第四十六話 『日輪の円卓』
「アイダさん、先ほどの……ゼラさんとは、どういうご関係なのですか……?」
ああ、とアイダは生返事をした。
「学園時代の同級生だよ。あいつは座学がいつも一番で、あたしらはいつも、その頭脳を先生代わりにして、難儀な課題とかを誤魔化してたってワケ」
わあ、とアリシアは目を耀かせた。
「辰術を学ぶための王立学園……聞いたことがあります。私も行ってみたいなあ」
その言葉を聞いたアイダは、分かってないな、と苦笑を浮かべた。
「やめとけやめとけ。カビの生えかけた古臭い講堂で、歳だけくった退屈な教授の講義なんて聞いたって…ってアリシアは、そういうのが好きなんだったか」
退屈なのが好きな訳じゃ、と小さく言ったものの、アリシアはそれでも、興味を隠せないようだった。
「アイダさんは何を専攻されたんですか?辰術にも色々ありますよね……」
言わなかったっけ、とアイダは空とぼけた。
「火だよ、火。手っ取り早くて効果抜群、だからな。まあ、尤も……」
アイダは何か言いかけたが、その時ふとすれ違った”巡賛会”会員の顔を見て、珍しくも押し黙ってしまった。
「……?どうかされましたか、アイダさん?」
アリシアが不思議そうに、彼女の顔を上目遣いに覗き込んだ。
「いや、ちょっとね。それより、医務局の次はどこに行くと思う、アリシア」
「え?……そうですね……」
アリシアがはぐらかされて考え込んでいる内にも、二人は”明日見の宮”の廊下をずんずん歩いて行く。
「月の女神の加護の、”慈愛”の側面を切り取って……と、ゼラさんはおっしゃっていました。だから……分かった!」
「ふぅん。さすがに頭が回るね、アリシア。言ってみて」
少女は僅か、期待に目を耀かせて、己の導き出した答えを述べた。
「確か、”巡賛会”にはこういう名前の、大魔女への対処を一手に引き受ける、自立した部署があると、メルバーユ様から聞いたことがあります。……恐らく、なのですが……”日輪の円卓”じゃあないですか……?」
今度二人が辿り着いた扉のプレートには果たして、”日輪の円卓”という文字が、克明に刻まれていた。




