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明日はまだ見ぬ空模様  作者: 東陸士
二章 『不朽の都』
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第四十五話 『治療師』

仕方なく、アリシアとアイダは、二人で治療師の詰めている医務局に向かうことにした。

「ったく、オヤジのやつ……責任持てよな!あんたのせいでお兄さんは目を覚まさないんだろ、っての」

そう言うアイダに対し、アリシアは困り顔で微笑んでいた。

彼女としても、(かなめ)に目を覚まして欲しい気持ちは山々だった。

しかし、己を守って斃れたに等しい彼が目覚めたとして、何と声を掛けたものか悩んでいるのも事実だった。

(私も、もっと力を付けないと……)

気持ちばかりが空回りする。

救貧院(アルムスハウス)で、加護の力を正しく認識できるようになり、宝物庫での一件で、”暗瘴魚(カーシュート)”を退けもしたが、それ以上の進展がない少女は、己の持つ力を、何とか十全に発揮しようと、陰ながら躍起になっていた。

「あの、アイダさん……」

「ん?どうした、アリシア」

「アイダさんも、辰術士なんですよね?……その、何というか、コツとか」

アイダはすぐに察した。その気持ちには、自身も覚えがあったからだ。

「そうか、アリシアも辰術士デビューしたいか~」

そう言って、彼女はアリシアの頭をうりうりと撫でた。

「いえ、そういうのじゃ……!ただ、かなめ様の役に、立てればと思って……」

そうだろうそうだろうと、アイダは訳知り顔に頷く。

「まあさ、一度できれば簡単なんだよ。で、その初めの一歩が難しい訳で……」

そうこう話しながら歩いている内に、医務局に着いてしまった。

「そういや、月の加護といえば、治癒の術式だよな。丁度いい、訊いていこう」

アイダはアリシアを連れ、扉を開けると強引にずんずん進んでいく。

「だ、誰か訊くあてがあるのですか?」

大股に局内を行くアイダに、アリシアは身長差から小走りになりながらついていく。

「オヤジが言っていた治療師ってのは……ここだ!」

そう言いながら、アイダは目の前の扉を思いっ切り押し開いた。

「ひゃあ!な、何事です?」

そこには、丸眼鏡をかけた、くせっ毛で気弱そうな、枢やアイダと同じ年頃だろう女性が一人、薬瓶の並んだ棚の前で、縮こまっていた。


丸眼鏡の女性は、ゼラと名乗った。どうにも、アイダとは面識があるようだ。

「そうか、気付け薬には”カルガラン”って薬草を使えばいいんだな、分かった。後で街の薬師(くすし)を当たってみる。……でさ、この子にちょっと治癒の術式の手解きをして欲しいんだが」

話は、アリシアが流れに付いていけていない間にも進む。

「そうですね……アリシアさんが治癒の術式を執り行うとしたら、それは”月の女神(ルレイナ)”の加護の、”慈愛”の側面を切り取ってのことになります。……」

ゼラは一言一言、言い含めるように言葉を紡ぐ。

「……しかし、私たち治療師は一般に、体を巡る辰気の流れを活性化させ、体が回復を早められるよう、お手伝いをするのです。ですから、我々に頼るのは、少し筋違いですよ。もしお願いするなら、そうですね……」

そう言って、彼女はアイダに何らかの言付けを耳打ちした。

それを聞いたアイダは、難しい顔をした。

「まあ、いいさ。何もしないよりまし(・・)だ。仕方ない、あいつに頼むか。……ありがとな、ゼラ。急に無理を言って悪かった」

アイダはゼラに向かってにっと笑った。

「お安いご用です。皆さんの頭脳代わりをするのは、慣れていますから」

ゼラも微笑み返す。

アイダはアリシアを手振りで(いざな)うと、彼女の元から去った。

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