したの~」
「そんな馬鹿な」
「事実はいつだって常識を越えるの~、文書にしたから見るの~」
「本当だ・・・」
王宮に帰ったら驚かれた。
「メ、メアリー、生きて帰ったのか?」
「「メアリーちゃん」」
「メアリーちゃんなの~」
王族一家に抱きつかれた。
宰相は陛下からめいいっぱい叱られて。
一族で亡命をした。
本来なら私が殺されて、国境を荒らされて、王家の責任にしようと思っていたみたいだ。
しかし、あの魔王、何で、こんな面倒くさいことをしたのだろう。
まあ、魔族の文化だ。
その後、大国ザイツ帝国のロードリック皇子とその一党は我国で介抱され。
お国に返したら、使節団が来て無償援助という名の贈り物が沢山届いた。
お義姉様にも釣書が殺到している。
容態が少し良くなったお義父様に呼ばれた。ベッドの脇まで来る。
私以外人払いされている。
「メアリー、ちょっと来なさい」
「はいなの~」
「皇帝殿から、内密に書簡だ。我が弟が亡命先で、使者として赴いたそうだ。そして、即斬殺された。メアリーが帰って来た唯一の使者だ・・・」
「分かったの。これは内密なの~」
私はメアリー、転生者だ。チート能力なんてありゃしない。
少し、歴史をかじった可愛いだけの幼女だ。転生者も含めて全て話した。
紀元前、匈奴の酋長、冒頓単于の逸話だ。
隣の部族が、妻と駿馬を要求した。
冒頓単于は喜んで差し出した。
妻を差し出すのは現在の倫理観で判断してはならない。
調子に乗った部族は、今度は土地を要求した。荒れ地だ。側近達はくれてやるべきと言ったが冒頓単于は怒り狂って兵を挙げ。隣の部族を滅ぼしてしまった。
土地が国の基本と考えていたらしい。
もし、あのとき、係争地を要求したら、魔王は怒り来るって私達を殺しただろう。
魔族流の友誼を結ぶに値するかどうか調べていたのだろう。
これを各国に知らせたら、魔族も馬鹿じゃない気がつくだろう。
「この話は絶対に秘密なの~」
「・・・分かった。魔族の価値観だろう」
しかし、人族と魔族は数百年争っている。
和平を結ぶのはまだ先かな。
メアリーのその後は記載されていない。小国の姫で名も伝わっていない。
しかし、その50年以上後、ある魔王が野戦で捕虜になった。
「魔王ゲラの息子がムンダ!牙は折れ、角も折れた・・・殺せ。名誉ある死を望む」
しかし、総指揮官は・・・客人として魔王を迎え。
人族の畑、生産拠点を惜しみなく見せた後。古い魔道写真を見せた。
「これは、父上と、幼女?」
あの一緒に踊っているときの写真だ。
「・・・放逐する。三日分の食料と馬をやる。帰れ」
「分かった。かなり前の約束を守ってくれると・・・」
「大婆様から続く家訓だ。大婆様がこの緑地や工場を作った。その偉大な大婆メアリー様の願いだ。恨みは飲み込む。行くが良い」
渡された馬は魔族領の馬に近い。魔王は父親の贈り物が生かされている現状を目の当たりにした。
その後、魔族から和平の使者が訪れたと年代記では記されている。
最後までお読み頂き有難うございました。